NZ Wine News
ニュージーランドワインニュース
13.12.2023
ニュージーランドのイノベーション:ワインクリップで実を結ぶ

より持続可能なブドウ栽培を求める声に後押しされ、ニュージーランドでデザインされたブドウの木から作られた生分解性のクリップが輸出市場を賑わせている。

ポリナチュラル(PolyNatural)のブドウ・クリップは、クラウン研究所(ニュージーランド政府の傘下にある8つの研究所の一つ)のサイオン(Scion)とクライストチャーチのEPL社との研究提携で生まれた。これは、熟したブドウを鳥や害虫から防御するためにネットをかける時に使用される従来のプラスチック製クリップの代替品。ニュージーランドのワイン業界では、毎年約3000万個のプラスチック製クリップが使用され、ネットが取り外される度に、非分解性プラスチックが山積みとなって残ってしまっていた。

ワイン業界がより持続可能な解決策を模索する中、サイオンはブドウの果皮とバイオプラスチックでできた、分解速度の速いブドウ・クリップの開発に着手した。研究者のドーン・スミス氏とステファニー・ウィール氏は、現場で多くの試作品を試すプロジェクトを主導し、最適な機械的・物理的特性にたどり着くまでに多数の試験を行なった。その結果、木材加工の過程で出てくる廃棄物を使用し、微生物を使って発酵させ、適切な土壌条件下で完全分解する100%バイオベースの耐久性のあるクリップの作成に成功した。

2020年、EPLとサイオンは、ポリナチュラルの前身ともなったブドウ・クリップの研究が認められ、持続可能ビジネス賞で、卓越したコラボレーション賞を受賞した。その際の商品化の過程で学んだ教訓とその後の市場調査を経て、園芸、ブドウ栽培、海洋産業向けの生分解性製品が生まれる土壌となった。

セントラル・オタゴマールボロクラウディー・ベイ・ヴィンヤードをはじめ、ニュージーランドの多くのワインメーカーがこのクリップの試用し、結果に満足している。セントラル・オタゴヴィンヤード・マネージャー、デレク・ベアネス氏は、「このクリップは完璧。生分解性クリップは環境に優しく、必要な役割を果たしている」、と評している。

同製品はオーストラリアのアデレードのワイン生産地のみならず、ニュージーランド貿易経済促進庁の支援を受け、カナダとフランスへの輸出も計画されている。ポリナチュラルのセールス&マーケティング担当ゼネラルマネージャー、ガレス・イネス氏は、「商品化のプロセスは発見の連続だった。良品を作り出すには時間がかかるものだ。ワイン生産者が十分に満足すると確信できる製品を開発するために、成分配合、様々な材料でのテストなど、多くの実地調査を行い、サイオンとの共同作業に数年を費やした」、と語る。

「今や世界中のワイン生産者が持続可能な製品を求めている。環境プラスチックの問題を解決には、これまで通りの手段を踏襲することができないとは誰もが知ることだ。このようにニュージーランド伝統の協力の精神がこの製品作成に注ぎ込まれたことをとても誇りに思う。このような製品が業界の未来を先導するだろう」とイネス氏は、語る。

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