NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
The French Cafe
第186回コラム(Jan/2018)
The French Cafe
Text: 月原真弓/Mayumi Tsukihara
月原真弓

著者紹介

月原真弓
Mayumi Tsukihara

愛媛県出身。ワーキングホリデービザでの5か国目に選んだのが、ここニュージーランド。ドイツに始まり、イギリス、フランス、カナダ、各国のファインダイニングやミシュランにて、レストラン・シェフパティシエとして働きながら、今に至る。ヨーロッパでの滞在をきっかけにワインの魅力にのめり込み、日々少しずつ勉強中。甘い物より、ワインが好き。そのお供に、美味しいチーズとバゲットがあれば、文句は言いません。

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オークランドの有名レストランと聞いて真っ先に名前が上がるレストランの一つThe French Cafe(別リンク)。名前を聞いて、『Cafe』や『フランス料理の専門店』を想像される方も多いとは思いますが(私もその1人でした)、実はどちらも違います。イングランド出身のシェフSimon Wrightが、欧州料理をはじめインターナショナルに、そして、彼の経験と想像力とを活かし創り出した料理を提供している、ファイン・ダイニングです。

Cuisine ニュージーランド Good Food Awardaの手がけるThree hatsを取り続け、2016年にはニュージーランド全域での総合優勝してRestaurant of the yearにも輝きました。他にも、書ききれない程に毎年数々の賞を受賞しています。

今回は、私の職場でもあるそのレストラン、The French Cafeについてご紹介したいと思います。

このコラムは、ニュージーランドワインに興味のある方々がご覧になっていると思うので、「ソムリエをしています」と言えたらいいのですが、残念ながら……私はパティシエとして働いているのです。

黒を基調とした店構えで看板も小さく、初めて訪れる方は通り過ぎてしまいそうな程なのですが、中に一歩入ると、とても素敵な雰囲気が漂っています。

外見からは想像できない程に奥に広く、夏にはハーブ類も栽培をしている、緑の茂るさわやかな中庭も広がっています。大人数での予約専用の別室もあり、そこにはまた別のオープンキッチンが備え付けられていて、シェフ自らがお客様の目の前で調理からプレーティングまで行っています。全てを含め、総席数は100席以上にもなります。

パティシエとしての朝1番のお仕事は、こちらの、毎日焼いているSaur dough bread(これとは別に、グルテン・フリー・ブレッドも常備作っています)。一緒に出されるバターもお店で手作りしており、ノーマルとスモーク・フレーヴァーの2種類。

こちらは、今が旬の色とりどりのトマトを何種類もの用法で1皿に詰め込んだサラダ風の前菜。赤くて丸いのはスイカで、お皿全体に少し甘味をプラス。白いクリーム状の物はサワークリームで爽やかさの中にもコクを出し、そして、塩気の効いたトマトのグラニテ。最後に、ガスパチョスープが目の前でお皿にサーブされる形になっています。

今まで色々な国の職場で本場スペイン人が作ってくれるガスパチョをtryしてきましたが、このfrench cafeのが群を抜いて素晴らしく、1番美味しかったです。

前菜の中の一品。ヒラマサとエビをタイ風の味付けにした物。2種類のドレッシングには、ナンプラーとココナッツがそれぞれに使われていて、コリアンダーを中心としたハーブ類とココナッツフレークスで飾った一品。

メインの牛肉料理の一品。低温調理された後に表面に焼き目を付け、ハーブを練り込んだバターを装いオーブンに戻し、温められたバターからいい香りが漂います。サイドには、カラメライズされたオニオンピューレに、細長いのはじゃがいも。そして、茄子をローストしたもの、黒いパウダーは、茄子の皮を炭火で焼き香りを付けた後、乾燥させパウダーにしてあります。

これはオープン当初からのシェフのSignature Dish(シグネチャー・ディッシュ)です。

鴨のコンフィ、Kumara(ニュージーランド特有のさつまいも)のピューレ、季節の野菜類とオレンジの香りを閉じ込めた一品。こちらもお客様の目の前で鴨のソースがサーブされて完成になります。

こちらもSignature dishの一つで、ダークチョコレート&ヘーゼルナッツ&マンダリンのコンビネーション。ふわふわのチョコレートフォームにソルベ(シャーベット)、パリパリのチュイール、マンダリンもフレッシュをシロップ漬けにした物とフリーズドライの2種類を使い、食感豊かに仕上がっています。

サマーレッドベリーを中心とした夏のデザート。イチゴとラズベリー、ニュージーランド伝統のパヴロヴァと言うメレンゲ菓子で食感をプラスし、クレームブリュレ風のクリーム、そして、薔薇の香りをプラスした一品です。

お客様の席側からもキッチンの中が見えるようになっています。

そして、ワイン。

The French Cafeは約500種類のワインを揃えてます。ニュージーランドワインを50%、フランスワインが30%、その他の国々は20%の割合で常時取り扱っています。

その中でもやはりThe French CafeのシェフSimon Wrightの料理に合うワインを探し出す事を1番重視していると、ソムリエのStephanie Guthさんから話しを聞きました。

彼女は去年2017年にニュージーランド Sommelier of the yearにも輝いたのです。

そして、彼女が今注目しているのはOrange wineなんだそう。中でもこの、LIBIAMOは彼女のお勧めだそうです。(なんだかとってもPrettyなラベル、、、!)自社の畑から手摘みしたヴィオニエ、マルサンヌとマスカットをブレンドし200日間発酵させて作っているのだとか。

余談ですが、ニュージーランドに来る前、私はカナダに居ました。そこでもオレンジワインがじわじわ、、と人気を集めているように感じました。Fine diningでも結構取り扱われていたり、ワインショップでもオレンジワインコーナーがあったりしたのを覚えています。

こちらのワインを作っているミルトン・ヴィンヤーズは、彼女のお気に入りのワイナリーだそうで。

「彼は時代の流行りに流されたりとかしないで、誰かにこう言われたからこうするとか、誰もがこういう作り方をしているからそうしてみるとかではなく、信念に従って自分が美味しいと思った物だけを作っているわ。だから私は彼をとても尊敬するの。」と話してくれました。

ミルトン・ヴィンヤーズは1989年にニュージーランドのワイナリーでは初めて、公的オーガニック認証(BioGro)を獲得し、国内のオーガニックワイン先駆者として、ニュージーランド国内はもとより海外からも注目を集めているワイナリー。

ミルトン・ヴィンヤーズのこちらはChenin Blanc 2016

そして、『ニュージーランドワイン』と言えばやはり、ソーヴィニヨン・ブランが一番に上がるとは思いますが、やはり人気ですか?と尋ねた所、「確かに生産量で見ると群を抜いて一番だし、近年は新しいスタイルのソーヴィニヨン・ブランなんかも出て来てるけれども、でも最近はみんな、ソーヴィニヨン・ブランよりもピノ・グリを好む傾向が強くなってきてると思うわ。」と言い、取り出してきてくれたのが、彼女も大好きだと言う、こちらのVALLI vineyard のピノ・グリ。

こちらのワイナリーさんはピノ・ノワールを中心に造っていて多くの賞を受賞しているみたいですが、こちらのピノ・グリも、とてもお勧めだそうです。

なにしろ500種類もあるので、彼女も数本をpick upするのにとても困っていましたが、まだまだ、ここには書ききれない程に魅力的なワインを取り扱っているので、それは皆さんが実際にお越しになられた際のお楽しみ(?)用に、とっておこうかと思います。

そして、是非ソムリエのStephanieさんに、色々とワインの事を伺ってみて下さい。気さくで笑顔の素敵な方です!

2018年2月掲載
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