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ニュージーランドワインニュース
NEW! 09.09.2024
マールボロのテロワール地域差をデータ分析

1,000を超えるマールボロソーヴィニヨン・ブランの畑から収集されたデータで、特定地域のテロワールへの理解を深める取り組みが行われている。

オーストラリア・ブドウとワイン研究ジャーナル誌に掲載された論文(“データで支えるテロワール:ブドウ園のパフォーマンス指標と土壌・気候データを統合し、ニュージーランドはマールボロの地域内変動の理解を深める”)は、地元のワイン会社が提供した収穫量と収穫日がベースとなった研究成果だ。アデレードにあるオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の上級主任研究員のロブ・ブラムリー博士は、「バロッサ・ヴァレーとマーガレット川周辺地域で、一般に公開されている土壌と気候のデータで同様の研究を行ったことがあるが、マールボロでの研究はさらに一歩踏み込んだものと言える。マールボロの生産者とワイン会社は、データ共有に積極的に参加してくれた成果ともいえる」と研究の成果を述べている。

このプロジェクトの当初の目的は、マールボロに「同様の管理下で、ある場所で測定して別の場所での判断を汎用可能でいるぐらいの類似した地域があるかどうかという点を解決することだった。しかし、それはすぐに『テロワールの問題』だとわかった。研究チームは、ブドウ畑のパフォーマンス(収量と収穫日)に関するデータと生物物理学的データ(土壌と気候)を重ね合わせ、マールボロテロワールでの地域規模変化を総合的に捉えることができた。
その結果、マールボロではソーヴィニヨン・ブランの生産量が特徴的に変化しており、特にワイラウ・ヴァレーアワテレ・ヴァレーは明らかに異なっていることが判明した。特に興味深いのは、我々が特定した境界線は、以前に特定されたものとは少し違っていた。ワイラウとアワテレは明らかに異なる性質があり、ワイラウの下流域には、他のどこよりも明らかに収量が多い地域がある」とブラムリー博士は語る。

共著者のマイク・トラウト博士は、「マールボロテロワールに長年関心を持っていたが、この研究で、一貫して収量が低いと思われるワイラウ平野の一部も浮き彫りになった。この研究は最初の一歩であり、地域差の背後にある『なぜ?』をさらに理解するための研究する必要性がある。こういったばらつきがどうしてあるのかについては、多くの仮説がある。土壌の種類を見ると、ある地域はワイラウ平野の他の地域とは明らかに異なっている。単に保水力が高いだけなら、なぜ灌漑が同じ効果をもたらさないのか?栄養の影響だとしたら、肥料でどう変わるのか?などだ。」

「この研究は、ブドウ畑の管理やワイナリーのロジスティックスから、地域の拡大や縮小に関する将来的な計画まで、マールボロ産業の多くの側面に将来的な影響を与えると指摘している。この研究がきっかけとなり、今後もマールボロのサブ・リージョン性や、今回の研究成果がマーケティングの観点でどの程度利用できるのかの興味に繋がるだろう。ソーヴィニヨン・ブランの研究プログラムでは、様々な畑の同じ収穫時可溶性固形分を比較したワインも造られたが、畑の数は限られていた」とトラウト博士は言う。

ブラムリー博士は、今後は出来上がったワインを掘り下げる研究を続けたい意向があるようだ。「果実の化学的な分析や、特定したクラスターに基づく官能分析ができれば、その違いがワインにどの程度表れているのか、非常に興味深いものとなるだろう」。

研究の詳細はこちら(別リンク):hindawi.com/journals/ajgwr/2023/8811402/

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