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マオリ語とマオリの伝統文化のイメージを使われているワインのラベルの多さから判断するとマオリ人(ニュージーランドの先住民族)がワイン業界でもかなり活躍しているのでは推測しがち。だが、実際のところ、本当のマオリ人経営のワイン会社数は,片手で数えられるぐらいしかいない。どうやらこれは、マオリ文化とワインとの「性格の不一致ではなさそうであるが、何故であろう
ニュージーランド唯一のマオリ経営のワイン・ビジネスを長年営んでいるトフ・ワインズのロパタ・テイラー氏は「マオリは伝統的に漁業と農耕文化を持っているのでワイン造りという新産業にも容易に移行できる素養がある。加えて、南島の北に住む自分の属す部族の土地では葡萄畑の植栽は自然の成り行きだった。マオリは長年土地を維持・開発に従事してきて、たまたま先祖からの土地がニュージーランドでも素晴らしいワインを生み出す葡萄栽培の地域にあった。ワインは地域経済活動でも目立つ分野だったので、私たちもこの産業に参加した所以だと述べる。
「しかし、現在のところマオリ系組織の多くは伝統的産業(酪農、羊、牛、牧草の農業経営など)に従事する傾向があり、トフ・ワインズが今のところマオリ族所有の唯一のワイン企業である」こともテイラー氏は否定していない。
「マールボロには広大な土地所有するマオリがあまりいない。うちの祖先はマオリの歴史上に重要な土地であるワイラウ・バーに800年前に住みついたランギタネ族にまでさかのぼることが出来る。そして、幸運なことに私の部族は何世代にも亘りこの土地に留まり、これからもここで生活を継続出来ているのだと昨年テ・パ・ワインズ(マオリ語で『要塞』の意味)を創設したヘイズレイ・マクドナルド氏は言う。
マオリ語の名前やイメージをパケハ(白人)の製品に使用するのは非常に微妙なことで、マオリ族の血を受け継ぐティキ・ワインのロイス・キーン氏ですら、最初は自社のワインにマオリ語名をつけるのすら躊躇した。「『ティキという名称はマオリにはあまりにも貴重過ぎると感じていたが、オーガニック栽培に変更し、ファウナ(マオリ語の拡大家族)とマオリ委員会に承認嘆願を提出してからやっと使用することにしたほど。ティキは、ニュージーランドと太平洋の島国では幸運のシンボルで、尊敬の気持ちを持って扱われるものであり、安っぽいマオリチックで、感情的な付属品としたくはなかった」と、キーン氏は付け加える。
マオリ語名を広範囲な分野で使用するのは、トフ・ワインズのテイラー氏に言わせると「マオリ語名の流用は両刃の剣となる。製品が製作者の価値を反映しないで、マオリ文化の特質をただ単に製品を売るために流用するのはマオリ文化の表面的な評価にしかすぎず、不誠実である。しかし、ワイン業界が敬意を持って、マオリ語を適用し、マオリの名前を製品に冠するのであれば、民族としてのマオリが自己をより高く持つ象徴となり、それ自体はよい傾向である。」
「先住民族の名前を企業が適切な形で使用し、そのための必要手順を踏めば、マオリ文化を継承する名前の使用は奨励できる。これはひいてはマオリ語文化の受け入れにも繋がるからである。これまでもマオリが何回かワイン業界に参入したが、あまり長続きしていなかった。これからはもっとマオリ所有のビジネスが増えることを願う。パ・ワインズは、私たちの祖先・家族のためにしたかったことだった。これは、私たちには自分たちのアイデンティティと語り伝えられる物語を持っているからだ。だがここには、私たちのような物語を持つ家族がいないのは残念なことだ。」とマクドナルド氏は言う。