NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
Mt. Baseワイナリーに誘われて Part3
第203回コラム(Sep/2019)
Mt. Baseワイナリーに誘われて Part3
Text: 和田咲子/Sakiko Wada
和田咲子

著者紹介

和田咲子
Sakiko Wada

日本に住んでいた頃からヨーロッパワインは飲んでいたものの、1994年の渡航以来、先ずはニュージーランドワインの安くて美味しい事に魅せられ、その後再度オールドワールドやニューワールドワインに拡大してワインをappreciateしている。ただ消費するだけに終わらない様に必死にwine drinking culture の質を高めようと努力する毎日である。

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皆さん、こんにちは。今月のお話は5月7月掲載分に続いて、いよいよ完結編となります。ワイン友達の一人でマウント・ベースと言うワイナリーを経営しているカースティー(Kirsty)のお誘いでマールボロに週末旅行に行った時の旅行記ですが、今日は3日目の最終日を辿ってみましょう。

先ずは9時にワイナリーが開く時間を狙ってAlan Scottへ向かいました。ここは宿にしているお宅から歩いても行けます。出て少し行くと看板が出ていてとても分かりやすい真っすぐの道を時々小走りで9時少し過ぎには到着しました。他のメンバーは早朝はご免だとの事で一人で歩いていたので、途中でかわいそうに思ったトラックを運転している土地の人が送っていってあげようか、と聞いてくれましたがやっぱり少し怖いので断り、そのままエクササイズがてら歩き途中のブドウ畑を見たりブドウをつまんで糖度をみながら行きました。

なかなか立派な構えでレストランも併設されているテイスティングルームです。以前は Heritage Selection と呼んでいたプレミアムレンジの単一畑のワインシリーズを、1年ほど前にAlan Scott Generations と名前を変え、しかも7人の孫たちがそれぞれのラベルをデザインしたそうです。
ニュージーランドにも家族経営のワイナリーが多いですが、やはりそういうストーリーを聞くとワインの価値が高まりますね。私は今はあまりマールボロのソーヴィニヨン・ブランのファンではないのですが、(味覚や嗜好は移り変わりますねえ)オーク・トリートメントをしたりオン・リースと言ってブドウの澱とジュースを長めに接触させたり撹拌して作られたものは好きなのですが、このシリーズの アラン・スコット Generation Marlborough Sauvignon Blanc 2017 は新旧樽で14カ月熟成させてつくられたそうでなかなか旨味のある美味しいワインでした。

さて、アラン・スコット のほぼ斜め前にあるクラウディ・ベイテイスティング・ルームが10時からしか開きませんのでその時間迄待って、お次はクラウディ・ベイに飛び込みました。このワイナリーはニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランで有名ですが、1985年の創立以来オーナーもワインメーカーも変わっており、かなり商業的に運営されています。

 

テイスティングは3つのワインのタイプに分かれていて、スパークリング・ワイン、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、のどれかを選ばなくてはならず、私は3種類のソーヴィニヨン・ブランが試せるタイプにしたのですが15ドルでした。ニュージーランドのワイナリーでのテイスティングはワイン(数量を限定せずに)を買うと無料になる所も多いのですが、ここは1本買えば5ドル引いてくれるそうです。

まだ朝早めだった事もあり、私一人しかいないので対応してくれた若い女性一人しか話す人がいなかったのですが、テイスティングの感想やワイナリーの歴史では満足のゆく答えが返ってこなかったのが残念でした。このワイナリーでも2002年からスクリューキャップを使い始めているとの事。

ランチの時間まであまり余裕が無くなって来ましたので、私は大急ぎでクラウディ・ベイを出て、次に向かったのはジャクソン・エステート。何故ここへ行きたかったかと言うと、カースティーのアレンジしてくれた宿のオーナーは彼女の友人でもありその昔ジャクソン・エステートを立ち上げた方だったからです。

もちろん、このワイナリーでは当時はオーナーでもありワインの作り手でもあったので、ワイナリーのオーナーが変わった今、どんなワインを作っているのかなあと興味津々でした。15分ほど小走りで駆け込んだジャクソン・エステートにてドライブウェイを進むと、先ず目に入って来たのは建物の横の外のテーブルを囲んで5人位の人がワインを飲みながら歓談している風景でした。

