NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
KUSUDA WINESでの収穫お手伝い~怒涛の2017年~
第178回コラム(May/2017)
KUSUDA WINESでの収穫お手伝い~怒涛の2017年~
Text: 小倉絵美/Emi Ogura
小倉絵美

著者紹介

小倉絵美
Emi Ogura

大学卒業後に就職した会社がワインのインポーターだったという偶然からワインが大好きに。以降ワインの世界にどっぷりとはまること十数年。ワーホリで行ったカナダのワイナリーで1年間働いた際にワイン造りに興味を覚える。ニュージーランドワインは以前から大好きでワイナリー巡りを目的に過去に3度来たこともあり、2014年にリンカーン大学でブドウ栽培・ワイン醸造学を修める。2015年の2月からクライストチャーチ郊外にあるワイナリーでセラー・ハンドとして勤務。趣味はワインを飲むことと美味しいものを食べること。そして旅行。

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先日ニュージーランド航空主催のマスター・オブ・ワインとマスターソムリエが選ぶ「ニュージーランド産優良ワイン」(The 60 Finest Wines of 2017 https://finewines.ニュージーランド/)が発表され、2年連続で日本人が造るワインとしてそのピノ・ノワールが選出されたKUSUDA WINES。昨年の収穫お手伝いに続き、今年は約1カ月と言う長期に渡って滞在させて頂き、造っているブドウ品種全ての収穫に携わって来ました。

何日後かには大雨の予報なのでもう摘もう!と言う事になり、日本からのボランティアさん含め総勢20数名での収穫開始。それもちょうど雨の合間を縫って、と言う事で急ピッチでの作業。ボランティアの方は楠田さんのお兄さまが講師を務められるワインスクールの生徒さんや日本のワイナリーの方など。毎年大勢お手伝いに来られています。このような時に本当に有難い戦力です。時間には追われていてもそこはニュージーランド、ティータイムがあって作業の間の幸せタイム。

お茶菓子やランチは楠田さんの奥様と研修に来ていた日本人の方の共同作業で毎回美味しいものをご用意頂きました。

そして雨は容赦なくマーティンボローを襲う予定で…例年なら10日程収穫の遅いリースリングをピノ・ノワールと同時進行して収穫することに!手をあまり掛けていない他のブドウ畑のブドウなら酸が高すぎてスパークリングにしかならないんじゃないか、と言う時期。本来ならあと1週間か10日くらい置いて風味を上げたいところ。でも雨で今までの努力が泡となってしまうのなら、KUSUDA WINEとしてお客さんに喜んでもらえるレベルまで到達しているので収穫しましょう、と。これも雨の合間を縫っての収穫なので次の雨までには全て収穫を終らせないと、と言うことでボランティアさん皆な必死での作業。

収穫終了=全行程終了ではなく、その後赤は除梗してマセレーション工程に、リースリングはフレッシュさを保つために直ぐに圧搾してジュースにしないとカゴに入れたブドウ同士の重みで潰れてそこからカビが発生したりするので、選果作業を皆なで真剣に、そして急ピッチで進めて行きました。

ボランティアの方や楠田家総動員で頑張った結果、およそ10日後にはリースリングもピノ・ノワールも発酵槽に入り、この2種の大きな仕事が終了しました。慌ただしく過ぎて行っただけではなく、連日のようにボランティアさんと一緒に食事や話しを楽しんだり、素晴らしいワインを頂いたり、なんとアワビ採りに行ったり(私は無収穫でしたが…)、マーティンボローのバルーンフェスティバルを見に行ったり、非常に充実した1カ月でした。

余談ですが、アワビはニュージーランドではマオリ語でパウア(Paua)と呼ばれ、比較的簡単に取れます。サイズの規定はあるのですが、1人10個を限度として採取出来ます。ナイフと醤油を持参してその場で踊食いするのが醍醐味です(笑)もちろん、蒸しアワビや焼きアワビも最高ですが。

