NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第134回コラム(Sep/2013)
ニュージーランドワイン倶楽部主催 ニュージーランドワイン試飲会に参加して
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
著者紹介
藤山恵水
Megumi Fujiwara
神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。
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今年は夏が長く、短い秋となりそうですが、ワイン・シーズン到来!ということで、私の身辺も忙しくなってきました。この業界に入って早いもので3年目になりますが、毎年この時期はワインイベントが盛りだくさんで、仕事と趣味として楽しみたいワインイベントの両立に苦労します。
それでも、このニュージーランドワイン試飲会は絶対参加したいと思っていたので、参加でき、本当に良かったです。というのも、今年の夏の終わり頃から、ニュージーランド関連のイベントの参加や留学時代の友人との再会が続き、個人的にはニュージーランド熱が再燃していたからです(笑)。
この再燃は、さかのぼると今年の春に転職を考え、そろそろニュージーランドでの勉強や、働いた経験をいかしてニュージーランドワインに関連する仕事をしたい、と思ったことが始まりです!・・・が、まあこれもタイミングというか縁だと思うのですが、転職活動を開始した途端に、何年も前から好きだったワイングラスのメーカーの求人を発見し、「ここで働けたら!」とビビッときて応募したところ、運よく採用が決まり、転職することになりました。ワインとノンアルコールワインのインポーターで働いた2年強、全てが手探りで、がむしゃらに働いて、なんとなく仕事がわかってきて、愛着がわいてきた矢先で辞めるのは勇気がいりました。でも、今後の自分の将来を考えると、新しい世界に踏み出せたのは本当に良かったと思います。入社以降、今までとは似て異なる仕事を経験でき、日々刺激を受けています。そして、他社のワインをライバル視することなく、ワインを純粋に楽しんで飲めるようになったのが何より良いです!
さて、前置きがすっかり長くなってしまいましたが、このような心境で参加できた今回のニュージーランドワイン試飲会は、会場が明治記念館ということで、“和”を感じる、いつもとは一味違う趣で、素敵でした。会場に着いたのは開始20分後くらいでしたが、大盛況!混んでいると試飲のときは混雑していて大変ですが、それでもたくさんの人がいて、盛り上がっているなかで飲むほうがやっぱり楽しいですね。
まずは、リストをざっと眺めて「ハッ」ときた、マン・オ・ウォーのブースへ。私にとってのニュージーランドの故郷は、オークランドであり、ワイヘキ島であり、ネイピアでもあるのですが、そのなかでもワイヘキ島には格別の思い入れがあるので、久々にワイヘキのワインが飲みたくなったのです。
マン・オ・ウォーはワイヘキ島の東部(オークランドからフェリーで入島する場合、かなり奥地です)に位置し、島に滞在していたときはシーズンオフで訪問できなかったワイナリーでしたが、何度も飲んでいたので味に馴染みはありますが、「ドレッドノート」、「アイアンクラッド」というワインの名前の由来となった軍艦のように、しっかりとした力強さを持ちつつも、特にアイアンクラッドはボルドースタイルのカベルネ・ソーヴィニヨンらしい華やかなベリー系の甘さも感じました。ちなみにドレッドノートのブドウはワイヘキ島での生産が注目されているシラー(100%)です。
マン・オ・ウォー以外にもデスティニー・ベイ・ワインズという、新顔(?)のワイヘキ島のワイナリーのワインもあり、試してみました。こちらのワインラベルは流れ星を思わせるようなデザインで黒いボトルとラベルの黒紙に金色の字とデザインがシンプルで映えています。先ほどのマン・オ・ウォーのワインも似たような色調とシンプルさが持ち味で男性的な感じがするのですが、こちらはどちらかというと女性を連想します。ちなみに最近イタリア語の勉強を始めたのですが、イタリア語には男性名詞と女性名詞があり、ワインを表すVINOは男性名詞だそうです。ワインって男の人のイメージなのですね。イタリア人は感覚でものを見れば男女の別がわかるそうで、面白いなぁっと思います。
