NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
マールボロの自然派ワイナリー
第180回コラム(Jul/2017)
マールボロの自然派ワイナリー
Text: 山口真也/Masaya Yamaguchi
山口真也

著者紹介

山口真也
Masaya Yamaguchi

今後10年でワイン生産が最も成長する国はどこかと思い、妻を説得し夫婦でニュージーランドへワーホリに。都会育ちゆえ山も畑もほとんど見たことがなく、初めての大自然での生活に悪戦苦闘しながらも、ワイナリーで働く充実した日々。前職ではワインショップ、レストランの立ち上げ、運営する会社に勤めていたので、作り手側と飲み手側、売り手側と買い手側双方の視点からニュージーランドのワインを学び楽しむことを目標にしています。

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「ここの店はダメだなー、ビオワインがないわー」

先日渋谷のデパ地下にあるワインショップで買いもせずワインをぼーっと眺めていたら、すれ違ったお客さんが連れの方にこんなことを言って店を出て行きました。そのお店はデパートの高級感にそぐうためなのかどうかはよくわかりませんが、値札に必要以上の説明は書いておらず、その分店員がしっかり説明しますよーという雰囲気だった気がします。

その方のおっしゃった「ビオワイン」がビオディナミなのかビオロジック(有機栽培)なのかはたまたリュットリゾネ(減農薬)なのかはわかりませんが、ここ数年日本でも自然派系のワインが流行っているのは街を歩いていても感じます。レストランやビストロだけでなく、自然派専門のワインショップ、自然派ワイン×焼鳥、自然派ワイン×そばなど、その勢いは様々です。

今回は先日訪れたニュージーランド最大のワイン生産地マールボロから、おすすめの自然派系のワイナリーをご紹介したいと思います。あ、もちろんそのデパートに「ビオワイン」はたくさんあったと思いますよ(苦笑)

二度のハリケーンや、続く大雨で非常に難しいヴィンテージとなった2017年のワイヘキ島、前年とは比べ物にならないほど収量が減った収穫を終え、僕たちがホリデーを取り向かったのはマールボロ。クライストチャーチでレンタカーを一週間借り、南島をグルグルまわりながらマールボロに着いたときはブドウの葉が紅葉し時はまさに秋。

走っても、走っても終わりのないブドウ畑。ニュージーランドの他のどの生産地とも全く違うスケール感。確かにニュージーランドワインといえばマールボロ、ニュージーランドワインの85%以上を生産するのがマールボロ、というのを強く実感させられました。そのほとんどがソーヴィニヨン・ブラン・ブランと思うと、なんだか恐れ入りましたという気持ちに。

ちょうどその日は、マールボロマラソンが開催中。なんでもこのマラソンは参加者達が色々なワイナリーのヴィンヤード、場所によってはブドウの木が植わっている間を走って行くという、ワイン生産地のマールボロらしい趣のあるマラソンで、そんな様子を眺めながらセラー・ドアーをはしごしていきました。

最初に訪れたのはHANS HERZOG。以前オークランドのワインショップでここのピノ・ノワールをオススメされて飲んだ際、おお!これは個人的に好きだなー!と思っていたワイナリーです。ここのオーナーのHERZOG氏は、スイスからマールボロへ来てワイン生産を始めた人物で、聞けば誰もが二言めには口を揃えて「かなり変わった人と」言うお方。セラー・ドアーで対応してくれた若い女の子も、HERZOG氏をたたえるような話をちょこちょこ言っていたのが不思議でした。

インターネット上の評価を見るとレストランもワイナリー併設のレストランとしては中々評価も高く、お客さんはあまりいませんでしたがここでランチをすることに。ブドウの木で造った羊のオブジェや、色んな種類のバラを植えたアーチなど非常に良く手入れされた庭があり、少し寒かったのですがテラスでおいしい食事とワインを楽しみました。

肝心のワインですが、ここのワインはbio groの認証を取っており、造りとしてもかなりハンドメイド感を感じられ、優しいけどしっかりした味わいです。マールボロでは色々な品種が栽培されていますが、ここのワイナリーは28品種以上植えているとのこと。ツヴァイゲルトやグリューナー・ヴェルトリーナーなどオーストリア系品種や、ネッピオーロやモンテプルチアーノなどのイタリア系品種なども生産しているのが特徴です。

次に訪れたオススメのワイナリーはFromm。以前にバック・ヴィンテージのLa Strada Pinot Noirを飲む機会があり、ニュージーランドのピノ・ノワールにさらに深くはまっていったワイナリーです。

こちらのワイナリーも完全に有機栽培で、いくつかの畑ではビオディナミを取り入れているとのこと。ピノ・ノワールやシャルドネ、甘口のリースリングまでどれもがバランスのとれた味わいです。特にメインのピノ・ノワールは味が濃すぎず、しかし遠慮がちではなくしっかりと余韻の残る旨味のある印象。

最後にご紹介したいのはSeresin。ハリーポッターⅢを手がけた映画監督が設立したワイナリーだそうです。こちらのワイナリーもBio Gro認証の完全オーガニックでほぼすべてでビオディナミを実践しているとのこと。残念ながら写真に収めることはできませんでしたが、ビオディナミの実践のために、ヴィンヤードで飼っている変わった顔の飛べない鳥が、グループで敷地内をあっちこっちと可愛げにウロウロしていました。

この手作りの味わいはラベルが物語る通り。この1年3ヶ月間ニュージーランドワインを飲み倒してきたなかで、個人的なベストニュージーランド・ソーヴィニヨン・ブラン・ブランです(セミヨンも混ざっているそうですが…)

これら3つのワイナリーに共通しているのはなんだろうかと考えてみると、自然で優しい味わいがそこに感じ取れるような気がします。どのワイナリーも日本に輸出されているそうなので是非探してみて下さいね。

余談ですが、セラー・ドアーではビッグボトルやバック・ヴィンテージのワインが買えることが多いのも楽しみの一つです。街のワインショップでは手に入らないレアなものも。今回僕はHANS HERZOGとFROMMでマグナムを、Seresinではハーフ・ボトルを購入しました。

この大きなボトル、一緒に飲んで下さる方募集中です!(笑)

2017年8月掲載
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