4月中旬に一旦クライストチャーチに戻ったのですがどうしても気になって10日後にシラーの収穫に戻りました。4月も降水量が多く、シラーも苦戦を強いられている様子でした。楠田さんの中ではロゼに…とも考えられていたようでしたが、収穫前に雨による被害で駄目になったり、未熟な粒を切り落として少しでも成熟が進むように出来る限りのことをされていて、何とかなって欲しいと言う思いを募らせながらの収穫となりました。シラーは1ヘクタールなのですがピノ・ノワールやリースリングの時とは異なり、10人弱での作業。選果をしながら進めて行くのでなかなか進みません。何とか収穫を終え、除梗しタンクに全てのブドウが入り、そのジュースをテイスティングさせてもらったのですが、青臭さは全くなく、クリーンなジュースで楠田さんご本人もこれまでの天候を考えると満足行く結果になりそうだ、と仰っていました。

そして今回は楠田さんのご厚意で研修をしていたもう2人の日本人の方と忙しい収穫作業の暇を見つけてこっそり(?)ワインを造らせて頂きました。それに触れるとかなりな長文になるので割愛させて頂きたいと思いますが、可愛い「我が子」を瓶詰めした時はかなり興奮してしまいました(笑)

3品種全ての収穫を手伝えたわけですが、今年2017年のニュージーランドのヴィンテージはセントラル・オタゴを除いてかなり厳しい年となりました。私の住むカンタベリーもピノ・ノワールを造らずロゼにするワイナリーや、収穫に値しない、とそのまま堆肥にしてしまうワイナリーもありました。今年ほど収穫までの畑での努力、そしてワインメーカーの力量が問われる年は無いかも知れません。その中でKUSUDA WINESのブドウ達がこれだけの冷夏や大雨に左右されながらも収穫が出来、あのKUSUDA WINEになれた、と言うのは日ごろからのブドウに掛ける手間と努力、そして判断力によるものだと実感しました。そんなKUSUDA WINESの今年の収穫に1月もの長い間携われたのは非常に光栄でした。収穫したワインを飲める日が今から楽しみです。

そして、実は楠田さんご自宅の周りにはオリーブの木がたくさん植わってて、毎年自家消費用に、とオリーブオイルを造ってらっしゃいます。6月中旬にワインのボトリングに伺った際にちょうど収穫時期と重なり、ラッキーなことに初めてのオリーブ収穫の体験をさせて頂きました。

今年はブドウ同様に天気に影響され病気やカビにかかった実も多かったらしく、大量収穫だった昨年とは正反対で今年はその3分の1の収穫量だったそうです…これはかなりな痛手!

「何で今頃すっごい快晴でブドウの収穫時期に雨降ったんだろうね~?」と和やかムードで始まった収穫。1本1本の木の下にシートを敷いて、目につくオリーブを全て手でしごいて落として行く。ブドウとは違って実が硬いのでザクザク落として行けて面白い!ある意味ストレス発散にも(笑)高いところはハシゴを使ったりもするのですが、登れたら木に登る、何だか小さい頃に戻ったかのよう。

綺麗な実は黒々としていてブラックカラントのように美味しそう。苦い、と分かっていても食べてみたくなります。恐る恐るかじってみると…「苦い~!」後悔先に立たずです。でも鳥は食べるそうで、病気の無い健康な木には鳥防止ネットが掛けてありました。

木によって種類が違い、何種類かがランダムに植わっていて、それを一緒に絞ってオイルにするそうです。種類ごとに絞るよりも種類が混ざっていた方がより複雑味が出て美味しいオイルになるそうですよ。小さいオリーブ、大きいオリーブ、緑のや黒いの、これほど種類があるとは知りませんでした。オリーブって絞るってどうするんだろう?と思ってたんですが、まずは収穫したオリーブをマッシュ状にして遠心分離機を用いて油と水分を分離させるらしいです。ブドウのように圧搾機とかにかけて抽出するものだと思ってました。

オリーブオイルについては新しいオイル程苦くて青い、と言う本当に基本的なことしか知りませんが、楠田家で造られるオリーブオイルは青々としてて本当に美味しいです。自家消費用だけじゃぁ、もったいないくらい(笑)ワイン同様に、今年のオリーブも楽しみです。何かを栽培してそれから造り上げる、簡単に聞こえますがとっても難しいことで、それを成し遂げた喜びは何物にも代えがたいですね。

2017年6月掲載
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