NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
最近飲んだニュージーランドワインと「Pベイ」
第228回コラム(Mar/2023)
最近飲んだニュージーランドワインと「Pベイ」
Text: 小倉絵美/Emi Ogura
小倉絵美

著者紹介

小倉絵美
Emi Ogura

大学卒業後に就職した会社がワインのインポーターだったという偶然からワインが大好きに。以降ワインの世界にどっぷりとはまること十数年。ワーホリで行ったカナダのワイナリーで1年間働いた際にワイン造りに興味を覚える。ニュージーランドワインは以前から大好きでワイナリー巡りを目的に過去に3度来たこともあり、2014年にリンカーン大学でブドウ栽培・ワイン醸造学を修める。2015年の2月からクライストチャーチ郊外にあるワイナリーでセラー・ハンドとして勤務。趣味はワインを飲むことと美味しいものを食べること。そして旅行。

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ニュージーランドは3月から秋。ブラフ・オイスター(Bluff Oyster)が解禁になったり紅葉を楽しめる良い時期です。日本のニュースを見ているとまだまだコロナ禍なように見受けられますが、こちらでは一部の医療機関を除いてレストランでも入国時や国内でも特に規制もないので私の住むクライストチャーチでも海外からの観光客も多く見受けられ賑わっています。

その中、世界各所で見舞われている異常気象はニュージーランドでも猛威を振るっていて、2023年2月には一番の都市オークランドとワイン産地であるホークス・ベイ地域を豪雨が襲い、多くの家が住居不能になったり収穫間際の果樹園やブドウ畑にも被害を与えています。特にEsk Valley/エスク・ヴァレーと呼ばれるホークス・ベイのワイン地域は壊滅的な被害にあったワイナリーもあり、2023年のホークス・ベイのワインはなかなか難しい年になると予想されています。

私事ですが2022年末に4年近く住んだネルソンから古巣クライストチャーチに戻って来て以来ここ最近まで多忙を極めていましたが、それでも毎週末のワインは継続していました(笑)と言うことで飲んだ中でも印象に残ったものを少しご紹介したいと思います。

Kusuda Riesling/クスダ・リースリング 2017(マーティンボロー
言わずもがな誰もが知っているKusuda Wineのリースリング。2017年ヴィンテージは1ヵ月少し住み込みでお手伝いをさせて頂いた思い出深い年のワインで、自分の誕生日に開けてみました。2017年は本当に厳しい年で収穫間際に大雨が降り楠田さんもどのタイミングで収穫をするのか毎日お天気レーダーと睨めっこをして決めておられました。

もう少し風味が欲しい、でも待つとボトリティスが…とワインメーカーとして色んな難しい決断をすることも多いと思いますが収穫日を決めると言うのはかなり難しい決断なんだなぁと素人ながらに感じた記憶があります。

さて、5年経って飲んだリースリング。これはスクリューキャップで(コルクのリースリングもあります)、スクリューキャップは熟成がゆっくり進むのですがそれでもこのワインは5年経ってもとてもフレッシュ。柑橘系(ライムやレモン)の果実味と酸味、ミネラルのバランスが素晴らしくどうしたらこんな美味しいリースリングが造れるんだろうと毎回楠田さんのワインを飲むたびに感じてしまいます。だから減るペースもいつもにも増して早い(笑)。

 

Shield Albarino/シールド・アルバリーニョ 2021(ネルソン)。
アルバリーニョ好きの私はワイン・ショップで見つけると必ず買ってしまいます。ネルソンに4年も住んでたのに、このワイナリーはこのワインを飲むまで知らなかったのですが、ネルソン出身のワインメーカーと営業担当の友人が手を組んで立ち上げたワイナリーだそうです。

色は濃い目ですがフレッシュで白桃や白い花、ミネラルを良く感じます。ワインを造る際に自然酵母を使うワイナリーも多いのですが白ワインに関してはそのスタイルを目指したいワイナリーも多く、人口酵母を使うところが多いのですが、このワインは元々リースリング用に開発された酵母を使用していてそのフレッシュさやミネラル感を最大限に出せるようにしているそう。

アルバリーニョにしてはしっかり目で、シーフードに合わせるよりは鶏肉とかに合わせたい感じの質感でした。

そして、ここからが本題。日本でもお馴染みノース・カンタベリーワイパラ・ヴァレー地域の名門ワイナリーと言えばPegasus Bay/ペガサス・ベイですが、地元カンタベリーでは「P Bay(ピーベイ)」や「Peg Bay(ペグベイ)」と呼ばれて親しまれています。

ペガサス・ベイはワインももちろんですが、ワイナリーに併設してあるガーデンも有名であり、デリにてオーダーしたものをガーデンにてピクニックがてら楽しむことも出来ます。
クライストチャーチに来たら必ず寄って欲しいワイナリーです。リンカーン大学を卒業した当初働いていたワイナリーで、一緒に働いていたドイツ人の友人が今ペガサス・ベイでワイン造りに携わっており、ペガサス・ベイのセカンドMain Devide/メイン・ディヴァイド・シリーズを引越し祝いに、と1本ずつプレゼントしてくれたので飲んだ感想を。

Main Devide Sauvignon Blanc 2022
マールボロソーヴィニヨン・ブランに比べると香りは優しめ。それでもソーヴィニヨン・ブランらしいハーブ香は健在。ノース・カンタベリーワイパラ・ヴァレーはどちらかと言うとパッションフルーツの果実味と言うよりはグレープフルーツのような柑橘系に少しだけパッションフルーツが見え隠れするようなスタイル。ソーヴィニヨン・ブランのあのはっきりとした果実味が苦手な人にはおススメです!

