NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
2020年、新型コロナウィルス騒動の中で
第215回コラム(Jan/2021)
2020年、新型コロナウィルス騒動の中で
Text: 細田裕二/Yuji Hosoda
細田裕二

著者紹介

細田裕二
Yuji Hosoda

JSA認定“ソムリエ”、SSI認定“国際唎酒師”。2014年から4年間オークランドに居住。シェフとして働くかたわら、北から南まで数々のワイナリーを訪れ、ニュージーランドワインに存分に浸る。帰国後は東京にて複数店舗を展開する飲食企業に勤務。和食とワインのお店を切り盛りするかたわら、社内のワイン講師やワイン関連のプロモーションを任される。 ヨーロッパからの自社輸入ワインのみを扱うお店にて、お客様にニュージーランドワインの魅力をささやく毎日である。

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年初から新型コロナウィルス騒ぎによる混乱が続いた2020年がようやく終わり、新しい年が始まりました。皆様、あけましておめでとうございます。
新年を迎えた今もまだ、この出口の見えない混乱が続いていますが、今回のコラムではニュージーランドやお酒の話なども無理やり織り交ぜつつ(笑)、コロナに始まりコロナで終わった去年一年間を振り返ってみましょう。“ニュージーランド・ワイン”についての話題が少々薄くなることについては、どうぞご勘弁を。

正月気分の冷めやらぬ1月、中国にて新たなウィルスの発生が確認されたというニュースが飛び込んできました。私が勤務する渋谷のワインバー、もともと1月と2月の来客はそれほど多くなく、どちらかというとヒマな時期ですが、このニュースが出始めた影響か、すでに一月から例年に比べ客足が遅いなと感じていました。

ほどなく日本で大きな問題となったのが、乗客に感染者が確認された豪華客船、ダイヤモンド・プリンセス号の横浜港への入港でした。船内での検疫とウィルス除染作業のため、長期間の停泊を余儀なくされる豪華客船については、毎日のようにセンセーショナルな報道が続きましたが、私にとってはまた別の想いがありました。
以前暮らしたオークランドは港町。シーズンになるとひっきりなしに豪華客船が来航し、多い時には一度に3隻の大型客船が停泊していました。シティからも近いハーン・ベイに住んでいたこともあり、たびたびそれらを眺めに足を運んだものです。テレビのニュースに映し出された見覚えのある特徴的な船尾、イルカの様な船首、そして聞き覚えのある“ダイヤモンド・プリンセス”という船名。そう、この船もあの時わたしが眺めていた中の一隻だったのです。
ダイヤモンド・プリンセス号は英国船籍の客船ですが、日本の長崎で建造され、日本周辺のクルーズに就航しているようですが、オークランドにも毎年来ていたようです。特徴的なシェイプと、比較的大きい部類の船体で、しっかり覚えていました。「あの時の船がなぁ」という感じでテレビをみてましたね。

さて、3月になると渋谷といえども来客はほぼなくなり、4月の緊急事態宣言を迎えます。私はその間、グループの別業態にて仕事を続けていましたが、ほとんどの方はステイ・ホームを余儀なくされたわけです。飲みにも行けず、友達にも遠くの家族にも会えずということで、流行りだしたのが“オンライン飲み会”。皆さんやったことありますか?わたしも何度かやったことがあります。味気ないという方もいますが、これはこれで楽しいですよね。難点は、ほぼ一人ずつしか発言できないので、間を取っている間に呑みすぎてしまう、気が付くと居酒屋テンションで、部屋で一人大声でしゃべっている。これ私だけでしょうかね(笑)。

宣言解除後、いわゆるコロナ疲れやGo toキャンペーンなどもあり、壮絶な忙しさを迎えます。その後はまた感染拡大の一途を辿るわけですが、その頃コロナ対策の成功例としてテレビなどに台湾と共に頻繁に出るようになったのが、ニュージーランドでした。国民に訴えかけるジャシンダ・アーダーン首相の姿も度々映し出され、日本国内での認知度は一気に上がったのではないでしょうか。

つい先日SNSでギズボーンに住む友人の投稿をみたところ、なんとその友人と肩を並べて写真に納まるアーダーン首相の姿が!!たまたまチャリティイベントに参加していた首相が、気さくに写真に納まってくれるというのもニュージーランドらしくて良いなと思いますが、私が注目したのは、ふたりともマスクなし!ニュージーランドからの他の投稿も、ほぼ同じ様子。もちろん彼女の行った対策についてはニュージーランド国内では賛否両論あると思われますが、単純に良いなぁと思ってしまいますね。

去年一年間を通して非常に残念だったのが、大勢の人を集めるイベントが軒並み中止になったこと。通常、年間を通して業界向け一般向け問わず、さまざまな試飲会や展示会などがあり、私はそれらを楽しみにしているのですが、秋口に大手インポーターが満を持して主催したひとつ以外は全部キャンセル。ニュージーランドワイングロワーズやニュージーランドワイン倶楽部などが主催する、ニュージーランドワイン試飲・商談会も中止。今年の見通しもいまだたっていないようで、一度にたくさんのニュージーランドワインに触れられるほぼ唯一の機会なだけに、非常に残念です。

代わりによく見かけるのが、先のオンライン飲み会に似たオンライン展示会や、オンラインでワイナリーや酒蔵ツアーをするというもの。事前にテーマとなるワインやお酒などが送られてきて、それらを飲みながらスタッフの説明と共に現地の雰囲気を映像で楽しむというもの。なるほど、私はまだ利用したことはないですが、これはこれで面白いのかもと思うのは先に挙げたオンライン飲み会と一緒。

そこで思いついたのが、海外の映像をYouTubeなどで流しながら、その国のお酒を味わう“勝手にオンラインツアー”。ちょっと暗いでしょうか?まぁでも時節柄、国境はまたげないですからね。海外旅行は当分お預け。その代わりに少しでもその土地の雰囲気を、お酒とともにゆっくり味わうという趣向。そう考えると日本は恵まれてますよ、ニュージーランド含め様々な国のワインが簡単に手に入れられます。ワインだけじゃなく、世界各国のお酒が比較的リーズナブルな価格で売られています。もちろん世界に誇れる日本独自の酒造文化も国内全域にある。旅したい放題、どこでも行けますな。

というわけで、たまたま入ったカクヤス(酒屋)にて思いがけず見つけた「ピーター・イーランズ(Peter Yealands)」のソーヴィニヨン・ブランを傾けながら、映像でオークランド散歩。ニュージーランドではどこのスーパーでも売ってる、日常的に見かけるワインを日本での日常で見つけて、思わず即買いしてきました。
デイリー・ワインといえども、やはりニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは、“それ”とわかるキャラクターがありますな。この品種自体、かなり個性的な特徴を持っているのですが、その中でもニュージーランドのものは、やはり特別です。

でもやはり、またニュージーランド現地に行きたい!!と思っているそばから、この文章を書いている今日、2回目の緊急事態宣言が発出されました。次にニュージーランドの土を踏めるのは、果たしていつになることやら…。

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