あら、もうこんなにお客さんが来ているんだわ、と安心してテイスティング・ルームのドアに向かうと何と鍵が閉まっていて開かないのです!2度ほど試して駄目だったのでもう一度そのグループの方へ向い、テイスティングをしたいのだけれど、と話しかけると何とその方達はワイナリーのスタッフやオーナーで、今日は開けていないのでミーティング中との事。折角ここまできて引き下がるわけにはゆかず、オークランドから遥々やってきて、もう今日の夕方のフライトで帰るのでどうしてもテイスティングがしたい旨、そしてどれだけワインが好きか等を力説すると、Voila!期待した通り開けてくれて中へ通してくれました。

お相手をしてくれたのは醸造家のマットさん。このワイナリーで最初にブドウの樹が植えられたのは1988年だった事や、各ワインの命名の由来や醸造についても話してくれ、楽しく色々知る事が出来ました。
宿のオーナーはStichburyさんと言うのですが、Stich Sauvignon Blanc 2017と名付けられたワインがあったのも嬉しかったし、このワインはソーヴィニヨン・ブランで何と樹齢30年のブドウ樹からのワインだそうです。
テイスティング用のワインの最後はピノ・ノワールでVintage Widow Pinot Noir 2015というワインでした。樹齢33年でワイルド・ファーメント、20%新樽を使って醸造された後、フレンチ・オークで10~12カ月熟成、などと話を聞いている内に、『実はこれより上のピノがあるんだ。』と更に2本を出してくれて試飲をさせて貰えました。
このVintage Widowはピノ・ノワールで、実はGum EmperorとSomerset Vinyardという異なるワインのブレンドだそうで、それぞれの特徴も語ってくれながらの試飲。1年半は樽で寝かせたパワフルなGum Emperor、そしてフレンチ・オークの香りがエレガントなSomerset Vinyard。ああ、丁度バランスが取れる状態にブレンドしてあるなあ、と納得しながらのテイスティングでした。

11時にはカースティーがお迎えに来てくれる筈でしたが、ちょっと遅れているの~とテキストが入ったので安心して宿に戻り、皆と合流して又2台の車で向かったのはハンス・ヘルツォーク(ここはマールボロへ行かれたら必ず寄ってください。様々なブドウを植えており、とても質の高いワインを作っています)。

ランチはカースティーが予約しておいてくれた ワイラウ・リヴァーへ行く予定だったのですが、ハンスさんや奥さんが出て来てワイナリーのプライベートエリアまで案内して貰ったりして話している内に、『ウチでランチを食べてゆけばいいじゃない!』と言う話になってしまいました。カースティーとしてはどちらも友達なので一旦予約をしておいた ワイラウ・リヴァーを断るわけにもゆかず・・・でもそこは食の強いKiwiたちの事、『じゃあチーズプラターとワインを軽く食べて来よう!』とあっさり決定し、アペリティフと称してのランチの為に ワイラウ・リヴァーへ移動しました。

まあ近いのでそれも問題なく出来てしまう所がいいですね。メニューにあったマールボロで造られたSyrah(やはりホークス・ベイやワイヘキのシラーよりは軽めで酸味も高めでした)を注文してお店にも顔を立て、本番ランチの為に又ハンス・ヘルツォークへ舞い戻ると言う面白い動きに成りました。でもワイナリーの家族や働いている人たちと一緒のランチは話も弾み、マールボロを後にしてオークランドへ戻る最後の数時間を最高の時間にしてくれました。

そんなこんなで、この週末の小旅行は3日目にも5つのワイナリーを訪問出来てとっても内容の濃い時間に成りました。空港では顔の利くカースティーのおかげで3つに分かれたお土産のワインの箱などをPriority(優先荷物)でチェックインして貰え、ホクホクと飛行機に乗り込みました。
この時のワインは、今もセラーに眠っているものもあれば、友人とのパーティーに出したり持参したり、あるいは自作の短編映画のスクリーニングをした友人へマールボロでしか買えなかったスパークリングをお祝いに届けたりしています。
このように帰ってきた後もこの旅行で仕入れたワインは、思い出と共に今のオークランドでの時間に重なっています。

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