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ニュージーランドワインニュース
NEW! 02.02.2026
初のマオリ系 自然発酵の有機リースリング誕生

約18ヶ月前、異なる専門分野を持つ6人の女性が集い、最先端技術を駆使し、「マウリ(マオリ語で生命力)」を感知する作業を行った。
土壌と葉の声を聴くという、マオリとして自然に畏敬の念を抱く体験となった。「この瞬間に、ブドウの息吹を確信し、初のマオリ系有機ワイン誕生への可能性を確信した。土壌に検査機器を差し込み、葉に機器を取り付け、ブドウの葉やツタ、土壌の鼓動を聴きとり、自然の生命力と繋がることができた」とジェシカ・ハッチングス博士は注意深く言葉を選びながら語った。ニュージーランドでワイン醸造に聴取技術が用いられた最初の瞬間だった。

ハッチングス博士は環境学の博士号を持ち、過去25年間食料安全保障の専門家として有機栽培とマオリ式園芸の実践と指導に専心してきた。2011年には、マオリの知恵に基づいた有機認証制度「フア・パラコレ」の開発と立ち上げにも貢献している。

3年前、バイオダイナミックス・ワイン会議で女性醸造家のハントレス・ワインズ創業者ジャニン・リカーズとリシェル・タイニーに遭遇してから、共同で前人未到のものを共に創り上げるという構想が瞬く間に芽生えた。

「その会議で私は数百人の醸造家を前に『トノ(挑戦)』を投げかけた。これまでのワイン業界では、せいぜいマオリの名前を借りてのネーミングか概念を誤用しているだけで、未だにマオリ文化と真に結びついたワインが存在しなった現状を変えるべきだ、と訴えた。参加者たちと話し合いを重ねるうちに、後のワイン協同組合となった『マティティ』が誕生した。」

マティティという名称は、マオリの太陰暦における夏の七つの段階を指し、ワイン醸造が行われる時期でもある。

共同組合の他のメンバーには、聴覚技術の研究者のマリアナ・テ・ランギ氏、有機茶ブレンダーのティミー・スミス氏、そしてハッチングス博士のパートナーで、後に共同設立した食料安全保障慈善信託団体パプアハカリトリトの共同設立者のジョー・スミス氏だ。

「マオリ式有機認証制度の『フア・パラコレ』認証制度の理念を協同組合と共有できたことが何より嬉しかった」とハッチングス博士は語る。ペティアン・ナチュレル(天然発泡)でのリースリングの製造工程のすべてがマオリ独自の方法で行われたことを誇りに思っている。「マタウランガ・マオリ(先住民の知恵)は、自分だけで独占していても意味がない。共有しなければならない。これまでの研究工程は楽しいものだった。のマオリ女性6人がワインについて語り合うだけで、絶えず笑い声が絶えなかったし、自分が最高だと証明する必要もなかったので、ありのままの姿で、持てるものを携えて集まり、お互いの『超能力』を見出せた。」

ところが2025年11月、ハッチングス博士とスミス氏のカイトケにある有機教育農場で初めてのマティティワインを試飲する予定の数日前に、災難が襲った。ある朝、ハッチングス博士がマオリの伝統的なひょうたん植物に油を塗るのに使っていた亜麻仁油を染み込ませた布が、ゴミ箱の中で自然発火してしまった。11分後には消防隊が到着したが、炎はすでに家を飲み込んでいた。

「全員が無事脱出できたことに感謝している。長年住んでいた家も種子の貯蔵庫も含め全てを失った。でも昨年の干支は蛇だったし、蛇のように全てを脱ぎ捨てれば、また自然が再生の手助け異をしてくれる」と、ハッチングス博士は語る。

協同組合のメンバーは何のためらいもなく数日後に集結し、それぞれの労苦の成果を祝うことを決めた。仮テントの中でプラスチック製のコップにワインを注いで祝杯をし、その後火災の残骸から使えるものを拾い集め、ゆっくり家の再建に向けて動いている。

「もともと、この土地は古い酪農場だった。親子でテフヌア(土地)を再森林化し、何千本もの在来樹を植え、鳥たちが戻ってくるのを見守った。庭にいると、トゥイやケレルが頭上を旋回して、20年前には存在しなかったコウハイの木に群がり、今度は人間は身を屈めないぐらいやって来るようになった。ここには全長7メートルの菜園が10区画と温室が2棟あり、拡大家族と地域コミュニティに年間を通じて安定した有機野菜を供給している。」

仮設小屋での取材に応じるハッチングス博士は、21年間暮らしてきたこの土地をどれほど愛しているかが伝わってきた。

思い起こしても自分たちが成し遂げたことに誇りを感じる。マティニ初の自然発酵ワイン収穫で1200本以上瓶詰めした。彼女たちの夢はこれからも続けていくことだ。

「この土地は自己治癒をしようとしている。フア・パラコレ(先住民の有機認証システム)をワイン造りに取り入れることで、私たちは土地が自らを癒す手助けをしているのだ」

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