さて話が脱線しましたが、このデスティニー・ベイ・ワインズのワイン、『デスティニー・ベイ・デスティナイ』と『デスティニー・ベイ・ミスティ』は全く同じボルドー系のブドウ(5種)を使っているのですが、ブドウの混合比率が違っており、それが驚くほど顕著に表れていました。カベルネ・ソーヴィニヨンが39%、メルローが29%、それにカベルネ・フラン、マルベックと続き、プチ・ヴェルドが1%のみのブレンドのデスティナイはベリー系の果実味の甘さが優しく口に入ってき、女性的な柔らかさを感じ、深い余韻が残りました。個人的にはしっかりとしたフルボディの赤ワインのほうが好みですが、この優しい味わいはとても魅力的で、大好きになりました。「デスティナイ」(ラテン語で運命)という言葉どおり、このワインと出会ったのは“運命”かもしれません。今後要注目です。ちなみに、後で調べた知識ですが、フリーラン・ジュース(果汁の上澄み)が大きな割合を占めており、そこからくる柔らかいタンニンがこのワインの特徴で、このワイナリーのシンボルワインとのことです。一方、同じブドウを使っていても、カベルネ・ソーヴィニヨンが60%以上を占めているミスティは、もっと力強い味わいで、カベルネ・ソーヴィニヨンの個性を強く感じました。風邪気味だった私の舌でも十分感じたので、もっと元気なときに飲んだら、もっと面白いかもしれません!
さて次に訪れたブースでは、マーティンボローにあるエスカープメントというワイナリーの個別の畑名を冠した単一畑シリーズのピノ・ノワール(ヴィンテージは全て2011年)の飲み比べにチャレンジしました。最初に飲んだ『パヒ ピノ・ノワール』は口当たりが柔らかくエレガントな味わいで、次に飲んだ『キワ ピノ・ノワール』はパヒよりももっと力強くてスパイシーな味わい、3番目に飲んだ、『ティ・ルファ ピノ・ノワール』もスパイシーさを感じましたが、キワよりはおとなしい印象でした。そして最後に飲んだクッペ ピノ・ノワールは限定のワイナリーのフラッグ・シップワインでもあり、最もバランスのとれた複雑味あふれるワインでした。さらに、スタンダードの『エスカープメント ピノ・ノワール』はフレッシュさが魅力の飲みやすいワインでした。久々にこういった飲み比べができて、面白いと同時にとても勉強になりました。来年はワイン・アドバイザーの試験にチャレンジしたいと思っているので、こういった経験をどんどん試験に向けて積んでいきたいです。
本当はもっと沢山のブースを回り、沢山のワインについて書きたかったのですが、今回は時間と体力不足でした。ご紹介できなかった輸入元、ワイナリーの皆さま、本当に申し訳ございません。
ちなみに余談ですが、今回の試飲会ではオークランド時代のフラットメイトがインポーターとして参加していたので、ブースに寄って試飲させてもらいました。近況を話しながらワイパラ産のワイン等をいただきましたが、こういうかたちで再会できるのは本当に嬉しいことだな、と思いました。
ところで、今回の試飲会でも一部のブースでワインを販売していたのですが、スパイバレーのソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールのハーフボトルを、友人へのプレゼント用に購入しました。このワイナリーのワインは、留学時代に課題で調べたこともあり親しんでいるのですが、最近も某百貨店のワインフェアで購入し、家族に大好評でした。ニュージーランドのソーヴィニヨンらしい特徴があらわれていて良いと思います。この友人とは、5年前オークランドの語学学校で知り合い、先日4年ぶりに大阪で再会した際に、ニュージーランドワインの話になり、「本当に美味しかった~!ワインが好きになった~!」と言っていたので、ぜひ久々に味わってもらいたい、と思いました。日頃は子育てに追われてワインを楽しむ時間もないかもしれませんが、ひと時でもご主人と一緒に“美味しかったニュージーランドワイン”の味と思い出を楽しんでもらえたら幸いです。
毎度のことながら、試飲会と直接関係のない、とりとめのないことを多数書いてしまい恐縮ですが、次回はぜひワインとワイングラスの関係性などについて、メーカー側の生の声をお届けできれば、と思います!