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ワイラパラのマードック・ジェームス・エステートでは収入率の高いブドウの苗木を植える場所確保のために、2万5千本を抜く作業をしている。同エステートのワイン醸造家は、「リスクを伴う決断だが、収入率が高い種を植えるためだ」、としている。同ワイナリーでは、年間生産量の半分を醸造するブドウを生産する10ヘクタールに植えられていたソーヴィニヨン・ブラン種のブドウの木を抜き、その分価値の高いピノ・ノワール種のブドウを植えるためのものである。
マードック・ジェームス・エステート・ワイナリーの創始者であるロジャー・フレイザー氏は、「より見返りのよい製品を生み出すためのこの手段は、自分個人の儲けが目的でなく、国としても逃避できない賭けだ。この計算づくのリスクは、世界的なピノ・ノワールの需要の伸びに左右されている。現実には、消費者は価格高のピノ・ノワールを好んでいるし、それより価格の低いソーヴィニヨン・ブランではマールボロに根拠地を持つ大きな国際的なワインメーカーと市場競争に勝つことが難しくなってきている」と言う。
ツーリズムとマーケティングの見解からしても、マーティンボローの名を有名にしたピノ・ノ・ワール種に焦点を当てるのは理にかなっている。「マーティンボローはピノ・ノワールの精神的な故郷であり、ニュージーランド・ワインを世界的に有名にしたピノ・ノワールはこの地こそがワインとニュージーランドが恋に陥った土地、ともいえる」とフレイザー氏は語る。
ピノ・ノワール種のブドウは皮が薄く、悪天候に弱く、病気にもなりやすいし、ワイン造りにも手がかかる、という具合に、非常に難しい種類ではあるが、フレイザー氏はマードック・ジェームス・エステート・ワイナリーでワイン醸造家を務める息子が、しっかり成功裏に導くだろう、と自信を持っている。ちなみに、削除作業だけで30万ドルの費用がかかり、その上新しいブドウの苗が、完全なブドウを生産するまでに5年という年月がかかるというリスクを負うことになる。
この戦略的決定は、量より価値を取るためのものであり、こういった決定はワインだけでなく、他の産業でも学ぶべき点はある。「価格追求をするつもりはない。土地があるためにそうならなくても済んだ。然し、変化を導入するためのコストが価値を高め、リスクもある、ということは十分理解している。」
ブドウの木を引き抜くのは3段階を踏む。まず、木、あるいは地面に水平に伸びる枝(ケーン)は樹幹からチェーンソーで切りとり、枝を支えている針金からをはがし取り、そしてパワーシャベルで根っこから引き抜く。2,100株を削除するのに一日かかる。
「健康な木を引き抜くのは精神的にストレスを感じる。それぞれの木は美しく、しっかり根を土に張り巡らせていて、根こそぎとるのはとても悲しく、心が痛むが、未来のためには、仕方が無い事だ」。削除作業は2週間前から始まり、まだ2週間はかかる。新しいい苗は9月から植えられる。
ワイン関連の記事を書くジョン・セーカー氏は「マードック・ジェームス・エステート・ワイナリーの再植は非常にまれで、危険が高いものだが、恐らくやる価値のあるものだ。品質を重んじるマードック・ジェームス氏がピノ・ノワール一筋でやっていこうという判断を下したことは理解できる。英断だ。ピノ・ノワールは”気まぐれな“ブドウだが、手を掛けるだけの価値のあるものだ。八方美人にならず、自分の力を信じることだ。」と語る。
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