NZ Wine News
ニュージーランドワインニュース
NEW! 15.12.2025
オーガニックのブドウ栽培から従来型へ変換の動き

マールボロ地域のワイン会社でオーガニック栽培から従来型農法へ回帰する機運が見受けられている。例えば、マールボロを代表する2大ワイナリーがその例だ。

その一つが、インデヴァン。130ヘクタールの有機栽培ブドウ畑のうち約100ヘクタールを非有機栽培に戻した。もうひとつは、ブランコット・エステートを所有するヴィナークシーは150ヘクタールのうち約80ヘクタールを従来の栽培方法(合成農薬・肥料の使用や追加灌漑などの外部資源を投入する手法)に戻した。
※サスティナブル農法は継続中。

マールボロ地域でワイン製造会社を営み、ニュージーランド・オーガニックワイン生産者協会の創設メンバーでもあるバート・アーンスト氏は、インデヴィンと、ヴィナークシー(について、「両社とも、もともと有機栽培だったブドウ畑を継承したが、有機栽培でのブドウ生産が会社の持つ経済的戦略指針に合致しなかった。

どういう栽培形態にするかどうかはビジネス・モデルを持つかで異なる。大手企業のように大量生産・高収量を基盤とするビジネスモデルなら、有機栽培は不適格だ。海外向け低価格製品供給をする場合、ヘクタール当たりの収量目標が設定されるため、有機栽培ではその達成が不可能だ。特にマールボロソーヴィニヨン・ブランではその傾向が顕著だ。従来の農法に戻すことで、ワイナリーは厳しい経済状況下でも運営コストを削減し、より高い収穫量を得られるようになった」と指摘している。

つまり、高収量栽培とは、単位面積当たりのブドウ房数や収穫量を増やす栽培法で、収穫量は増加するが、ワインの品質に悪影響を及ぼす可能性がでてくる。

「有機栽培は従来型よりも栽培コストが高くなることは、一般的に認識されている。また、量より質を重視するので、合成肥料などで成長を促進せず、土地が自然に生み出す成長に委ねる。つまり、ビジネス・モデルが、イギリスのスーパーマーケット向けの安価なマールボロソーヴィニヨン・ブランを供給することなら、有機栽培では商売にならない」とアーンスト氏は語る。

つまり、構造的な制約、認証コストの高さ、輸出市場での認知度の不確実性も、有機栽培の減少に寄与している。

2024年、ニュージーランドのワイン輸出は金額ベースでは12.2%減で、数量ベースでは13%減となった。そのため、輸出量の約75%を占めるマールボロ地域は他地域より深刻な影響を受けた。

ブラガート研究所の知識移転・連携責任者ブレイデン・クロスビー氏は、「ビジネス・モデルや世界市場に応じ、有機栽培に参入したり、離脱したりするヴィンヤードが常にあるのは事実だ。現状のシナリオでは、既存のブドウ園を有機栽培システムに移行させると収量が減少する。一方、高収量型のビジネスモデルを採用している場合、有機栽培でない方が合理的だ。

しかし有機栽培は、ワイン生産者だけでなく環境全体にも多くの利点をもたらす。

「成熟が早まることで糖度が低く品質の高いワインが生産され、植物は害虫や病気に強い耐性を示す。有機栽培のブドウ栽培者は、硫黄や海藻ベースのスプレーなどの天然製品を用いて病害を防いだ。

従来の方法では、ブドウの木が合成殺菌剤に対する耐性を蓄積する可能性があった。高収量農業がマールボロソーヴィニヨン・ブランの市場過剰供給を招き、世界的な需要減退と相まって、この手法は経済的にも環境的にも持続不可能だ。現在、供給過剰の問題が少し起きていて、企業の多くが生産者に『以前のように大量のブドウはいらない』と伝えており、ブドウの受け入れ量を減らそうとしている。

明らかに今年収穫されていないブドウ畑がある。生産者の多くがブドウ畑を数年間休耕させたり、抜根して再検討する決断を下している。私自身は90年代半ばからワイン業界にいるが、こんな状況は初めてだ。生産者の多くが、ブドウの行き場を失うことになるだろう」とクロスビー氏は指摘している。

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