Main Devide Rose 2022
これはなかなか他にはないロゼだと思います。開けて上がってくる香りが……

「あれ?ロゼっぽくな
い?」実はこのロゼ、ソーヴィニヨン・ブランが使われているのです(笑)!
友人に何故かを聞いてみると「ソーヴィニヨン・ブランを嫌いな人が居ないから」とのこと(笑)ソーヴィニヨン・ブランはニュージーランドでも一番売れているブドウ品種ですが、香りはソーヴィニヨン・ブランを思わせてもまさかロゼに使われるとは思ってもなかったので、美味しくなれば旧世界のように何を必ず使わないといけないとか型にはまったことをしないのがニュージーランドの良いところだなぁと思いました。

Main Devide Riesling 2022
ワイナリーで働いている友人曰くノース・カンタベリーワイパラ・ヴァレーリースリングに向いている土地だそうです。石灰石が多くミネラル分を多く含んむのと、朝晩の寒暖の差が大きくハンギングタイム(ブドウが熟すのにかかる時間)が長いため、酸をしっかりと持ったワインが出来ます。意図的にボトリティスを混ぜているため残糖分は19グラムと辛口と言うよりはオフドライですが酸がしっかりとあるのでバランスはとても良く余韻も長め。レモンキャンディーを食べた時のような甘酸っぱい果実味がくせになります。

Main Devide Pinot Noir 2021
このレベルのピノ・ノワールが20ドル前半(日本円で2000円ほど)で買えるならとてもお得だと思えるピノ・ノワール。しっかりとしたルビー色でアメリカンチェリーのような果実味と深煎りコーヒー豆、サラミのような肉っぽいニュアンスもあります。もう少し寝かさてももちろん良いと思いますがタンニンがそこまで強くないので軽く冷やしてジューシーな若いうちに飲んでも美味しと思います。
Main Divideはペガサス・ベイのレベルが楽しめるお手頃価格で手に入るデイリーワインとしてニュージーランドのスーパーやワインショップ、レストランではかなり広く楽しむことが出来るワインなので、もし日本でも機会があれば是非試してみて下さい。

そして番外編(笑)。
ニュージーランドに住んでいると日本食が恋しくなるもの。サーモンだけはスーパーで買っても基本的に刺身で食べれる事が多いのですが、他の魚に関しては刺身用の魚を手に入れるのは至難の業。よほどの目利きか、自分で漁に出るか……私はどちらも持ち合わせていないので、時折日本人が経営して日本人シェフが料理をする(ここが重要ポイント!)に行ってワインと美味しい日本食を堪能します。

クライストチャーチにも何軒かそう言った日本食レストランはあるのですが、私の一押しはKinji Japanese Restaurant(以前働いていたという事もあり)。街中からは離れているので、客層は和食通なローカルのニュージーランド人か日本人です。

いつもおススメのお刺身の盛り合わせは、欠かせないスターター。クエ、ブルー・コッド(ミナミアオトラギス)、本マグロ、ハマチ、青柳貝、ブラフ・オイスター……。これがニュージーランドで食べられるのは奇跡としか言いようがありません!BYO(ワインの持込)がオッケーなレストランなので今回は3本ほど持ち込みました。

やはり白身魚やホタテなど淡白な魚介に合わせるのは軽めの白。シーフードと言えばアルバリーニョでしょう、と言うことでマールボロのノーティラスのアルバリーニョを。スペインの海岸沿いが原産なためしっかりとしたミネラル分と白い花のほうなフローラルな香り、豊富な酸が特徴でブラフ・オイスターやクエ、ホタテにピッタリ。

そして少し脂の乗ったマグロやハマチにはペガサス・ベイが造る、ノン・ヴィンテージのVergence(ヴァージェンス)。これは色々な年の色々な白ワインをワインメーカーとそのチームがテイスティングを繰り返してブレンドを決めてリリースする珍しい白ワインです。
ゲヴェルツトラミネール、シャルドネ、マスカットなどが使われていて、非常にリッチが質感で飲みごたえもありながら酸はしっかり。ビックリするほどマグロに合いました。

最後はクエの頭のオーブン焼き。これも前述の白ワインが非常に合ったのですが、カベルネ・フラン好きの私にと持って来てくれたボトリングしたてのペガサス・ベイ カベルネ・フラン2021年。リリースするにはあと数年後という事ですが2021年はとても良かったヴィンテージで、カベルネ・フランとマルベックを単一でリリースする予定だそうです。

カベルネ・フランノース・カンタベリーワイパラ・ヴァレーで成功している品種の1つでこのカベルネ・フランはフランスで言うところのロワールのカベルネ・フランに近いかも知れません。ピーマンの様な青い香り(悪い意味ではなく)と赤果実系のジャムのようなしっかりとした果実味、少し塩味を感じるようなサラミの雰囲気も。やはりボトリングしたてで若いですが、熟成させて飲みたいワインでした。

ニュージーランドはBYOが出来るレストランも最近では少なくなってきていて、特にファイン・ダイニングと呼ばれる少し高めのレストランでは、殆どBYOは出来ません。Kinji Japanese Restaurantではノース・カンタベリーワイパラ・ヴァレーのワインをグラスでも提供していますが、今でも BYO が出来る珍しいファインダイニングのレストランなので是非クライストチャーチに立ち寄った際にはノース・カンタベリーワイパラ・ヴァレーのワインをBYOして美味しい日本食と楽しんでみて下さい。

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