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ニュージーランドワインニュース
10.04.2024
ブドウ畑上に飛び交うレーザービーム;進化と改革

セントラル・オタゴの小規模なオーガニック・ヴィンヤード上にレーザービームが飛び交っている。これは鳥退治用の新兵器。通常かかかるネット購入、設置、撤去等の費用が不要だ。「しかも、結果も良好」、と栽培管理者のサイモン・ゴーリー氏は言う。

この新技術は鳥退治のみならず、データを記録、評価し、年ごとの比較して、その結果が瞬時に計算され、グラフ化され、今後の傾向を解析もでき、さらには冬の剪定重量、花数、欠株、ミミズの数など土壌の健康指標も示しだせるセクトメンター(Sectormentor)というアプリだ。「これは画期的な技術ではないものの、ブドウ栽培者にとっては毎年1回しかない(収穫の)機会を、過去のデータを用い、収穫の量や質を高める手助けとなり、栽培や収穫の決定に役立てるのだったら、非常に有益だ」とゴーリー氏は熱を込めて語る。

「2025年の収穫時までに、小型の電動自律型プラットフォームを導入し、レーザーかガスガンを装着し、決まったパターンでブドウ畑を巡回するようにプログラムしたい。ブドウ栽培は労働集約型の上に、うちは小規模ということもあり、手がかかる作業が多い。可能な限り作業を機械化したり、ロボットやカメラを使うことができれば、労働力の節約になる。
また、鳥を追い払うネットの下で人的に鳥を脅かすような作業より、果実の品質向上に集中し、新梢や房の位置を決める作業に時間をかけ、熟度と風味を最大限に高めてワインを美味しくすることができる。これからは、どこに資金を投入するか変化するだろう」とゴーリー氏は考えている。

ドメーヌ・トムソンのような小規模企業がデジタル・ソリューションに深く取り組む一方で、ワイン業界で大規模な事業展開をする会社は、貴重なデータを収集しつつ、除草、剪定、散布など、無数のブドウ畑の作業を行うことができる自律型ブドウ畑トラクターなど、ロボット工学への投資に力を入れている。専門家たちは、コロナ禍の3年間で、自動化が可能なる技術の開発が進み、それに伴い人々の技術への信頼度にも大きな変化が生じ、今後なお一層の変化があるだろう、と見ている。

「ここ数年、ワイナリーヴィンヤードで働いている人なら誰でも、利用可能なテクノロジー・ソリューションが大幅に増加しているのを目にしただろう」と新興企業スマートマシーン社のアドバイザー兼投資家のトレイシー・アトキン氏は予想する。
その例として、空中マッピングや散布、作物や灌漑の管理、害虫や病気の検出、収穫量の推定にドローン、衛星、カメラ技術をアトキン氏は挙げる。「ロボット型自律走行車や鳥よけ(バード・スケア-)に加え、労働力計画、安全衛生、コンプライアンス、灌漑管理、さらに水ストレス測定や養分管理のための植物や土壌センサーなどのイノベーションもある。ワイナリーでは、分子ろ過、酵素センサー、ワイン分析、発酵モニタリングのための新ノテクノロジーも存在する」とアトキン氏は言う。

ブドウ栽培コンサルタントのデイヴィッド・ジョーダン博士は、「現在のファーマー達は30~40年前よりも土壌環境を意識しているようだ。同様に、ブドウ畑で新しい技術が導入されることで、もっと哲学的方法での開発に時間を割くことができるようになった。巧みな技術を使えば、ブドウ畑の多くが行っている耕作面積の広いアプローチよりも、的を絞った活動が可能となり、人間の対応だけに頼っているときよりも、良い方向に進めることができる」。

「ワイン生産者やワイナリーは、新しい技術を利用することで、栽培やワイン造りが改善される可能性があれば、それを利用しないという選択肢は危険と隣り合わせ となる。小規模な事業者には、テクノロジーは既存のツールの進化とも言える。開発の "最先端 "にいる事業者にとっては、進歩は人工知能や運転手のいない自動車かもしれない。いずれにせよ、急速に変化する分野であり、規模にかかわらず、テクノロジーはますます身近で手頃なものになるだろう。新しい技術に疑いを持って試してみると、びっくりさせられることが多い」、とジョーダン博士は言う。

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