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蜂の生命力に驚いたことがありますか?事件は或る日曜日に起こりました。しばらくはいていなかったジーンズに足を入れると、焼けるような激痛。何が起こったかわからず、腫れあがる足を見て度肝を抜いていました。やがて中に潜んでいた足長蜂がヨタヨタと出て来ました。どうも最近蜂とのお付き合いが増えているようです。
先月一時帰国の前に日本の友人に「何か欲しいものは?」と軽く聞くと、3人がマヌカ・ハニー、と言ってきました。よりにもよって重いものなの?と思いやりのない友人たちのために、承諾することに。ニュージーランドのおみやげに蜂蜜系のものが多いことは、意識はしていていましたが、その理由を考えたことも、調べたこともありませんでした。さらには、このところ膝の調子が悪く、理学療法に数ヶ月通っていたのですが、全くらちがあかず、このまま寝たきり老人への道を辿るのかと、諦めかけたときに「蜂の毒」製品が視野の中に飛んできました。関節系の炎症に効き目があるという製品とのこと。そして、極めつけは、ウィリアム王子とめでたく結婚したキャサリン妃が式前のお肌の手入れに蜜毒パックに使っていた、というもの。少なくとも人体実験中の膝には効果が出ている様子です。
大昔、「蜂の一刺し」と言って、政財界の大物の裁判事件に流行った言葉ではありませんが、蜂のパワーに興味が出て来ました。蜂、ハニー、蜂蜜などをキーワードにしてインターネットで調べると、いかにも健康に良さそうなものが沢山見つかりました。ただし、蜂毒や蜂蜜の消費については、乳幼児、妊婦、蜂毒にアレルギーがある方は留意のこと、との注釈がありますので、ご注意の上お使い下さい。
次の蜂関連は、日頃食べ物については全く疎い旦那が何年か前から口にしたBees on Lineというカフェ。これまでも何度か珍しく私にランチをご馳走してくれる気になり、「じゃ、行こう!」と重い腰を持ち上げ行ってはみたのですがその度に「休業」あるいは「貸切」で入れなかった店です。空っ腹をかかえ、ガランとした店内をガラス越しに覗くのはとても惨めでした。今回は、開いていることを確認して突撃。
日曜日のまだ早い時間だったせいか、人影はまばら。オープンエアのデッキ席も魅力的でしたが、まだ寒い昨今、内部の席に陣を落ち着けて、店内を眺めることに。ニュージーランドによく見られる、ミニマムデコレーションの、カフェと言うより、ラボラトリーと言う感じです。ウェイターの男性は、伝道師のごとく清潔感ある感じのよい人でした(白と黒のユニフォームのせいかも)。
ワインの師匠から「このカフェはワインリストが充実しています」と伝授されて来ていたので、ワインリスト見てみると、カー・ファーム・ワイン,ソルジャン・エステートなどと私好みのワインが。いかにせん、ブランチなので、ワインは遠慮することにしました。「働き蜂の朝食」と銘打った、まるで私にぴったりな名前(?)のものを注文してみました。表面に蜂蜜を塗ったベーコンとマッシュルームは、まろやかでまるで、別の素材のものを食べているようでした。ニュージーランドでは舌がとろけるほどのものを食した回数は少ないですが、これは美味しかったです。十分な量の食事だったにもかかわらず、きっと物欲しそうな顔をしていたのでしょう、例の「伝道師」風の男性が「デザートは如何ですか?」とメニューを持ってきてくれてしまいました。甘いのは嫌いだ、と日頃言っている主人も「アイスクリームと3種類のハニーだって」と目ざとく見つけます。もちろん、今度いつ来られるかわからないので、注文。これこそ、舌がとろけてしまいました。
このレストランは2003年にモーリン・マクスウェル女史がオープンしたもので、当時から環境に優しいをキャッチフレーズに地元密着型のカフェとして知られるようになりました。大学では建築と商業デザインを勉強したというモーリンは、若い頃からウエスト・オークランドでワイン造り(マトゥア・ヴァリー・ワインの創始者の一人)やレストラン業(現在休業中のハンティング・ロッジ・レストランのオーナー)に関わったり、得意の料理でコンテストに優勝したことも多々ありました。
その反面、ヘリコプター操縦や狩猟などアウトドアー派の、かなり活発な女性らしいです。地元密着型のビジネスとライフスタイルを持つモーリンは、「おばあちゃんの仕事」と思われがちだった、蜂蜜を国際的なビジネスへのしたのも、彼女の持ち前の開拓者精神と、環境保護を常に心がけてきた彼女だからできたのかもしれません。それまで蜂蜜は、トーストに塗ったり、何かにかけたり、という脇役としての存在だったのですが、それが世界各地から引き合いが来て、ハニーベースの食事を求めて人が来るほどのカフェができるとはきっと誰も思っていなかったでしょう。
カフェにはニュージーランド各地から集まってきた単一花から採集された蜂蜜、ニュージ-ランド特有の抗菌性の優れたマヌカ・ハニーなど、ワイン・テースティングさながら、テースティングも可能です。
小腹も満たされて幸せになっての帰路、途中だからと以前も訪ねたカー・ファーム・ワインに立ち寄ることにしました。どうも亭主が、ジェイソンの新作のレモン・リキュールを購入したかったようです。社交辞令かオーナーのジェイソンは「久しぶり?この前来たのは一年前くらいだっけ?」とドアを開けて、開口一番に言ったのは驚きました。どうやら前回来たときもまだテースティングにやって来る人たちが訪れる前で、私たちの他に誰もいなかったせいでしょう。
この日も、私たちが第一陣でした。「テースティングする?」との言葉に、先ほどワインをパスしていた私はお願いすることに。夏の間は冷たく冷やしたフルーティーな白ワインもいいですが、やはり濃くのあるオーク樽で寝かせたシャルドネは美味でした。「ここに来た人だけにわざわざ足を運んできた人だけが飲めるワインも飲んでみる?」NOとは言えず頂きました。「ブラック・バード」と手書きのラベルが付いていました。500ボトルと言う限定製造のミステリー・ワイン。テースティングに来た人に、何の種類かあててもらうとのこと。私ははずれてしまいました。「答えは公言しない約束だよ。うちまで足を運んでくれた人だけにしか教えないんだ」と言う、ジェイソンにクメウに来るお客さんとの交流を大切にする彼の一面を垣間見た気がしました。
ちなみに、セラー・ドアのある建物は古い家を現在の土地に移動させ、昔の面影を取り戻す改装を自分たちで一年半かけて完成させたものです。セラーとご夫妻の住居となっています。他の部屋は覗けませんでしたが、トイレチェックは是非ともお勧めです。(カメラを持って入らなかったのを後悔しています)。