NZ Wine News
ニュージーランドワインニュース
23.09.2012
ワイン・オタクは必要なし

イベント企画会社のフィースト・アンド・ヴァイン社でワイン・コンサルタントと言う肩書きを持つニコラ・ベルシャム氏はワインと食事の相性(フード・ペアリング)の神秘解明に情熱を注いでいる。毎年期間限定で開催される食べ物の祭典とも言える「ウェリントン・オン・ア・プレート
で、ワインと食べ物のフード・ペアリングの基本知識を参加者に伝授し、地中海料理から発想を受けたランチを提供し、お気に入りのワインバー巡りの散歩、チーズとケーキのテースティングなどの企画と実施に大忙しの彼女が、偶然発見した『恐るべき』経験を語ってくれた。

「一本が一万円はするサンテ・ミリヨンのシャトー・アンジェリュスのメルローのボトルをオレンジ味のチョコレートを食べている時に倒してしまった。メルローは熟成するとチョコレート味がしてタンニンが和らげられ、オレンジの酸性のピリッとした味と交わり、素晴らしいコンビネーションを生んだ。偶然とはいえ、全く異なる要素の食べ物とワインが作り出した共同作品の素晴らしい例だと思う。自称ワイン愛好家たちにこの話をすると、とんでもないことをした、と言う顔をするけれどね」とベルシャム氏は語る。

「ワインと食事のマッチングは、ニュージーランドには全く新しい文化。というのも、そもそも、イギリスと北西ヨーロッパ諸国の植民地だったニュージーランドでは、ワインや食事自体にも、限られた経験しか持っていなかったため、ワイン愛飲の歴史自体が短かい。今でこそ他民族国家だが、食事とワインの相性を考えて、という食文化を持っていなかった。

「荒唐無稽の修飾詞でワインを飾り立てるより、ワインを飲む人にはもっと教育が必要だ。例えば、シャルドネの瓶の裏のラベルには『鳥料理とよく合う』と記載されているのをよく見るが、そういう情報はどう鳥が調理されているかとか、どこの地方のシャルドネなんてことには全くお構いない言葉の羅列。私が心がけているのは、人を萎縮させない程度で土の情報で、どのワインがどの料理とどうして合うか、合わないかを、自分の味覚で感じることを示しているだけ。

生活の全てがワインに囲まれているような彼女だが、彼女のそもそものワインとの出会いは商業デザイナーとしてワインのラベルのデザインを手がけたのが発端。その後アイルランド、イギリス、イタリアに旅行兼仕事で移り住み、ニュージーランドに戻ってから、ワインの味覚を開拓するコースを開講し始めた。この仕事で彼女が発見したのは、ワインについて知らないから、ワイン専門店に行くのを躊躇している人が多かった、ということ。さらに、ワイン店に来る人の中に、自宅のセラーにある高価なワインの話を延々としたり、ワイン専門家がこういった、ああ言ったとうんちくを垂れるのが趣味の人によく出くわすが、こういう人に限って、実際に自分たちが飲むワインを選ぶのに、『12ドルぐらいでどれがお勧め?』という質問をする人たちだった。ワイン業界は保守的になりがちだが、それでいて新たなワインを飲む人口の開拓に迫られている。だからアジア、特に中国市場は重要。中国では、ワインを飲む、とかワインを味合う、という言葉を使わず、ワインを学ぶ、という言葉を使うそうだ。私の目標は、ワインをもっと身近なものにすること。ワインが好きだと感じたら、誰がなんと言おうと、そのワインは美味しいワインだ、と言いたい
と、やはり彼女の頭の中はワインでいっぱいのようである。

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