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ニュージーランドワインニュース
19.09.2022
マールボロ・サブ・リージョンの台頭

マールボロがワイン産地として成熟するにつれ、世界的に有名なソーヴィニヨン・ブランを造るアプローチにも変化が現れてきている。これまではソーヴィニヨン・ブランを最高峰へ高める努力に精を入れていたが、区画分けをし、各産地の多様性を強調しようとする生産者も増加している。

ブランク・キャンバス・ワインズの共同経営者で、マスター・オブ・ワイン(MW)のソフィー・パーカー・トムソン氏は、同じくMWのエマ・ジェンキンズ氏とマールボロでのサブ・リージョン開発の妥当性について議論し、マールボロで生産されるブドウの多様性への認識を高めた。

ジェンキンズ氏はMWの認定審査中に提出した論文で、リーマンショック後の世界金融危機と2008年の収穫量の増加がマールボロでのサブ・リージョン化への影響を考察したものだった。「高級ワインにおけるテロワールの重要性は、絶対的なものだ。ワインを探求し、定義するための方法として小区域化の路線を行くのは、品質への配慮と生産者の野心を意味し、ワインを一般商品と見る方向とは逆になる。歴史的に見ても、世界の高品質なクラシックワインは、地域や小地域を強く意識し、テロワールに軸足を置いている。これが、マールボロの課題となるだろう」、と記していた。

12年経った現在、マールボロではサブ・リージョンの考え方を受け入れ初めている。その発展を支えているのは、科学と感覚のデータだとジェンキンズ氏は言う。「これまでの研究でも、産地の違いを検証や、米国や英国などの主要市場では、プレミアムワインの産地が発展するには、サブ・リージョンに注目するべきだともわかっている。マールボロが消費者に段階的に品質のより良いワインを提供することが重要となっている」。

イギリスのホイスト・ホスピタリティ・グループのブラウン氏は、「今後の問題は、消費者がマールボロのサブ・リージョンを受け入れる準備ができるのはいつになるか、ということだ。英国の消費者はまだそこに到達していない。ニュージーランド・ワインというブランド、あるいは、既に著名なマールボロというブランド以外のワインに目を向ける消費者はまだイギリスにはいない」と、述べる。

MS(マスター・ソムリエ)のキャメロン・ダグラス氏もまた「アメリカの消費者も同じような状況にある。購入は価格主導となりがちなので、消費者は自分が知っているブランドや産地を選択する。例えば、マールボロソーヴィニヨン・ブランセントラル・オタゴピノ・ノワールは消費者が自信を持って購入できるワインの例だ。マールボロが地域内のサブ・リージョンを探求し、消費者に紹介し続ける必要があるが、そのためにはサブ・リージョンに対する認識を高める必要がまず必要だ」と、語る。

歴史的にマールボロワイラウ・ヴァレーサザン・ヴァレーアワテレ・ヴァレーという3つのブドウ栽培地域に分類されてきた。それぞれに異なる極小気候が存在している。セント・クレア、ウィザーヒル、アストロラーベなどのワイナリーは、単一畑のワイン提供をしてきた。

アストロラーベの創設者でワインメーカーのサイモン・ワグホーン氏は、「既に2002年には、ワイホパイ・ヴァレーで単一畑のワインを造っていた」と言う。その後、2005年にアワテレ・ヴァレーソーヴィニヨン・ブラン、2006年にケケレング・コーストのソーヴィニヨン・ブランと、産地ごとのワインをラベルに載せてきた。
「ソムリエや目の肥えた消費者が、マールボロアペラシオンを構成するそれぞれのサブ・リージョン地区を探求に関心を示すことになるだろうと信じていた。将来的に、マールボロのワインに対する信頼が高まるだろう。さらには、ソムリエがこの地域のワインの幅広さと多様性をよく理解し、特にテロワールに関連した明確な特徴を持つワインを紹介することで、この多様性を強化することが重要だと考える」とワグホーン氏は言う。

セント・クレアのマーケティング・マネージャー兼ディレクターのサリナ・イボットソン氏は、「消費者の関心は高まっている。消費者の関心と理解度が高まっていることは喜ばしいことだ」と言う。

「2005年に発売されたセイント・クレアの単一畑パイオニア・ブロック・シリーズは、プレミアムで品質重視のワインを造りたいという熱意から生まれた。これは常に学び、知識を深めたいという私たちの願いでもある。私とワイン製造チームは、土壌、気候、立地、ブドウの木のストレスと品質との関係を探求することに情熱を注いでいる」、とシニアワインメーカーのスチュワート・マクレナン氏は話す。

ウィザーヒルのワインメーカーのマット・ラージ氏は「2007年は素晴らしいヴィンテージで、うちの主要なブドウ畑の実力を見せつけた。ブドウ畑の選定がワイン醸造プロセスの重要な部分を占めることを示したかった。また、土壌構造や気候の違いがブドウの生育やワイン造りに与える影響も紹介したかった」と言う。

これまでにサブ・リージョンを全面に既に打ち出してきた他のワイナリーもある。ラパウラ・スプリングスは2016年に初のシングル・ヴィンヤードワインに畑の呼称を表示してリリースし、2018年にサブリージョナル・シリーズの「ローエ」を発売した。コンサルタント・ワインメーカーのマット・トムソン氏は、「サブ・リージョンの定義の素晴らしさは、私たちのような生産者が果実の供給源を明確にし、自分たちの畑の強みを支持することだ。」

「ニュージーランドワイン」は完全に認知され、市場でも求められているが、どうやらマールボロのサブ・リージョンの力と未来は、生産者と業界団体の手に委ねられているようだ。

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