NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第142回コラム(May/2014)
新規要チェックワイン発見!ニュージーランドワイン試飲会にて
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
藤山恵水

著者紹介

藤山恵水
Megumi Fujiwara

神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。

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ニュージーランドワイン好きの皆さま、こんにちは。

少し前になりますが、4月にイギリスのウィリアム王子一家がニュージーランドとオーストラリアを公式訪問されましたね。明るく幸せそうな王子一家の様子が微笑ましく、また行きたいなぁっと、ニュージーランド熱が再燃しました。

ところで、ウィリアム王子とキャサリン妃がニュージーランドのワイナリーを訪問されたのをご存知ですか?「キャサリン妃第二子妊娠説はなし?」といったゴシップも書かれていましたが、ニュージーランドワイン好きの私が気になったのは、“どこの生産地のどこのワイナリーを訪問したのか”。セントラル・オタゴのアミスフィールドを訪れ、ピノ・ノワールを楽しまれたようですが、その際に使われたワイングラスはリーデルの<ヴィノム エクストラ・ラージ シリーズ>ピノ・ノワール。写真を見たとき、リーデルのグラスかな?と思いましたが、社内で上記の確認がとれ、思わず顔がにんまりしてしまいました。ワインの持つ個性を引き出すリーデルのグラスで、王子夫妻はセントラル・オタゴの美味しいピノ・ノワールを存分に楽しまれたことでしょう!

ちなみに、このアミスフィールドのピノ・ノワールは、先日5月20日(火)に明治記念館で行われたニュージーランドワイン試飲会でもGRNのブースで出品されていたようです。私は少し遅れて会場入りしたため当日のワインリストを手に入れることができず、残念ながら見逃してしまいましたが、試飲会で飲まれた皆さま、いかがでしたか?

今回の試飲会の業者の部では、「New Zealand Sauvignon Blancの地域性を探る」というテーマでセミナーが開催されたようです。ぜひ参加したかったのですが、仕事で行かれず、資料と残ったワインだけはいただきました。

2013年にニュージーランドが輸出したワインの84%がソーヴィニヨン・ブランで、当然日本に輸入されるニュージーランドワインも、ソーヴィニヨン・ブランが圧倒的に多く、そのなかでもマールボロのソーヴィニヨン・ブランが圧倒的に多いのが現状です。ただし、同じニュージーランドといってもリージョンによっても、また同じリージョンのサブリージョンによってもテロワールも異なり、香りや味わいも異なります。ハーブ香が強かったり、パッションフルーツやグレープフルーツの要素が強かったり、酸やミネラルが豊富だったり…今回のセミナーではその違いを実感することができる良い機会だったのではないかと思います。ニュージーランドの専門学校であるEITの授業でリージョン(地域)ごとの飲み比べもしましたが、今は仕事柄、それぞれのワインにピッタリなワイングラスを考えてみたいな、と思いました。

さて、毎度試飲会ではどこのブースから回ろうか考えてしまうのですが、今回はこの試飲会限定の、ワイパラのグレイ・ストーン&マディ・ウォ―ター(輸入元募集中)のブースにまず行き、ピノ・ノワールを試飲しました。最初に2012年のヴィンテージを試飲しましたが、微発泡かと思うようなフレッシュな赤い果実が口に広がりました。

次に2011年のヴィンテージも試飲しましたが、こちらは2012年に比べてしっかりとした深い味わいでした。そしてこの2011年は『マディ・ウォ―ター ハレス・ブレス ピノ・ノワール』という名前がついていました。「ハレス・ブレスって何だろう?」と思って聞いてみたところ、「Hare=野うさぎ」で“野うさぎの吐く息”と教えてもらいました。カンタベリーの広がる平地でうさぎが飛び跳ねている姿を想像してしまい、楽しい気分に浸れました。

後で調べたことですが、グレイ・ストーンは2004年からスタートした家族経営のワイナリーで、ピノ・ノワールは『Gourmet Traveller』紙のニュージーランドワインの、ピノ・ノワールにおいてTOP12に選ばれ、96ポイントの高得点を獲得したそうです。その他ニュージーランド航空のデザートワイン部門でも、リースリングが最高賞を獲得するなど、伸び盛りのワイナリー。ぜひ、今回の試飲会をきっかけに日本で輸入元がつくことを願います!

