NZ Wine News
ニュージーランドワインニュース
27.03.2024
たった一種のブドウで世界的に有名になったニュージーランド。それが最良策か?
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人が欲するものを提供するのが商業活動では定石だ。しかし提供していないものを消費者が欲していたらどうなるだろう。これがまさに、ニュージーランドのワイン業界が直面しているジレンマとなっている。ソーヴィニヨン・ブランでその名を馳せたニュージーランドワインは、この品種だけに偏より全ワイン産業を支えている。ピリッとした風味で定評あるソーヴィニヨン・ブラン種が作付面積、生産量、国内販売量、輸出量などすべての点で、羊が点在するマールボロの丘陵地帯を圧倒的に占めている。
ソーヴィニヨン・ブランは収益をもたらす重要なブドウで、マールボロ以外の地域でも数多くの生産者がこの種を栽培する。ちなみに、ホークス・ベイ産のブドウを15%まで使用しても、「マールボロ」のソーヴィニヨン・ブランとしてみなされる。最近では、この「15%」までの容認があるからこそ、シラーやシャルドネの栽培をする経済的な余裕がある、とある生産者が言っているほどだ。
ニュージーランドには他にもブドウ種が栽培されて、マールボロから出荷されるソーヴィニヨン・ブランより品質の良いワインを造ることもある。それでも、ソーヴィニヨン・ブランの圧倒的な優勢を考えると、その事実に気づくかないことすらある。例えば、セントラル・オタゴのピノ・ノワールは輸出市場でやや波紋を呼んではいるが、シラーはワインメーカー労力を認められないような状態だ。
ピノ・グリは、栽培から棚に並ぶまでの期間が短く、生産者には資金繰りに便利なブドウの種ではあるが、生産量の多い会社が自社生産のワインで世界市場を制覇してしまうようなワインの世界では、ピノ・グリで世界的な名声を築くのは難しい。
しかし、ソーヴィニヨン・ブランが優位に立つ一方で、実際に世界の消費者がニュージーランドワインに何を求めているのかを見てみると、興味深い状況がある。つまり、定評と人々が実際に求めているものとは必ずしも一致しない、ということだ。ひいては、これは、ニュージーランドワイン投げかけられる警告ともなる。
Wine-Searcher「世界で最も注目されているニュージーランドワイン」:
ワイン名 | 点数 | 平均価格 |
クラウディベイ ソーヴィニヨン・ブラン | 90 | $33 |
グレイワッキー ソーヴィニヨン・ブラン | 91 | $23 |
ドッグ・ポイント シャルドネ | 30 | $91 |
クメウ・リバー マテ・ヴィンヤード シャルドネ | 93 | $69 |
テ・マタ・エステート コロレーン | 93 | $89 |
アタ・ランギ ピノ・ノワール | 93 | $65 |
フェルトン・ロード ブロック5 ピノ・ノワール | 93 | $98 |
クスダ・ピノ ノワール | 92 | $242 |
クメウ・リバー エステート シャルドネ | 91 | $32 |
フェルトン・ロード バノックバーン ピノ・ノワール | 92 | $55 |
まず特筆すべきは、前述のようにソーヴィニヨン・ブランについて悲観的になったにもかかわらず、リスト上位にソーヴィニヨン・ブランが2つのランクインしている。グレイワッキーは、2023年のワイン・スペクテーターの年間ワイン・オブ・ザ・イヤーでトップ10に割り込んでいる。
クラウディー・ベイはニュージーランドで最も注目されているワインの常連のひとつで、ワイン・サーチャーが開始した1999年には、同サイトで最も検索されたワインだった。LVMHしに買収されてからは、巧みなマーケティングのおかげでブランド認知が功を奏している。
だがソーヴィニヨン・ブランは芳しくない。ピノ・ノワールが4種、シャルドネが3種エントリーして、キウイを代表するワインとも言える『テ・マタ コロレイン』はエリートの座を維持し、ボルドー・ブレンドで唯一エントリーしている。
興味深いことに、ここにあるようなワインは入手しやすくなっているし、価格も驚くほど安定しており、他の産地でよく見られるような乱高下は見られない。しかし、ソーヴィニヨン・ブランに関しては、我々のデータベース全体から判断すると、消費者の間で人気に翳りが出てきているのかもしれない。具体的に言うと2020年には5つのソーヴィニヨン・ブランがリストに掲載されたが、昨年は3つに減少している。
ソーヴィニヨン・ブランの売れ行きが落ちているというわけではないが、マールボロのソーヴィニヨン・ブランの生産が過剰になったことで、一部の特別な商品を除いて、消費者はソーヴィニヨン・ブランを探す努力をする必要がなくなった。ソーヴィニヨン・ブランの上昇気流が他のワインにも波及していることは朗報だ。しかし、ニュージーランドのワイン業界を見る限り、ソーヴィニヨン・ブランに依存している生産者はまだ多い。新しい金のなる木を手に入れる時が来たのかもしれない。
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