NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
プホイ・マタカナ、グルメ街道を行く
第181回コラム(Aug/2017)
プホイ・マタカナ、グルメ街道を行く
Text: 利根川志保/Shiho Tonegawa
利根川志保

著者紹介

利根川志保
Shiho Tonegawa

大阪出身、東京で10年弱働いたのち2014年にオークランドに移住。東京での多忙な日々をお酒を相棒に乗り切り、ワイン輸入業での勤務を通してワインの魅力に触れる。また、ニュージーランドの造り手との触れ合いを通し、飾らない日常にワインの文化が溶け込んでいるニュージーランドに興味を持つ。現在は永住権獲得を目標に調理師学校にも通い資格取得のために日々勉強中。映画鑑賞が唯一の趣味だったが新たにゴルフと釣り、家庭菜園にも挑戦中。

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サマータイムが始まったニュージーランドは、強風、雨、時々ヒョウといった春の嵐ど真ん中の天候です。しかし晴れると上着がいらない程の暖かさで冬の終わりを肌で感じることができる今日この頃です。

久しぶりに天気の良かった休日に、去りゆく冬を満喫すべく、オークランドから約一時間北へ車を走らせ、美味しいものを探してきました。今回はハイウェイ1号線沿いにある村、プホイとブティックワインの名産地、マタカナの美味しいものをご紹介したいと思います。

ニュージーランドは言わずと知れた酪農大国で、バターやチーズがとっても美味しい国です。アメリカを米国、イギリスを英国と表す漢字の愛称で、ニュージーランドは「乳国」と表されるほど乳製品の生産が盛んです。そして今回訪れた場所は「プホイ」という小さな村のチーズ工場で、村の中心部から車で5分程走らせた山道の中に突如現れます。また、チーズショップとカフェも併設されていて、広い緑の芝生に大きな池があり、子供を遊ばせる遊具もあります。休憩がてら訪れた人がのんびりとくつろげる憩いの場所となっています。

こちらのカフェでは地元の食材にこだわった自家製のパイやキッシュ、そしてここで必ず食べてしまうバラエティー豊かなアイスクリームなど、豊富な品揃えに目移りしてしまいます。また、工場直売のチーズ以外にも野菜や果物を煮込んで作られるレリッシュなどもあり、チーズのお供としても楽しめる食材も充実していています。

こちらのプホイのチーズはどのスーパーマーケットでも広く販売されていますが、このショップではかなり安くチーズが購入できます。因みにこの日購入したバジル入りのフェタチーズはスーパーマーケットの3分の1程度の金額で購入できました。そのほか、チーズの切れ端やいろんなチーズの入ったセットなど直売所ならではの商品にも出会えます。私の大好きなブルーチーズの切れ端も購入し、その後芝生でアイスクリームを堪能し、次なる目的地へ出発しました。

プホイよりさらに北へ車を走らせ、次に目指すはMatakana Oysterです。まだまだ旬真っ盛りの生牡蠣を販売している直売所に行ってきました。お店の方曰く、今年の牡蠣はここ何年かで最高の出来だと話していました。また、こちらの牡蠣はいつごろまで旬なのか聞いてみたところ、『12月まではまだまだ芳醇でクリーミーな太った牡蠣を楽しめるけど、1月2月は実が少し痩せてしまう』との事でした。てっきり今回で食べ収めかもと思っていたマタカナのオイスターもまだまだ旬を楽しむことができそうです。

今回購入したのは半分殻の付いた剥き牡蠣1ダースで、金額は20ドルです。スーパーマーケット等で購入するよりはもちろん安く購入でき、とてもフレッシュです。こちらの牡蠣直売所は基本的にテイクアウェイ専門なのですが、店の外に一つだけテーブルが置かれ、レジでレモンも販売しているので、こちらで食べる事もできそうです。また、クレジットカードは使用できないのでご注意です。

ここマタカナはワインの産地でも有名で、よくブティックワイナリーと表現されているのを耳にします。このブティックワイナリーとは品質志向をもつワイナリーで、その多くが小~中規模で手作業にて少量生産することが多いワイナリーを指す言葉の様です。そんなこだわりのワイナリーで訪れてみたかったのが、ヘロンズ・フライト/Heron's Flightです。このワイナリーはイタリアの品種、サンジョベーゼとドルチェットのみを使用したオーガニックワインを造っています。