今回の試飲会では色々と興味深い発見がありました。

この試飲会は“ワイン”がもちろん主役ではありますが、今回はクラフトビールがいくつか出品されていました。この2,3年の展示会でシードルはちらほら見かけていましたが、今回はビールの勢いを感じました。

今から約4年前、ダニーデンを旅行した際に、ニュージーランドでも特に人気の高いビール、スぺイツ(SPEIGHTS)のビール工場を見学したこともあり、ワインに次いでビールは好きなお酒ですが、現在はネルソンとウエリントン双方が「クラフトビールの都」と言われているほど、ニュージーランドでもクラフトビールの人気が高まっているそうです。

今回の試飲会で見かけたのはヴァイアンドカンパニーが輸入している、モンティースのIPA(インディアン・ペール・エール)と、アプレヴ・トレーディングが輸入しているストークのIPAを含めた4種のビール。IPAは華やかな香りとハーブの苦み、しっかりしたボディが特徴で、通常のペール・エールよりもクセがありますが、現在アメリカをはじめ、ワールドワイドで作られ、人気を得ています。

ご存じない方が多いと思いますが、リーデル・グループに「シュピゲラウ」というブランドがあり、リーデルがブドウ品種ごとにワイングラスの形状にこだわるのと同様に、近年ビアグラスの製造に力を入れています。IPAグラスも昨夏(私が入社した直後)にリリースしましたが、他のチューリップ型のビアグラス等では味わえない本来のIPAの味わいを感じます。各輸入元に話を聞いたところ、IPAは今年に入ってから取扱いをスタートしたばかりとのこと。ニュージーランドのクラフトビールがどのような盛り上がりを見せるのか、これまた楽しみになってきました。

それと、もう一点嬉しい発見がありました。ネルソンのワイナリー、サイフリードで「グリューナー・フェルトリーナー」という白ワインを見つけました。もともとはオーストリアの地ブドウですが、ニュージーランドでも作られていたとは!サイフリードのワインは何度も飲んだことがありますが、今回初めてオーナーのヘルマン・サイフリード氏がオーストリア出身だと知りました。このワイナリーはさすがにドイツ系のリースリングやゲヴェルツ・トラミナーのワインの評価が高いですが、故郷のグリューナー・フェルトリーナーを作り始めたのは最近のことだそうです。

このグリューナー・フェルトリーナーについては、また次回のコラムで詳しく書きたいと思います。実は、この冬から春にかけてオーストリアワインのワイン大使コンテストに応募し、シルバー賞を受賞しました。コンテストを通じて気づいたニュージーランドワインとオーストリアワインの類似性など、改めてご紹介できれば、と思います。

また、ニュージーランドで珍しいワイン品種といえば、ボジョレー・ヌーヴォーで有名なガメイ。数年前のコラムにも書きましたが、テ・マタ・エステートのガメイ・ノワールはやはり逸品です!今回の試飲会では輸入元のポニーが2013年のヴィンテージを出品していましたが、出展者の一押し(?)で、試飲されている皆さんもとても笑顔でワインを楽しんでいらっしゃいました。美味しいワインは人を笑顔にする。ワインの力はすごい!と改めて思いました。

ニュージーランドは、“ニューワールド”のワイン生産国で、自由にワインを造ることができるのが魅力ですが、グリューナー・フェルトリーナーやガメイなど、作り手のチャレンジ精神や思いが込められた新しいワインが作られていくのを、これからも見守っていきたいと思います。次のニュージーランドワイン試飲会は、秋でしょうか?今から楽しみです!!

2014年6月掲載
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