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NEW! 07.10.2024
進化するワイン・パッケージ:缶から段ボールまで

ワイン業界でのパッケージ方法転換には「ニッチ市場拡大」が必須である。

マールボロにあるボトリング工場でバッグ・イン・ボックスの試験的工場を設置予定のワイン・ワークス社のティム・ノウェル・ウスティッケ氏と、2050年までに脱炭素化・CO2排出ネットゼロ達成という業界全体の目標の一環として代替的ワイン包装目指すニュージーランド・ワイン生産者のサステナビリティ・ゼネラル・マネージャー、エドウィン・マッセイ博士との共同ウェビナーが開催された。「サステイナブル・ワイングローイング・ニュージーランド(Sustainable Winegrowing New Zealand certification programme / SWNZ) 持続可能なワイン醸造ニュージーランド)のデータでは、ワインのパッケージは、ワイン1本生産にかかるフットプリントの少なくとも44%ともなっている」とマッセイ博士は言う。

ウェビナーでは、新しいワイン・パッケージの専門家や革新者が一堂に会し、まず登場したのはジョイ・ワインズ社のクリス・アーチャー氏。同社は2017年に缶入りのみでリースリングを発売して以来、マールボロソーヴィニヨン・ブランと、セントラル・オタゴピノ・ノワール、ミモザとサングリアも缶入りで販売している。「消費者が購入するのはパッケージの中身で、缶入りワインに移行しても品質が損なわれることはない」とアーチャー氏は指摘する。「弊社のワインは、スクリューキャップのガラス瓶とまったく同じように熟成していて、品質という観点から、缶の使用を私は100%支持する」。

「缶を使用する際の課題のひとつは、缶メーカーが課する最小ロット数が多いことだ。ニュージーランド国内では15万個が要求される。しかし、軽量化など大きなメリットもある。1トンのアルミで約20,000リットルのワイン缶が作れるのに対し、1トンのガラスでは1,825リットルにしかならない。その上、缶だと輸送にかかる燃料費も40%削減できる。」
ウェビナーで紹介されたその他の包装オプションでも環境上の利点、特に二酸化炭素排出量の削減が、発表者の共通のテーマであった。

ウェビナーには、ニュージーランドではまだ使用されていない革新的なワイン・パッケージの生産者も参加した。パックママ社の最高経営責任者で共同設立者のサンティアゴ・ナヴァロ氏は、「平らなワイン・ボトルがベター」と表現した。これは、リサイクルされたPETから製造され、750mlあたりわずか63gとガラスよりかなり軽く、「ガラスに比べて排出量は半分」だ。「このユニークな形状で、ボトルを平らにして梱包でき、パレット1枚当たりの梱包量はガラス瓶の約2倍になる。イノベーションが鍵で、ニュージーランドの業界は、もっと多くの選択肢を持つべきだ」とナヴァロ氏は強調した。

世界的に注目されているもう一つの低炭素ボトルは、英国を拠点とするフルーガルパック社のフルーガル・ボトルだ。コマーシャル・マネージャーのキアラン・ディクソン氏によると、「外側が紙、内側が食品用プラスチックのこのボトルの二酸化炭素排出量は、ガラス瓶の6分の1だ。フルーガル・ボトルが他のパッケージよりも優れている点は、750mlのボルドーボトル型なので消費者に受け入れられやすいうえ、360度ブランディングが可能で、若い消費者にアピールできる」とのこと。

マット・ダイシー氏は、セントラル・オタゴのワインをバッグ・イン・ボックスにするまでのダイシー社の道のりを紹介しながら、市場に受け入れられることの重要性についても語った。「レストランやオン・トレード(バーやレストラン、パブなどの店舗での消費)では、無駄がないため受け入れられやすいが、伝統的なワインショップでは受け入れられにくい。新しいことを受け入れやすい人と、そうでない人はいつでも存在する。」

「バッグ・イン・ボックスへの道のりは、正直、容易ではなかった。多くのことを学び、情報を提供者にも随分助けられた。その中には、半自動袋詰め機の輸入や、酸素輸送率の低いリサイクル可能な単一素材のバッグボックスの調達などだ。前述のアーチャー氏同様、課題のひとつが最小ロット数だった。10,000ユニットの袋を購入しなければならなかったが、その後同様のバッグボックスでワイン造りしたい他の生産者に3,500袋ほど販売した。高品質なワインをバッグ・イン・ボックスに入れる生産者が増えれば増えるほど、市場での受け入れも進むだろう」とダイシー氏は希望を託した。

グリーン・ボトルのニール・ポレット氏は現在、ニュージーランドで一番よく使われているというVisy社の415gワイン・ボトルの再利用スキームを模索している。同社はドイツのパートナー会社と、このボトルを広範囲に試験している。「この方法は、直ぐにでも再利用できると確信している。現在、詰め替え用ガラスの炭素排出量をモデル化し、ニュージーランドの平均的な使い捨てワイン・ボトルが製造時に370gの炭素を排出するのに対し、詰め替え用ガラスは22gしか排出しない。つまり、再生ガラスボトル1本が、再利用ボトル20本分の炭素排出量にほぼ等しい。これは、ワインのパッケージを変えるのではなく、消費後の処理方法を変えるだけだ。」

オークランド市と共同で実施した最近の調査では、回答者の90%以上が、空き瓶の再利用を始めたいと回答した。また、最近行われたキャンペーンでは、ワイナリーに洗って剥がせるラベルに移行するよう求めている。消費者からも「再利用可 」との反応も出ている。ポルト・プロトコルの世界的な再利用キャンペーンをワイン会社が検討することをポレット氏は望んでいる。「このキャンペーンは、ワイナリーに洗って剥がせるラベルへの移行を求め、瓶が再利用可能であり、ラベル自体もコンポスト可能となる、というおまけ付きだ。」

「業界が十分な知識を持った上で決断を下す必要性を強調し、ワイン・ワークス社は、継続的に量が確保できれば、どのような技術にでも投資する」と確約しウェビナー主宰者は
セミナーを終了した。

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