ワインコラム
HOME > NZワインの魅力(コラム) > 第184回 コアなNZワイン ザ・変わり種リターンズ オタゴ編
久しぶりにコラムを書いたついでに、今回の滞在で味わった日本で馴染みのないワインを少し御紹介したいと思います。前回のヴァン・ド・パイユも、すでにその予備軍と言えそうですが… 最後にこのシリーズを書いたのはもう7年も前のことのようで、タイトルからしてすでに一抹の恥ずかしさを覚えます。ネタ自体はいくらでもあったのですが、続け過ぎで少ししつこいなぁと思い、打ち切ったような気がします。

さて、まずはマイナー度低めのTempranillo/テンプラニーリョから。言わずもがな、スペインを代表する黒ブドウです。といってもここは北島ではありません。つくり手のBrennan/ブレナンは、セントラル・オタゴのサブ・リージョンのひとつ、Gibbston/ギブストンに位置しています。クロムウェルからクイーンズタウンへとGibbston Highwayを走ると同地区の最も手前側、脇道のギブストン・バック・ロードを左に少し入ったところにあります(ちなみにその対岸にあるワイナリー、Mt Rosa/マウント・ローザも、ややマイナーなPinot Blanc/ピノ・ブランからワインをつくっています)。

以前は近所のワイナリー、Peregrine/ペレグリンにブドウを売却していましたが、2006年より自社での生産を開始。樹齢10年のテンプラニーリョは、10haの自社畑の内わずか0.3ha強を占めるのみで、当然生産量も少ないアイテムです。ニュージーランドではホークス・ベイあたりにしか比較対象がありませんが、本家スペインとも打って変わり、味わいにも香りにも冷涼産地らしい輪郭を備えた、しなやかできれいな仕上がりです。ちなみにここのピノ・ノワールは、たまらなくジューシーで、ずるいわ〜これ反則でしょ〜、といういかにもオージー受けしそうな退廃的な味わい。しかもセントラル・オタゴ内にある他のサブ・リージョン産のブドウが“保険”で入っておらず、自社畑のみで勝負しています。訪問の際は、ぜひ一緒にお試しあれ。

お次はSt. Laurent/サン・ローランを。黒ブドウ品種なのですが、日本ではドイツ語圏読みのザンクト・ラウレントのほうが一般的でしょうか。セントラル・オタゴ最南のサブ・リージョンAlexandra/アレクサンドラにあるJudge Rock/ジャッジ・ロックが手がけています。オーナーのジェイコブソン夫妻は同地にて、自社畑に隣接する6部屋のB&Bも経営しています。醸造は委託ですが、奥様のアンジェラが栽培責任者を務めています。

一連の試飲でトリに登場したサン・ローランのヴィンテージは2011年。「この子はね、こなれるのに時間がかかるタイプなの」とはアンジェラ談。年を重ねるごとに少しずつ性格が掴めてきたように感じているそうです。発売前の若いヴィンテージも開けてくれましたが、刺激的な野趣のある“ジビエ向きな”風味のプロファイルが語る品種のDNAは完全に同一のもの。「お待ちかねのサン・ローランはどう?うん、うん、そうでしょう?ピノ・ノワールの血縁だなんて言われてはいるけど、想像以上にピノ・ノワールのエレガンスがないでしょう。私はどっちか選べと言われたら、断然ピノ・ノワールね」そう笑いながら、これまでサン・ローランに手を焼いた話をオブラートに一切包まず語ってくれました。現在畑はオーガニックに移行して2年目とのこと。手ごたえを掴んでからの作品を将来再チャレンジしてみたいところですが、その日もきっと、大分先になるに違いありません。

最後は世界中で一大ブームとなっているオレンジ・ワインを。一般的には果皮を浸漬した白ワインの一種を指し、ニュージーランドでもアロマティック系品種の栽培が多いこと、オレンジ・ワインに暗に求められる「ナチュラルな」ブドウを栽培しやすい環境であること、といった素養を元々有しているため増加傾向にあります。セントラル・オタゴはその中心地と言ってもよく、日本にもSato Wines/サトウ・ワインズなどいくつかの生産者のものが輸入されています。

サブ・リージョンLowburn/ローバーンに位置するAurum/オーラムは、クロムウェルの町を出て車が時速100kmに到達するかしないかくらいで着いてしまう距離にあります。オーナーであるジョーン・ローレンス夫人曰く、セントラル・オタゴでオレンジ・ワインを造っているところは、知る限り7軒くらいとのこと。生産量も少ないことが多く、なかなか普段ワイナリーで振舞うまでにはいかないようです。「あなたの前にも、ちょうどシェフの団体が見えられていたのよ。今のところ、興味を示すのはほとんどがレストラン関係者ね。なんでも、幅広い料理と合わせられるそうだから」

ワイナリーのアイテムレンジは、ピノ・グリだけでも4種類。若干残糖のあるソフトタッチのノーマルタイプ。良く色の出たドライなロゼ。オレンジ・タイプのAmber/アンバー。そして最後にフォーティファイド(アルコールを添加したタイプ)のポート・モリニュー。アンバーはファンキーさもなくきれいなのですが、個人的にオレンジ・ワインに求めるぞくぞくするニュアンスの多層的な要素が少なく、そのせいで相対的にタンニンだけが突出して感じられるような印象でした。孫の娘さん2人の名前を冠したピノは、次女の単一クローンで全房発酵タイプ、長女の複数クローンで一部のみ全房発酵タイプ共に、それぞれ個性は違えどクラシカルな響きのあるつくり。息子さんがフランス留学時に射止めた奥様、ルーシーが醸造を担当するようになり、ワインは以前と大分様変わりしました。これからのアンバーにも、さらなる期待が膨らみます。

優良かつ献身的なインポーターさんのおかげで、ニュージーランドのトップ銘柄の多くが飲める時代ですが、日本においてニュージーランドワインがレストランのワインリストに占める割合はまだまだ。やはり現地でしか味わえないワインも沢山あります。残念ながらこうした変わり種全てが秀逸なワインであるとは言えませんが、ニュージーランド国内での導入事例があまりないが故、そのどれもがつくり手が試作や葛藤を重ねて商品化されたものです。ワイナリーのアイテムレンジに“イロモノ”として彩りを加えるだけでなく、その苦労話がまた、つくり手との会話においても程よいスパイスの役割を果たしてくれることでしょう。実際、生産者がもっともっと聞いてほしいと望んでいるように!
2017年12月掲載






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