NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
熱く語るオジサン達in ワイヘキ島
第159回コラム(Oct/2015)
熱く語るオジサン達in ワイヘキ島
Text: 細田裕二/Yuji Hosoda
細田裕二

著者紹介

細田裕二
Yuji Hosoda

JSA認定“ソムリエ”、SSI認定“国際唎酒師”。2014年から4年間オークランドに居住。シェフとして働くかたわら、北から南まで数々のワイナリーを訪れ、ニュージーランドワインに存分に浸る。帰国後は東京にて複数店舗を展開する飲食企業に勤務。和食とワインのお店を切り盛りするかたわら、社内のワイン講師やワイン関連のプロモーションを任される。 ヨーロッパからの自社輸入ワインのみを扱うお店にて、お客様にニュージーランドワインの魅力をささやく毎日である。

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皆さんご存知のように、ニュージーランドには全土にわたって魅力的なワイン産地がありますが、私は仕事柄、連続した休みをとることが難しいので、もっぱら居住地オークランド近辺のワイナリーをウロウロしております。その中の産地のひとつがワイヘキ島。ダウンタウンからフェリーに乗り40分ほどで行けるリゾートアイランドです。近年は高級ワイン産地としても有名で、伊豆大島ほどの大きさの島に20以上のワイナリーがあります。おそらくオークランド近辺でワイナリーや産地を探すと、真っ先に出てくるのではないでしょうか。私自身オークランドに初めて来たときに、ワイナリーを求めて訪れた最初の場所でした。最近ではある海外の旅行雑誌が実施した“世界のBest Island”という読者投票で、モルディブなどを退けて4位にランクされています(記事はこちら)。海外のセレブなどもライブ・ツアーなどでニュージーランドに来た際に、骨休めで訪れたりしているようです。

ワイヘキ島、名前がちょっと覚えやすくないですか?なんかハワイのワイキキ・ビーチみたいな。ニュージーランドの先住民族、マオリの言葉とハワイの言葉は同じポリネシアン系なので似ているようです。地名などにも同じような響きの言葉がたくさんあります。意味とつづりは違いますが、同じ“アロハ”という言葉もありますね。

先日ひさしぶりにこの島に行ってきました。もちろん目的はワイナリー訪問です。この島でのワイナリー巡りの手段はいくつかあります。まずはお手軽にワイナリー・ツアーを利用する方法。こちらのウェブサイトでも紹介されているように、日本語OKのツアーもあります。自力でまわる場合は、島内を走るバスを利用するか、フェリー乗り場付近でレンタカーを借りるのが良いでしょう。島内東側にはバス便が無いので、そちらへ行く際にも便利。ただしドライバーさんは呑まないように。体力に自信のある方には、坂の多いこの島でレンタル自転車という方法もあります。フェリー乗り場構内では、ワイナリーの場所が記された地図を入手することができるはずです。

他には“Vineyard Hopper”という、いくつかのワイナリーを巡回しているようなバスサービスもあります。(要予約)

さて今回、私は“歩き”という手段にしました。フェリー乗り場から歩いて一時間圏内の場所にも数件のワイナリーがあります。島内の綺麗な景色や羊を眺めながらのんびり歩くのも良いものです。

最初に訪れたのは“ジュラシック・リッジ”ワイナリー。入り口にはニュージーランドで有名なシルバーファーン・フラッグと一緒になぜかイタリアの国旗が……。セラー・ドアーの方へ足を進めてみると、オーナー夫妻とおぼしき人たちがテラスで食事の用意をしていました。近づいて行ってテイスティングさせてほしいと尋ねると、これからティータイムだからあっちで畑でも見ていてくれと。時まさにオープン直後の11時。日本ではありえないような対応にお国柄を感じずにはいられません。

訪れたのは8月上旬、畑ではこれから始まる新しいシーズンに向けて冬季剪定作業が進行中でした。30分ほど様子を見ながら再度近づいていってみると、ようやくセラー・ドアーに招き入れてくれました。応対していただいたのはオーナーでワインメイカーのランス氏。最初の無愛想な印象とはうって変わって、自分が造るすべてのワインを試飲させてくれ、ワイン造りを長く熱く語っていただきました。そしてユニークなのは品種。イタリア原産のモンテプルチアーノで高評価を得ていたり(ワイヘキ島唯一のモンテプルチアーノ栽培者)、ピノ・グリもあえてイタリア名のピノ・グリージョとしてリリースしています。聞けば奥様がイタリアのカンパーニャ州のご出身で、毎年一度は必ずイタリアに出かけるそうです。入口の国旗の理由はこれだったんですね。

そんなわけでランス氏もかなりのイタリア通。特に奥様の故郷でもある南の方がお好きの様で、前出のモンテプルチアーノ以外にも既に黒ブドウのアリアニコ、白ワイン用のフィアーノの栽培を始めているほか、ネロ・ダヴォラやプリミティーヴォといった南イタリアでポピュラーな品種の栽培にも興味があるようです。最後にはイタリアで最近購入してきたという、イタリアの土着品種がたくさん掲載された本の自慢までされてしまいました。こちらのワインはどれも質感が高く、素晴らしい出来栄えでした。日本でのディストリビューターも探しているとのことで、近い将来こちらのワインが日本で飲める日がくるかもしれませんね。

さて次は先のジュラシックさんとは柵を隔てて隣り合っている“マッドブリック”ワイナリー。小規模家族経営のジュラシックさんと比べると、こちらは比較的規模の大きいワイナリーで、レストランも併設されています。ワイナリー・ツアーのお客さんも結構訪れていて、私自身も2回目の訪問でした。

前回の訪問時は綺麗なお姉さんが応対してくれましたが、今回はボブと名乗るオジサンです。貫禄のある感じだったので肩書きをたずねると、「ワシはただのDrinkerだよ。」と一言。この方がまたいろいろワインを熱く語ってくれました。こちらのテイスティングはお好みで選べる4コース、10~20ドルでどのコースも5種類ほどのワインが飲めるシステムなのですが、この日はボブ氏と話が弾んでしまい、結果的にサービスで他にも色々飲ませていただきました。15歳からワインを飲み始め体で覚えたという氏、頭でっかちの若いやつには負けん!!と豪語しておりました。

最後に耳寄りな情報です。オークランドのダウンタウンからワイヘキ島に渡るフェリーは、FullersとExplore という2つの会社が運航していて、値段はどちらも片道20ドルくらい、往復は36ドルです。

それがなんと、片道1ドルでフェリーチケットを買えてしまうかもしれないサイトがあります(こちら)。

人気が無い時間帯のチケットを安売りしてるんですね。運航会社はExploreです。

私も今回は片道だけ5ドルで購入し、早朝に出かけました。冬場なので賑わいもあまりなく、着いてからは時間をつぶすのが大変でしたが、フェリーから見る朝焼けもなかなかオツなものでしたよ。

皆さんも個性的なキャラクターを探しに、ワイナリーに出かけてみませんか?

2015年11月掲載
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