NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
ニュージーランドワインを再発見! ~変わる良さと変わらぬ良さ~
第158回コラム(Sep/2015)
ニュージーランドワインを再発見! ~変わる良さと変わらぬ良さ~
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
藤山恵水

著者紹介

藤山恵水
Megumi Fujiwara

神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。

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Kia Ora(こんにちは)、ニュージーランドワインファンの皆さま。今年は夏が少し短かったですが、季節は変わり、すっかり“ワインの秋”になりましたね。

10月8日(木)には、ヒルトン東京 大和の間でニュージーランドワインの試飲会が開催されましたが、今回はニュージーランド航空、ニュージーランド観光局が共催。会場に設置されていたプレミアムエコノミーのシートに座ったりしているうちに、ニュージーランドに旅したい!と思った方も多いのではないかと思います。かく言う私は、2010年の年末に日本に帰国して以来、一度も行っていないので、“ニュージーランドの今”を知りたい、と思いました。

帰国後、ニュージーランドワインの試飲会に参加し、たびたびレポートさせていただいていますが、私がいた頃とは色々状況も変わっているだろうな、と感じます。この試飲会を通じて私なりに感じた、この10年くらいのニュージーランドワインの変化について書いてみたいと思います。

まずは、MATUA(マツゥア)。今はニュージーランドワインといえば、ソーヴィニヨン・ブランが代表選手ですが、1974年に初めてニュージーランドでソーヴィニヨン・ブランを作ったのがマツゥア。ニュージーランドワインを代表するパイオニアなのです。日本でも10年くらい前に、近くのスーパーで買えた数少ないニュージーランドワインで、たまに買って飲んでいました。MATUAと描かれたラベルは特徴的で、ロゴも色合いも好きだったのですが、最近仕事で偶然ロゴが新しくなっていることを知り、驚きました。大胆なチェンジだな、とは思いましたが、留学中にマツゥアのマーケティングに関する記事を読んだこともあるので、よりニュージーランドらしい、マオリを意識したラベルにすることでブランディングを強化したのだろうな、と納得しました。そもそもマツゥアはマオリ語で「Head of the family」(家族の長)という意味で、新たに「Lands & Legends」というシリーズが加わっていました。ホークス・ベイのシャルドネを試飲しましたが、ストーン・フルーツの香り、程よい酸とミネラル、いぶしを感じる樽熟した複雑味のあるシャルドネでした。もちろん、ソーヴィニヨン・ブランも試飲したのですが、ホークス・ベイのワインにフォーカスするのが、実は今回のコラムの裏テーマでもあります。

さて、ホークス・ベイを代表するワイナリーといえばミッション・エステート。今回は輸入元募集で出展していました。ネイピア(ホークス・ベイにある町のひとつ)にあるEITに通っていた一年、このワイナリーの近所に住んでいました。ワイン・マーケティングの授業の課題に困って、このワイナリーの人に泣きついて教えてもらったこともあり、私にとっては懐かしのワインたちが、今日本では飲めないのかと思ったら、自然とブースに吸い寄せられました。

ミッション・エステートは、1858年創業のニュージーランドでは最古のワイナリーであり、初めて旅した際に購入した『地球の歩き方』にも紹介されていました。スティングなどの有名ミュージシャンのコンサートや、結婚式もできる壮麗なワイナリーで、私もこんなところでワイナリー・ウエディングができたらよいのに……と憧れたものです。

ミッションのようなワイナリーが日本に輸入されていないのも、ホークス・ベイがソーヴィニヨン・ブランのマールボロやピノ・ノワールのセントラル・オタゴに比べると、ネームバリューが落ちるからでしょうか……。

私が勉強していた2010年頃は、栽培面積はマールボロに続く2番目の生産地でしたが、今はどうなっているのでしょう?今回の試飲会の主催者であるニュージーランドワイングローワーズのウェブサイトから統計資料を見たところ、変わらず2位でした。ホークス・ベイは広いリージョンで、多様なテロワールからなるため、ソーヴィニヨン・ブランもシャルドネも、ボルドー・スタイルの赤ワインもシラーも、多様なブドウ品種が栽培されています。サブ・リージョンのギムレット・グラヴェルズはシラーが有名で、今回の試飲会でもトリニティー・ヒルや、バビッチ・ワインズなどのシラーを見かけテイスティングし、どのワインも素晴らしかったです。ミッション・エステートをはじめ、ホークス・ベイのワイナリーにはお世話になったので、日本での認知をあげるような手伝いが少しでもできれば、と思いました。

さて、今回2つの輸入元から出展されていたバビッチは、私が留学前に一番飲んでいたワイナリーでした。よく購入していた明治屋のほか、豊通食料でも違うラインのバビッチのワインが輸入販売をはじめ、以前よりももっとバビッチの多彩なワインが日本で楽しめることを知り、嬉しくなりました。来年で100周年を迎える、ニュージーランドでは歴史のあるワイナリーですが、昔よりもパワーアップしたな、と感じました。

驚いたのは、オーストリアの地場品種、グリューナー・フェルトリーナーも作っていたことです。白い花や青りんごの香りがし、少しスパイシーでミネラル感のあるクリーンな味わいで、試飲ではなくボトルで飲みたい!と思いました。以前、ネルソンのサイフリードのグリューナーを発見し驚きましたが、前述の統計資料で今回確認したところ、2014年からニュージーランドワインで栽培されている白ワインの品種として表れていました。サイフリードはオーストリアからの移民なので、なるほど!と思いましたが、バビッチの場合はルーツとは関係なく、マールボロのサブ・リージョンのワイラウ・ヴァレーの冷涼な気候に適しているのでは、という発想から栽培をスタートしたそうです。

ちなみにバビッチとマツゥアはともにクロアチアからの移民、ミッション・エステートはフランスの宣教師たちが始めました。様々な国から新天地を目指してニュージーランドにたどり着いた人々は、ニュージーランドワインの歴史を作り、未来へと進化し続けています。ワインの新興国であるからこそ、自分の可能性を追求し、信じる道を歩めるのが、ニュージーランドの魅力だと思います(私もニュージーランドでの日々は新しいチャレンジの連続でした)。今回出展されていたキムラセラーズの木村氏など日本人の生産者の活躍も今後ますます楽しみです。

パイオニアである老舗ワイナリーの安定した変わらぬクオリティのワインも、新しく栽培がスタートした品種のワインも、全てひっくるめて、ニュージーランドのワインの魅力にまた触れることができました。次回は是非この目で見たニュージーランドワインの今をレポートしたいと思います。

ちょっと贅沢に、ニュージーランド航空のプレミアムエコノミーシートの席でニュージーランドワインを飲みながら快適な空の旅ができれば最高ですね!

2015年10月掲載
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