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ニュージーランドワインニュース
02.11.2022
スコット・ヘンリー方式でブドウ棚の実験

スコット・ヘンリー方式の仕立てをマールボロソーヴィニヨン・ブランに施した2年間の試験成果が話題を集めている。

ネルソンマールボロ工科大学(NMIT)のスチュワート・フィールド博士の報告では、「ウィザー・ヒルズでの過去2年間の試験とブラガート研究所(BRI)、また、NMITのワイナリーでのワイン生産と分析からの研究で、スコット・ヘンリー方式は、バーティカル・シュート・ポジショニングVSP)と比較して複数のメリットがある、という結果となった」とのこと。

「開花時に新梢をワイヤーの下まで伸ばし、キャノピーと果実を露出させるこのシステムは、病気リスクの低減と収量の増加というプラス面を考えると、管理コストが生じても、むしろプラス面が多い。マールボロの肥沃な土壌で、なぜもっと多くの生産者がスコット・ヘンリー方式を使わないのか、私には理解できない」、とフィールド博士の弁。

ウィザー・ヒルズのブドウ栽培者のベン・バリッジ氏は、スコット・ヘンリー方式で仕立てられたブドウの賃貸地区を譲り受け、試験的に栽培を開始した。「ボトリティスが発生した年に、スコット・ヘンリー方式を使う生産者からブドウを購入したこともあり、このシステムがうまく行っていることは熟知していた。谷の向こうで栽培されたブドウを見て、品質の違いに気づいた。既にインフラがあったので、試してみることにした」、とバリッジ氏は代替方式の導入理由を語る。

しかし初年度は霜が降り、ダメージを受けたブドウの木で新しいシステムを管理するのは難しいと言われ、バリッジ氏はブドウ畑を元のVSPに戻した。翌年は労働力供給の問題から、「適切な時期に適切な人材を確保することが使命」となり、11月と12月に枝の誘引を行い、その間に他の作業を本格化させた」という。

その年、代替システム導入に1ヘクタールあたり2,000ドルの追加コストがかかったが、労働力とタイミングに恵まれた翌年は1,000ドルで済んだという。いつもは、芽吹きから2~3週間後に新梢の位置を決め、開花の頃に不要な分を落とすという、少なくともあと2回の作業が必要となる。フィールド博士によると、「剪定の手間はかからず、追加費用は収量の増加や房腐れの少ない高品質な果実で簡単にカバーできる」、ということだ。

試験2年目となる2022年の収穫量はスコット・ヘンリー方式では1ヘクタール当たり6トン近く増加した。熟成度では2つの方式に大差はなかったが、純糖度スコット・ヘンリー方式がわずかに高かった。さらに、果粒の大きさがかなり増加し、房数と果粒数もやや増加が見られ、結果的に収量の増加となった。しかし枝数には差がなかった。

VSPで総酸度は著しく高くなったのは「主にリンゴ酸がかなり高かったため」とはフィールド氏の弁。また、ボトリティスの影響がVSPのブドウにはかなり多くあった。ワインの化学分析では、2年ともVSPのブドウからチオールが著しく多く検出されたが、メトキシピラジンには差が見られなかった。

前述のウィザーヒルズのバーリッジ氏は、「実験からの経験から、11月と12月の散布のタイミングには特に留意した方がいい。それは、キャノピーの誘引前に、よく勝手に枝が突出し出すことがあり、それを覆うことが難しいからだ。しかし、一度キャノピーが落ち着くと、いい仕上がりになる」、とアドバイスする。

デリガットは、2009年にスコット・ヘンリー方式を試験的に導入し、2012年までに全ブドウ園に導入した。ブドウ栽培者のロブ・トロート氏は、「昔、リチャード・スマート博士に『できない、ではなく、どうしてできないことを証明しろ』と言われたことを思い出した。収穫量の増加や病気の減少で効果はすぐに現れた。また、厳しい年に収穫されたブドウが、いつもよりきれいだとよく言われた。雨の多い季節に、強い抵抗力を持っていたが、最初に取り組む時には困難が伴った。しかし、この方法をブドウ園の標準作業とした作業監督者や管理者を賞賛する」、と言う。

スコット・ヘンリー方式仕立ての利点や、デレガットで良好な結果が出ているにもかかわらず、変更への抵抗が存在する。この方式を試したものの、生産者の中にはタイミングを逸してしまったブドウ農家や、早すぎてすべての新芽を棚に取り込めずに結実につながらなかったり、折損が増えたり、遅すぎて蔓がすでに上のワイヤーに付着したりして、この方式を試したが、悪い結果となってしまったところもある」と、フィールズ博士は失敗例もあげている。

ハミルトンにあるルアクラ研究所の元政府のブドウ栽培者、リチャード・スマート博士は、1983年にオレゴンでスコット・ヘンリーに初めて出会った時のことを懐古し、「スコット氏が開発したキャノピー・マネージメントの原則に基づいたシステムに感銘を受けた」と、記している。

ギズボーンホークス・ベイマールボロでの試験で、ニュージーランドの標準的な垂直位置の仕立てを転換し、スコット・ヘンリー方式で利点が実証された。一貫して30%以上高い収量、一般的に早い成熟、房腐れの減少、葉の除去の必要性の減少となった。それが、わずかなコスト増で実現した」、と記している。

スコット・ヘンリー方式はマールボロソーヴィニヨン・ブランや他の品種では非常に成功し、赤の品種の研究結果では品質の向上が見られた。また、開花の約2週間前に新芽の位置決めを下向きにするため、1ヘクタールあたり25~30時間の余分なコストがかかる。マールボロのある大手企業は、10年以上この方法を使い、ホークス・ベイやオーストラリアでも成功させている、という。躊躇せずに、こういった成功例をみならってみてはどうだろうか?」とはスマート博士。

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