NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第57回コラム(Oct/2007)
ブドウ畑でのお仕事~プルーニング
Text: 加藤しずか/Shizuka Kato
加藤しずか

著者紹介

加藤しずか
Shizuka Kato

秋田県出身。日本では、岩手県雫石スキー場でスキー・インストラクターとして働く。そこでNZを行き来している人たちに出会い、NZを訪ねる。その後、クイーンズタウンの中華レストランでスーパーバイザーとして8年間勤務。2006年の収穫時期にパートタイムでワイン造りを経験し、ワインに興味を持つ。NZでワイン醸造学・栽培学専門学校を卒業後、現在はセントラル・オタゴ内ワイナリーのセラードアに勤務。ゴルフ、キャンピング、トレッキングなどスポーツを通して自然が豊なNZ生活を楽しんでいる。

この著者のコラムを読む

更に表示

初めてニュージーランドのクライストチャーチに降り立ったときの感動は、今でも忘れません。機内放送で、まもなく到着するというアナウンスが入り、どきどきしながら下を覗きこむと、まあ緑の大きなタイルに白い斑点。そうです、緑豊かな自然の中に白い斑点は、羊です。人口よりも羊の数が多いということを、即、実感し、思わず笑みが浮かんでしまった私でした。

9月、ニュージーランド、大好きな春の訪れです。

桜が咲き始め、海では波乗りを楽しむサーファー、陸では子羊が急増中のギズボーン。子羊たちは、この世に生まれてきたことがとてもうれしそうに、後ろ足を蹴り上げ、ジャンプしながらお母さんの後を追いかけています。その風景をみて、春が来たことを畑仕事中にしみじみ感じる、今日このごろです。

今の時期、私の学校では畑仕事が半分、教室での授業が半分。授業は、気候学、ブドウ栽培学、土壌学、マーケティングを勉強し、畑では主にプルーニングをしています。

プルーニングとは、茎や枝、葉っぱなどを切り取ってしまう作業のことをいいます。秋の収穫が終わって葉っぱが落ちた後、春になって芽が出てくる前、冬に行われるのが一般的です。

このプルーニングをすることで、木の大きさを一定に保ち、管理しやすくなります。また、ブドウの質をより理想に近づけたり、そのために大切な芽のつく健康な茎を選んで、支えになるワイヤーに巻きつけてあげたりします。

この作業で、のちのち芽が出て葉っぱが育ちブドウの実がなったとき、ブドウ栽培で一番大切とされる日光を十分に当てるスペースを設定し、空気の流れを良くして病気になるのを防ぎます。病気対策のスプレー浸透性にも大きな影響があります。

プルーニングには、おもに2つの方法があります。

2年経ったケーンを、トランクの近い所で切ってあげ、新しいケーンを昨シーズンの枝から選び、ワイヤーに巻きつけてあげます。他の枝は、トランクに近い2本を来シーズンのために短く残す以外、切ってあげます。これをケーン・プルーニングといいます。

コードン(ケーンが2年以上経ったもの)からでたブドウのなった枝を一定の間隔をあけて、2,3節残して切ります。これをスパー・プルーニングといいます。

プルーニングは、芸術センスを問われる大切な仕事だと思います。収穫のあと、メインイベントが終わり疲れ果て冬眠する前、私たちは少しの間放置されていたブドウの木の前に立ち、どう整えるか、、、きれいに大事に整えられた木は見た目も美しく、春には緑の新たな芽を育て、きっとおいしいブドウを作ってくれるでしょう。

クイーンズタウンで出会ったワインメーカーが、この作業がワインを作る過程で一番好きだと言っていたことが、納得できます。

私は日本で育ち、教育のレベルやしつけの厳しさに感謝すると共に、シンプル&ナチュラル・ニュージーランド・ライフをやめられそうにはありません。

2007年10月掲載
SHARE