NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
KUSUDA WINESでの収穫お手伝い
第166回コラム(May/2016)
KUSUDA WINESでの収穫お手伝い
Text: 小倉絵美/Emi Ogura
小倉絵美

著者紹介

小倉絵美
Emi Ogura

大学卒業後に就職した会社がワインのインポーターだったという偶然からワインが大好きに。以降ワインの世界にどっぷりとはまること十数年。ワーホリで行ったカナダのワイナリーで1年間働いた際にワイン造りに興味を覚える。ニュージーランドワインは以前から大好きでワイナリー巡りを目的に過去に3度来たこともあり、2014年にリンカーン大学でブドウ栽培・ワイン醸造学を修める。2015年の2月からクライストチャーチ郊外にあるワイナリーでセラー・ハンドとして勤務。趣味はワインを飲むことと美味しいものを食べること。そして旅行。

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今や知らない人が居ない程、世界で高い評価を集めているKUSUDA WINES。日本に居る頃から大好きでファースト・ヴィンテージの2002年を最初に今や幻のHalf Acreなど、毎ヴィンテージ買ってセラーに大切に保管し続けていました。

日本で輸入会社の営業をやっていた7年程前に一度マーティンボロに行き畑を見せて頂いた際には、そのブドウの健康で生き生きとした状態に驚き「さすが、あのワインが生まれる畑は違うな~」と素人目から見ても感動したことを覚えています。

ニュージーランドに来て以来、有難いことにご縁があって年に2回ほど、短い日程ですが伺う事が出来、色々と勉強させて頂いています。今回は3月末のEaster Holidayの4連休を利用して収穫期のKUSUDA WINESにお邪魔してきました。

3月末と言えばちょうどピノ・ノワールの収穫時期。あのピノ・ノワールになるブドウを収穫出来る……とワクワクしてその日を待っていたのですが、私が行く2日前に少し雨が降り、雨の前日までにとりあえず収穫できるものは収穫し、残りは天気の様子を見ながら、と言う事になり、残念ながら私の滞在中は収穫は出来ませんでした。収穫は無し、と言ってもヴィンテージ真っ只中、やることはたくさんあります。KUSUDA WINESでは毎年収穫と収穫に伴う作業のお手伝いに日本からたくさんのボランティアさんが集まってきます。何年も毎年来られている方もいらっしゃって、そう言った全ての方の力によってあの素晴らしいワインが出来ているんだ、と改めて感動。

私が着いた初日は15人程のボランティアさんと一緒に前日までに収穫したピノ・ノワールの選果作業。傷ついている粒や虫など徹底的に除去し、綺麗な粒だけを残します。房がしっかりしているので中の方に虫が入り込んでいたり、カビが生えているものもしっかりとチェック。かなりの量がコンポストになっていました。大手のワイナリーではここまで手作業で選果をするところはないでしょう。この手間暇があの品質に繋がっているんですね。選果中、偶然にもハート形をしたブドウに遭遇。何か良いことがあるかな~、と思いながら進めます。

選果が終わると次は除梗、マセレーションの工程ですが、ブドウを全てトレーラーに積んで運びます。醸造は楠田さんの友人であるシューベルトのワイナリー施設を共有されています。1カゴづつ除梗機にブドウを入れるのも重労働。重みで自分が除梗機に吸い込まれそうになるので、命がけ(笑)で入れて行きます。その後、野生酵母で発酵が始まって少しした後、培養酵母を入れて発酵を続けて行きます。野生酵母は複雑味を与えてくれるのですが、殆どの野生酵母はアルコールへの耐性が低いため、酵母によっては2%位のアルコールでも死んでしまいます。余談ですが「野生酵母」と大きく表現することが多いですが実際は何十種類もの野生酵母が存在し、一つ一つが異なった発酵速度・パターンで活動するので野生酵母を使った発酵は時間がかかります。また、うまく発酵しない酵母も多いため、安定した発酵を行うために培養酵母を使用しているワイナリーが殆どです。

さて、楠田さんの造るワインはピノ・ノワール、シラー、リースリング。成熟度合いは畑からランダムに数十粒ブドウを取ってきて糖度計と酸度計で数値を測定します。ピノ・ノワールとシラーは順調に育っていましたが、リースリングが数日の雨で貴腐菌に侵されているブドウが多く、もともと一番遅い収穫ですが、糖度もあまり上がっていないのに酸度も低く、様子を見ることに。後から聞いたところによると、すごいスピードで貴腐菌が広がり、KUSUDA WINESの求める質のリースリングを造れないことから、今年(2016年)のリースリングの生産はなし、と決定されたらしいです。少し残念ですが翌年に期待して。。。

そして滞在中、楠田さんの奥様による手料理を頂きました。そこらのレストラン顔負けの美味しい、それもワインに合う料理を振る舞って下さいました。初日の夕食はボランティアの方全員で食卓を囲み、話しも料理もワインも進み、気付くと真夜中。。。ちょっと飲み過ぎかな?と思いつつ飛ばし過ぎた初日、次の日の作業に大きく影響したのは言うまでもありません(笑)

来年はもう少し長期で滞在して収穫もやってみたいと思います!あ~、書いててKUSUDA WINESが飲みたくなってきました。

2016年6月掲載
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