NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第18回コラム(Sep/2005)
20年の時を超えて~ストーニーリッジ
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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先日、ワイヘケ島にあるストーニーリッジ・ヴィンヤード(以下ストーニーリッジ)を訪れた。オークランドからフェリーでわずか35分ほどの所にある、人口約8千人、面積92km2のこの小さな島には、24件のヴィンヤードが点在し、世界的にも水準の高いワインを生み出している。ため息の出るような美しい海岸線と起伏に富んだ地形、ゆっくりと流れる時間。魅力あふれるこの島で週末を過ごす観光客や別荘を持つ人は国内外を問わず後を絶たない。

この日、ほぼ満席のストーニーリッジのレストラン「ベランダ・カフェ」では、誰かの誕生日パーティーが行われているようで、とても賑わっていた。日本人スタッフのヤスさんに案内されて、かろうじて空いていたラウンジのソファーに腰を下ろした。オーナーのスティーブン・ホワイト氏(以下スティーブン)は、日本のマーケットや日本の文化に興味があるとのこと。それなら是非ともお話を伺いたいと、お目にかかることにした。

スティーブンが1982年にワイヘケ島にヴィンヤードを作ったのは、ゴールドウォーター一家がこの島に初めてブドウを植えた年(1978年)の4年後のこと。だから、スティーブンもゴールドウォーター氏と並ぶワイヘケ島におけるワイン造りの先駆者の一人だと言える。

スティーブンの話によると、2004年もとても良いヴィンテージで、間もなくリリースされるラローズ2004にわくわくしている様子だった。ラローズとは、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたボルドー・スタイルのフル・ボディー赤ワインの名前で、100ドル以上するニュージーランド最高級ワインのひとつだ。アメリカや日本にラローズのファンやコレクターが多く、リリースする1年も前からケース単位で注文、宅配依頼をするのだとか。

ラローズは、フランス、ボルドーの優れたシャトーのワイン同様、長期熟成型。優れた年のものだと、20年かそれ以上のあいだ瓶熟成が期待できるので、ゆっくりと美味しくなるまで育ててあげたい。ちょうど、その年に生まれた子供のハタチの誕生日お祝いに飲むのも粋ではないか。ちなみにスティーブンによると、今回リリースされたラローズ2004は少なくとも15年、コンディションが良ければ25年は美味しくいただけるとのこと。

この日特別にテイスティングさせてもらったのは、ラローズ2003を含む5つのワイン。ベランダから差し込む太陽の光でグラスの中のワインが輝く。緑あふれる景色をおつまみに美味なワインを堪能した。カシスやスパイス、ベリーなどの凝縮した果実香、果実味あふれるこのワインは、今ももちろん美味しいけれど、5年後くらいにもう一度試して、味の成熟度を比べてみるのも良いかも知れない。

幻のワインと言われた過去最高のヴィンテージ1996年ラローズがベランダカフェのワインリストに載っていたが、一本買い込み、将来の特別な日のためにじっくりとセラーしておくのも、ストーニーリッジならではの楽しみ方だ。

2005年10月掲載
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