気取らない佇まいの入り口をくぐって出迎えて下さったのは、醸造家のデイビッド・ホーキンスさん。私たちが訪れたのは平日の午後で他に誰もお客さんがいなかったせいか、気さくにいろいろな話をしてくれました。彼は30年ほど前にアメリカから移住してきて、当時はマタカナにはワイナリーなど1件も存在していなかったそうです。マタカナを選んだ理由はオークランドのシティから1時間以内の立地で、当時幼かった子供を通わせる小学校がマタカナにあったことが主な理由で、ニュージーランドに来てから興味を持ち始めたワインを、自分なりに造ろうと思ったのが出発点との事。そして最初はフランス産品種でワインを造りはじめ、数年でメダルを獲得するほどの成果をあげた後、知り合いから譲り受けたサンジョベーゼの苗を植えてみるとどんどんその品種に魅了され、気が付けば今に至ると、懐かしそうでもあり誇らしげに語ってくれました。テイスティングをしながらデイビッドさんの半生を教えていただき、今日までの彼のワイン造りは偶然か必然か、度重なる幸運が重なり、そこにデイビットさんの努力が融合して成功に結び付いたのだと感じました。

また、テイスティング後に見せて頂いた物は「アンフォラ」と呼ばれる陶器のつぼ。このアンフォラにブドウを入れ発酵させるのですが、アンフォラの上部にあるフラスコのように見える部分で果汁の推移をみて温度を調節されるそうです。デイビットさん曰く、陶器のつぼは「呼吸」はするが果汁が蒸発しないので、非常にワイン造りに適しているとの事でした。この果汁の推移を1日3度は必ず確認し、果汁が18度を保てるようセラーの扉を開閉し温度を調節しているそうです。また、そのセラーの奥にはPassitoと呼ばれる発酵前に果実を乾燥させて作られるイタリアのワインがあり、果実を乾燥する際に使用されるラックなども見学させてもらえます。

私が今まで飲んだことのあるデザートワインと比べ、すっきりとした甘さでみずみずしいのが印象的でした。あまり飲んだことのなかったサンジョベーゼを味わえたのも良かったのですが、今回はなによりデイビットさんとお話ができとても楽しい時間を過ごせて大満足の1日でした。そして、チーズも牡蠣もワインも造り手が見える食材に出会えることの素晴らしさを実感させていただきました。

今回は殻付き牡蠣を購入したので、こちらのレシピをご紹介します。

「オイスター・ロックフェラー」という牡蠣のオーブン料理です。

丸々と太った大ぶりな牡蠣が手に入った際にはぜひお試しあれ。

○材料

牡蠣:  大4つ
ほうれん草:  1束
玉ねぎ:  15グラム
ベーコン:  20グラム(およそ1枚)
にんにく:  1かけ
パセリ:  大指1
パン粉:  大匙2
パルメザンチーズ(粉):  大匙1
オリーブオイル:  大匙3
バター:  大指1

○手順

ほうれん草を食べやすい大きさに切り、玉ねぎ、にんにく、ベーコンはみじん切りにする。
牡蠣は身と殻を離しておく。
フライパンにバターを入れ、中火でバターを焦がさないように溶かし、その後にんにくを炒める。
にんにくの香りが立って来たら玉ねぎとベーコンを投入し焦がさないように炒める。玉ねぎが透明に、またベーコンに火が入れば、火を止める。
容器にパセリ、パン粉、パルメザンチーズとオリーブオイルを加えよく混ぜておく。
牡蠣の貝殻にほうれん草の炒めたものを敷き、牡蠣の身を上に乗せる。さらに牡蠣の身の上にパン粉を混ぜたものを牡蠣の身を覆うように乗せる。
オーブンできつね色になるまで焼けば出来上がり。目安は175℃のオーブンで5分~8分程度です。

下に敷いた、ほうれん草が牡蠣のエキスを吸い込んで牡蠣の魅力を存分に楽しめる一品です。きつね色に焼きあがったパン粉とパルメザンチーズの香りが牡蠣とマッチして美味しいですよ。生ガキや蒸し牡蠣も最高に美味しいですが、ひと手間加えた牡蠣料理も絶品ですので、是非お試し下さい。

2017年9月掲載
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