NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第143回コラム(Jun/2014)
ニュージーランドワインとオーストリアワイン 似て非なるもの
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
藤山恵水

著者紹介

藤山恵水
Megumi Fujiwara

神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。

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ニュージーランドワイン好きの皆様、こんにちは。

前回のニュージーランドワイン試飲会のレポートで予告させていただきましたが、今回はオーストリアワインとの比較も絡めてニュージーランドワインについて、書いてみたいと思います。

「なぜ、オーストリアなのか?」、前回のコラムでも書きましたが、昨年秋からオーストリアワインマーケティング協会が公募していた『オーストリアワイン大使選抜コンテスト2014』に挑戦したことがきっかけです。(このコンテスト挑戦の一部始終は、リーデルのブログに体験記を書いていますので、興味のある方はぜひご覧ください。リンクはページ下部から)

このコンテスト応募で、「世界の中のオーストリアワイン」(世界のワインの中で見た場合、オーストリアワインはどのような特徴をもち、どのような位置づけにあるのかを、自由な視点から述べるもの)について書く課題があり、そのなかで私はオーストリアワインの特徴を述べるなかで、ニュージーランドワインとの対比についても書きました。

課題のリサーチをすすめるなかで、ニュージーランドワインと似ているなぁっと、感じることが多く、それを整理してみようと思ったからです。

まず、類似点としてはオーストリアもニュージーランドと同様に白ワインの生産地として有名です。

主要品種はオーストリアの地ブドウ、グリューナー・ヴェルトリーナー。その他、ローター・ヴェルトリーナー(白)や、ツヴァイゲルト(赤)やブラウフレンキッシュ(赤)等の地ブドウ、リースリング(白)やシャルドネ(白)、ソーヴィニヨン・ブラン(白)、ピノ・ノワール(赤)等の国際品種も作られていますが、生産量としてはグリューナー・フェルトリーナーが 全体の約30%、と群を抜いています。

グリューナー・ヴェルトリーナーは、テロワールや醸造スタイルの違いによって、異なるスタイルのワインになり、オーストリアワインの生産地で幅広く作られていますが、冷涼な年も暖かな年もワールドクラスのワインを生産する能力を持つことが、2013年の「ザ・ニューヨーク・テイスティング2013」で世界的なワイン専門家やジャーナリストによって、国際的“高貴品種”として認めらました。

それに対して、ニュージーランドを代表するワインとは、言うまでもなく、ソーヴィニヨン・ブラン。

ニュージーランドのワイン生産の全体の68%(2013年)にも及びます。1980年代後半から世界的にも高い評価を獲得するようになり、マールボロのワイナリー、クラウディ・ベイのソーヴィニヨン・ブランの成功は、唯一無二の独創性として世界に衝撃を与えた、と言われています。

品種は違えど、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランと同様にフラッグシップなワインがあることは共通していますね。

また、オーストリアもニュージーランドと同様に、家族経営の小規模生産のワイナリーが多いです。残念ながら、オーストリアのワイナリーを訪れたことはありませんが、来日したワイン生産者に会ったことはあります。昨年11月11日のホイリゲ解禁日のイベントでお会いした生産者、アレクサンダー・ツァーヘル氏は、数年前にニュージーランドのワイパラのワイナリー、ペガサスベイで修業したそうです。ペガサスベイは留学中に初めて参加したワイナリーツアーで訪れたこともあり、まだ若いツァーヘル氏が作ったオーストリアワインの新酒に親しみをおぼえました。とても爽やかでフルーティーな味わい、ピュアなテイストを感じました。

“ピュア”といえば、「100% Pure New Zealand」。ニュージーランドワインは「Sustainable Winegrowing New Zealnad」(SWニュージーランド)に基づいた持続可能なワイングローイングの取り組みを行っています。SWニュージーランドは1995年にニュージーランドワイン生産者協会により設立され、SWニュージーランド認証はブドウ栽培からワイン醸造の過程において、環境保護に対する取り組みをガイドラインに規定しています。ワイナリーは、この認証を受けることにより、未来の自然環境を守るとともに高品質なワインの生産を保証していますが、現在94%にあたるブドウ畑がこれに認証されています。

一方、オーストリアワインはオーガニック・ワインの先進国として、有機農法とビオディナミ農法が発展しています。世界で最も有機農法採用率が高いのが同国、16%の農地、そして10%のブドウ畑が有機耕作され、GMO(遺伝子組み換え物)の使用は全面的に禁止されています。

ニュージーランドもオーストリアも、人々の自然や環境保護を尊重する意識が非常に高く、また、健康で安全な生活のために、このように有機栽培や減農薬に関する活動が行われています。

このように共通点の多い、オーストリアワインとニュージーランドワインの生産規模はほぼ同じで、2012年の実績で世界の国別生産量はニュージーランドが世界15位、オーストリアが16位。ともに近年輸出増、高価格帯で成長を遂げています。

このように書いていると、ニュージーランドワインにとって、オーストリアワインは“ライバル”なのではないか!?と思えてしまいますが、私は良きライバルは成長を遂げていくうえでは必要不可欠だと思います。そもそも、残念ながら、両国ともに日本ではまだまだマイナーなワイン生産国です。今回のコンテスト中に市場調査で、ワインショップや飲食店をまわりましたが、ニュージーランドはソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、オーストリアはグリューナー・ヴェルトリーナーかリースリング(新酒の期間中にはホイリゲ)が1本でもお店に置いてあれば上等です。ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは元のブドウが国際品種(フランス原産)で、かつ日本でも大分知られるようになってきたため、オーストリアワインより優勢ですが、それでもフランスやイタリアワインのように、全てのお店で取扱いがあるわけではありません・・・

またオーストリアワインは“オーストラリアワイン”と間違えられることも多く、これも残念な限りです。

前職のワインのインポーター時代に苦労したことですが、マイナーな生産地や地ブドウの美味しさを広めていくことは楽ではありません。

ワインに親しみを持っていない方、ワインを飲みはじめて間もない方は、どうしても「ワイン=難解」なイメージ、そして、その中で自分の知っているものを飲むと安心感を得ます。私も最初はもちろんそういう選び方で、好きだと感じたシャルドネばかり飲んでいました。飲みなれてくると、色々なワインにチャレンジしたくなり、そこでようやくマイナーなワイン(生産国や地ブドウ)が日の目を見ることになります。

つまり、わかりやすい人気のあるワインにニーズが集中し、どうしても売れてしまうのです。そのため、美味しくても個性的なワインは、通好みのお店でしか見かけることができなくなってしまいます。もちろん一般的に人気のあるワインも好きですが、ワインに少しでも興味を持ってくださった方には、いろいろなタイプのワインが作られていることを知ってもらいたいと思っています。

今回のオーストリアワインの「ワイン大使」に応募した理由は、リーデルの本社がオーストリアにあることだったり、色々とありますが、「オーストリアワインの認知度の向上、さらなる普及拡大を目指す」、という公募のコンセプトには大いに共感し、大使になって、オーストリアワインの魅力をワイン業界内外に広く伝えたい、と思いました。大使にはなれませんでしたが、シルバー賞受賞者なりにこれからもオーストリアワインについて勉強を続け、ニュージーランドワインとともに盛り上げていきたいと思います。

そして、また別の機会にぜひニュージーランドワインとオーストリアワインの和食との相性についてご紹介したいと思います。ご興味のある方はぜひ、ニュージーランドワインとオーストリアワインの飲み比べをお楽しみいただけましたら幸いです。

2014年7月掲載
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