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気候の急激な変化で、ニュージーランドでも異常気象の日が増加し、火災の危険度が高くなる季節が長くなると予想されている。
ニュージーランド消防局のダレン・クロフォード氏は、「火災の規模が大きくなり、火災の発生頻度も高くなると思われる予測だ」と語る。
ワイン業界にとって、山火事はブドウの木だけでなく、醸造所のインフラにも脅威となり、同時に、遠くで発生した火災でも、スモークテイント(煙によるワイン汚染)と呼ばれる現象で、ブドウにダメージを与えることがある。最近の研究では、2019年から20年にかけてオーストラリアで発生した壊滅的な「ブラック・サマー」火災につながる状況が、セントラル・オタゴ、マールボロなどの地域で3年から20年ごとに発生することが浮き彫りになっている。
ニュージーランド火災緊急事態局(FENZ)は、農村地域や土地管理者と火災のリスク軽減に取り組んでおり、マールボロなどの地域では、ヴィンヤードやワイナリーの経営者が自分たちの環境の火災リスクとそのリスク管理方法を理解できるよう、ワイン業界の関係者と対話の機会が多い。ネルソンとマールボロで地元での準備と復興のシニア・アドバイザーを務めるクロフォード氏は、「ブドウ畑は草原に囲まれているため、火事が頻繁に発生する。そのためも草を短く刈りこむなど、手入れをすることが大切だ。また、火花の発生を防ぐために、ブドウ畑の草刈りを朝早くや夕方など、湿度の高い時間帯に行うことも重要だ」と言う。
FENZの火災対策戦略の中心は、地域社会をサポートする新しいボランティアの確保だ。ニュージーランド全土で、ボランティアは現在FENZの職員の85%を占め、大都市以外では不可欠な存在となっている。「単純な話、ボランティアがいなければ、火災の対応はできない。だから、彼らの存在は私たちには非常に重要。彼らは無償で活動している。自分の時間を割いて、訓練と開発に専念し、そして地域社会を支えている」とクロフォード氏は言う。
ワイン業界では、トレーニングを受けたFENZボランティアを雇用することの利点に気づく雇用主が増えており、FENZはその認識をさらに広めるためのキャンペーンを継続的に行っている。「火災監視員、医療対応訓練を受けたスタッフ、応急処置の訓練を受けた従業員など。彼らのおかげで火災が発生したら、すぐに対処できる。また、計画やリスクアセスメントにも長けているし、自営消防団の将校クラスになると、プレッシャーのかかる状況下でリーダーシップを発揮できるよう、さまざまなトレーニングを受ける。だから雇用主は、ストレスに対処し、プレッシャーの中で適切な判断を下すことのできる人材を手に入れることができる」とクロフォード氏は訓練の重要性を語る。
スパイ・ヴァレー・ボトリング・マネージャーのライアン・アンダーソン氏は、オーストラリアから帰国後、ブレンハイム自営消防団に入隊した。火災の季節には、1日に3回も仕事を休まなければならなかったり、夜間の消火活動で出勤できなかったりすることもあり、ボランティア消防隊員としての時間的な負担が大きいことを彼は認めている。
「しかし、ボランティアに提供されるトレーニングのレベルは、どの雇用主にとっても貴重な資産だ。ボランティアに施される訓練は、プロとしても引けを取らない。どこの会社にも負けないくらいだ。消防士は本来、リスク回避し、リスクを意識する。だから、緊急事態に対処する経験を持つ人が現場にいて、適切な緊急計画を立て、安全衛生をリードすることができる」とアンダーソン氏は付け加える。
スパイ・ヴァレーのマネージングディレクターのアマンダ・ジョンソン氏は、「地域に根差した家族経営企業として、FENZのボランティアを採用し、サポートできるのを誇りに思っている。コミュニティの強化や安全性の観点からだけでなく、従業員として、彼らは私たちの文化やビジネスでの健康と安全に貢献している。2人のボランティアを雇用しているが、ふたりとも冷静で責任感が強く、救急や火災対応の訓練も受けている。そして、ビジネスをより強靭で弾力性を持つようにもしてくれる。彼らの人柄や気遣いを示すものだからだ。彼らの存在はビジネスにとり、強みであり、質の高い人材だ」とジョンソン氏は言う。
アンダーソン氏は、ニュージーランドの消防士が訓練を受けるスキルのうち、ワイン産業に直接役立つものを紹介してくれた。例えば、化学物質の取り扱い、ガスや危険物の取り扱い、狭い場所での作業、ポンプ操作、動的リスク評価、応急処置などだ。
ヴィンヤードの草むら火災の主な原因は、トラクターや草刈り機が石に接触することで発火するため、ボランティアは草むら火災にも即座に対応することができる。「トレーラーには、水、ポンプ、複数のホース、ハンドツールが搭載され、敷地内の草むら火災に迅速に対応できるようになっている」。
タイラー・マッコム氏は、デレガット・リミテッドのヴィンヤード・マネージャーで、過去5年間、ワイラウ・バレー自営消防団のメンバーとして活動してきた。「ボランティア活動を通じて、さまざまなスキルを身につけられるだけでなく、出動や訓練に参加する従業員をサポートすることが、従業員の仕事への取り組みに反映されている。個人的には、FENZを通じて素晴らしい人たちに出会った。中には、私たちの会社で勤務する人もいて、全員が地域社会の一員だ。ユニフォームを着て、消防団で学んだことを自分のキャリアに活かすことに誇りを感じる。学んだスキルのおかげで、どんな緊急事態でも自信を持って対応できるようになり、この業界で自信をもってリーダーとして活躍できるようになった」とマッコム氏は語る。
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