NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
収穫~タイミングの見極め方、現場より
NEW! 第233回コラム(May/2024)
収穫~タイミングの見極め方、現場より
Text: ダイヤー理沙/Risa Dyer
ダイヤー理沙

著者紹介

ダイヤー理沙
Risa Dyer

J.S.A. ワインエキスパート。WSET Level 3。現在Diplomaに向けて準備中。 2001年にニュージーランドへ移住。ニュージーランドでは身近なワイン、軽い興味から学び始めたところすっかり楽しくなる。収穫のボランティアから仕事に繋がりカジュアルでヴィンヤード勤務。 ワインとお料理のペアリングを考えたり、ニュージーランドワインを拡めるためにできることを模索したりする日々。 Instagramのアカウントは@luv.vin.nz

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初めまして、ダイヤー理沙と申します。
普段はニュージーランドのクライストチャーチを拠点に、ワインについての発信をしたり、最近は WSET Diplomaに向けて勉強をしたりしています。

ニュージーランドワインをもっと知ってほしい!との想いから、2021 年、lovewinenz(別ウィンドウ)を立ち上げました。ブティックワイナリーの希少ワインを、現地から直接日本のお客様へ届ける企画からスタートしましたが、今は国境も開き自由に行き来できるようになりましたので、ニュージーランドワイン好きの方のリクエストに幅広い分野でお応えできたらいいなと考えています。

さて、こちらニュージーランドでは、2024 年ワイン用ブドウの収穫がほぼ終わったこの頃です。今年はコンディションが良く、ブドウの出来も良いよ~という声も聞こえてきていて、収量こそ少なかったものの、新たなヴィンテージの出来上がりが今から楽しみです。

そんなタイミングですので、今回は収穫について、タイミングの見極め方、方法、そしてお手伝いの現場で感じたことについて書いていきたいと思います。

毎年、収穫のためにスタッフが募集され、世界各国から集まってくるメンバーで、ヴィンテージのクルーが結成されます。ヴィンテージの経験は同じ場所にいる限り 1 年に一度しかできないため、北半球の人にとって、貴重な機会ですね。そうして、大忙しでありながら、やはり 1 年の中でもエキサイティングな期間が始まります。

大事に育ててきたブドウの収穫のタイミングはどのように決めるのでしょうか?

伝統的には開花から約 100 日後と言われてきた収穫。今日では、温暖な気候や、栽培への理解が深まりより良くヴァインを管理できるようになったこと、糖度だけでなくアロマタンニンの成熟にもフォーカスしていることなどから、もう少し長くハングタイムを設けることができるようになりました。

ブドウが成熟するにつれて、糖度が上がり酸が下がっていき、風味が発達し、タンニンが減っていきます。醸造家の造りたいスタイルによって、絶妙なバランスで収穫できるよう、糖度、酸、フレーバーを日々確認しつつ、サンプリングを重ね、収穫の日程を決めていきます。

この時期は普段にも増して天気予報から目が離せません。雨が降ると、果汁が薄まり水っぽくなってしまいますし、実が膨らみすぎて果皮が裂けてしまうことで、腐敗してしまう恐れもあります。そのため、雨が降りそうな兆候があれば、収穫の予定を早めるのか、それともリスクを取っても、天気が回復し、もう一度ブドウが濃縮するのを待つのか、難しい決断を迫られます。醸造家の方々がサクッと決めているように見えるのは、知識や経験に基づいているからなのでしょう。

収穫の方法は、手摘みか機械か?さまざまな要素で決まりますが、それぞれの特徴を見てみましょう。

機械収穫は、圧倒的にスピーディーで、人件費が安い利点がありますが、それだけでなく、機械は夜にも稼働させることができるため、気温の低い時間帯に収穫することができます。そうすることで、フルーツアロマを保持することができるので、特にソーヴィニヨン・ブランのような果実味を生かしたい品種には大きなメリットとなります。

加えて、醸造家が望むピッタリのタイミングで収穫できるという利点もあります。
コロナ禍では顕著だった、季節労働者が足りない、確保できないリスクがなく、ピッカーを待たずに理想のタイミングで収穫できます。

機械での収穫は樹幹を揺らし、果粒だけを収集するため、健康でない果粒、損傷した果粒、虫、などが混入することがありますが、機械収穫の前にグリーン・ハーベストをしてあらかじめ除去しておき、さらにワイナリーでの選果によって補うことができます。

手摘みの場合は、文字通り房を一つずつ剪定鋏で切っていくので、膨大な時間と労働力を要しますが、畑の中で、未熟なぶどうや腐ったぶどうを選別できること、ブドウへのダメージも最小限に抑えることができるのが大きな特徴です。

全房発酵カーボニック・マセレーションのため、また貴腐の影響を受けた房は手摘みが必須になります。

このように、どちらかが優れているというよりも、最終的な目的やワイナリーの規模によって必然的に決まることとなります。

最初に、収穫のお手伝いよろしくねと言われた時は、ぶどうの房を摘む作業を想像していたのですが、任されたのは、ちょっと違った作業でした。実際に摘むのはピッカーさんたちで、その前後をサポートするお仕事、つまり、収穫したブドウを入れる用のバスケットをヴァインの間に置いて準備をし、収穫後は、バスケットを重ねることでブドウが傷つかないように量を調整してならす、そしてバスケットを集めて、できるだけ早くワイナリーへ搬入。

書くと数行ですが、これがなかなかな重労働でした。こうした経験は、ワインの背後にあるものに目を向けるきっかけとなりました。次にワインを飲むときには、そのワインの元となったブドウがどのように造られたのか思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

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