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上向きになったかと思うと、どん底、そしてまた上向き、となるのがこのところのマールボロ地域のブドウ生産のパターンとなっていた。1990年代から2000年代後半のマールボロ・ソーヴィニョンの画期的な成功がこの地方でのブドウ栽培の急激な上昇となった。その成長率は驚異的だった。それが2008年に収穫された葡萄の質の不出来から、品質の疑わしいワイン生産となり、ブームが急激に萎んでしまった。需要の落ち込みと価格暴落となり、悲劇としかいいようのない結果を産み出した。
マールボロ地域の二つの特徴として、ブドウ栽培業者が大規模ワイン製造者に葡萄を販売する傾向が高いのと、市場の需要は一番新しい収穫のソーヴィニョンということが挙げられる。その為、生産過剰と需要の落ち込みはかなりの打撃となった。その結果、需要過多となった葡萄から、スーパーマーケットでは主要ブランドを使わない名称やプライベート・ブランドとして、破格の値段で売りたたかれた。しばらくは寒々しい状態を呈していた。
幸いなことに、こんな状況にも変化が出てきた。ニュージーランド人の性格としてよく知られている常識と実用主義が功を奏し、最近の順調な再建計画の成果、需要を取戻し、ブドウとワイン価格が上昇傾向し、業界でもやっと安堵の声が聞かれ始めてきている。新たな市場開拓ももちろん功を奏している。ワイホパイ(ワイラウの奥の谷部)やまだ開拓の可能性を大いに秘めているアワテレなどが新たな葡萄畑として生まれてきている。
とはいえ、全て問題が解決したわけではない。昨年の大量ではあるが、やや縮小気味の収穫の後、2014年ものは、もうあと数週間で収穫の時期を迎えようとしている。その結果を語るのにはまだやや時期早熟ではあるが、潜在的にはかなりの収穫を期待出来そうである。通常はヘクタール当たり12トンがソーヴィニョンの平均的な収穫量となっているが、このままの状態が続くとそれが30-35トンにもなりそうな葡萄畑がある。葡萄が大きくなり過ぎると、適切な熟成にならないし、季節前に新芽を間引き収穫量を減少させてしまうこともよくある。まだ季節前のこの時期で、もう少し待てば熟成が進むことを望んでいる葡萄製造者は、まだ時間を見てみよう、という様子も見られる。もう一つの問題は、間引き作業をする季節労働者の不足。間引きに機械使用の収穫をする葡萄栽培者もいる。かなり過激に聞こえる作業だが、実際は機械でも十分うまくいっている。
収穫制御するには関係各者の協力と義務感を要する。生産過多となると、価格下降と需要減少でブドウ生産者は翌年痛手を負うことになる。しかしその裏手をとり、同業者が全て収穫制御しているなか、個人レベルで、一社だけ売れるだけ販売してみると、自分勝手ではあるが、販売量を増やすことも可能である。2014年の収穫は大きく、しかも時期も早い、質の良いものになりそうである。どの程度の大収穫、需要となるかは、今後の状況如何である。
これがマールボロ地域の鳥瞰的予想。その裏にあるのは、ワイン製造者がテロワーを熟知し、それにあったワイン造りに意識を集中させている。最近この地を訪問し、幅広く、大規模は葡萄の生産者と話す機会を得た。テ・ワレ・ラ・ワインズとスターテ・ランド・ヴィンヤードはどちらかと言うと小規模生産者。セレシン・エステートとドッグ・ポイントは中規模ではあるが、品質を特に重視している。また、イエーツランズ、ヴィラ・マリアなどの大規模会社は、商業的な成功を生み出した質のいいワインや土地の性格を表現する高級ワインなども手掛ける大規模なワイナリーもある。
マールボロはニュージーランドでも非常に重要な地域であり、2014年の収穫がもうすぐ開始となるが、概ねの予想では素晴らしい収穫となるであろう。
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