NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
ニュージーランドのお酒事情アレコレ
第183回コラム(Oct/2017)
ニュージーランドのお酒事情アレコレ
Text: 細田裕二/Yuji Hosoda
細田裕二

著者紹介

細田裕二
Yuji Hosoda

JSA認定“ソムリエ”、SSI認定“国際唎酒師”。2014年から4年間オークランドに居住。シェフとして働くかたわら、北から南まで数々のワイナリーを訪れ、ニュージーランドワインに存分に浸る。帰国後は東京にて複数店舗を展開する飲食企業に勤務。和食とワインのお店を切り盛りするかたわら、社内のワイン講師やワイン関連のプロモーションを任される。 ヨーロッパからの自社輸入ワインのみを扱うお店にて、お客様にニュージーランドワインの魅力をささやく毎日である。

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4年ほど前にニュージーランドに渡って来て以来、この国のワインやお酒を取り巻く環境、そこにおいての日本との違いなど、何かにつけて気が付くことが多々あります。今回のコラムでは、それらを紹介してみましょう。

最初にこの国に来て気が付いたのがリカーショップの多さ。今日の日本ではコンビニでも簡単にお酒が手に入るので難しい比較になりますが、人口比率で言ったら、実感的にこちらの方が多いのではないでしょうか。個人店からチェーン系までたくさんあります。

もちろんこちらではリカーショップ=ほぼワインショップ。扱うお酒はワインがメインになります。その他ニュージーランドではクラフトビール人気もかなり高く、たくさんの銘柄があります。タップから生ビールを専用瓶やペットボトルなどに直接詰めて売っているお店も数多くあります。ジンやウイスキーなどの蒸留酒は税金の関係で日本と比べてかなり高め。日本で1000円くらいで売られているものも、こちらでは3倍くらいで売られています。そういった事情からか、店によっては扱っていなかったりしますね。私はいまだにスーパーで蒸留酒が売られているのを見たことがありません。そのスーパーでのワインの品ぞろえは、当たり前ですが日本のそれの比ではありません。日本も昨今ワインが一般的になってきたにせよ、まだまだですね。さすがここはワインの国、どの店舗もかなりのスペースを割いていて、ワインショップが一軒店内にあるような感じです。

余談ですが、日本のお酒は手に入るか?

一応Yesです。大きいリカーショップに行くと、海外向けに造られた例えばOzekiとか大手の日本酒が、四合瓶程度で1~2種類置いてあったりします。他にこちらではジャパニーズ・レストランも多く、それらの飲食店用に日本の業者が様々な銘柄の日本酒や、いくらかの焼酎を輸入しています。日本の商品を売る日系のお店も数件あり、それらの日本のお酒を手に入れられますが、やはり高いですね。もちろん輸入品ということもあるでしょうが、インポーターさんに聞いたところ、こちらの税金がALC15%を境に高くなるらしく、同じ醸造酒にもかかわらず総じてアルコールが高めの日本酒はワインより高くなってしまうらしいのです。そして残念ながら、日本のワインはこちらでは買えません。

話を戻しましょう。リカーショップやスーパーでの品ぞろえは店にもよりますが、一般的にはニュージーランド産が中心、お隣のオーストラリア産もかなりあり、それ以外の国のモノは少しという感じです。もちろん他国産に強いショップなどもあります。

陳列のされ方はほぼ品種別です。まずスパークリングがあり、白はソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・グリときて、他の白品種はすべてアロマティックスという棚で括られます。赤はピノ・ノワール、メルロ、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨンもしくはボルドー・ブレンドといった感じで分けられます。品種別というのもニューワールド的で面白いですね。わかりやすいし、好みも把握しやすい。

この国に来る前は、実際ソーヴィニヨン・ブラン以外にどんなワインがどのくらい造られているのだろうと思っていたものですが(不勉強でスミマセン)、来てみると実にヴァラエティ豊富。メジャーな国際品種以外、白ではアルネイス、ルーサンヌ、マルサンヌ、グリューナー・フェルトリーナー、シェニン・ブランなどなど。最近ではヴィオニエやアルバリーニョが増えてきている様子。赤はピノ・タージュ、テンプラニーリョ、サンジョヴェーゼ、モンテプルチャーノほか、ワイナリーによって様々な品種にトライしています。出来不出来は抜きにして、単純にこの国で試されたそれらが楽しめるのが面白いですね。半面、日本の甲州のような固有種というものがありません。ワイン用のブドウの樹は19世紀にこの国に持ち込まれましたが、自生していたブドウというものはなかったのでしょうか。

ニュージーランドにはお酒の販売などに関して日本とは違う法律がいくつかあります。まず販売時間。この国では11時以降にお酒を販売してはいけません。

シティにあるリカーショップも遅くとも11時には閉まりますし、11時以降も開いているスーパーでも、お酒のコーナーだけ一足先にクローズされます。レジでも1分の猶予もありません、11時になった時点でアウト。もちろんビールの自動販売機なんていうものはありません。この辺り、コンビニでお酒を売っていて、実質上24時間お酒が買える日本とは大違い。

飲食店ではお店側の責任として、泥酔していると見なされるお客にそれ以上お酒をサーブしてはいけません。

そして年齢、法律ではお酒を飲める年齢は18歳からとなっていますが、面白いことに親権者が許可した場合に限り、18歳以下でも口にすることができます。

販売に関しても18歳以下にお酒を売ってはいけません。もし売ると罰金や販売権の剥奪になります。そして25歳以下の人がお酒を買う場合は身分証明書が必要になります。持っていない場合は店員の判断です。ですので、スーパーなどでワインを買うとき、レジ担当者はいちいち係の人を呼んでお客を確認させます。セルフサービスのレジでも、ワインを買おうとスキャンすると、許可を求める画面になり、店員を呼ばなければなりません。

これらに関して実例を少し。ある日ワインを買おうとよく行くスーパーに出かけると、店は開いているのにお酒のコーナーだけすべて黒い布で覆われています。傍らにはお詫びが掲示されており、2週間ほどお酒の販売を停止すると書いてありました。聞いた話ですが、どうやら売ってはいけない年齢のお客さんにお酒を売ってしまったのが発覚したらしいのです。なんでバレたのかはわかりませんけどね。

もうひとつ、以前職場で仕事後にオーストラリア人の同僚を送りがてらビールを買いにスーパーへ寄りました。時間はギリギリ11時前だったのでセーフ、しかし私は買えましたが彼は買うことが出来ませんでした。店員は彼を25歳以下だと判断したようで、彼はIDの提示を求められしたが、職場にいちいちパスポートとか持ってきていません。ちなみに彼は見ようによっては若くも見えますが既に38歳です。私も説明しましたが、店員がダメと言ったらダメ。さすがに私はIDを求められたことはないので、代わりに買ってあげようと思いましたが、それも許されませんでした。

そして飲む場所。路上・公園・ビーチなど様々な場所で“Alcohol Ban Area”というサインを見かけます。このサインがあったらそこでお酒を飲んではいけません。サインによっては時間が細かく指定されているものもあります。基本的には公に人が集まるほとんどの屋外で飲めないようになっています。

お酒の販売を含む大きなイベントなどでも、お酒を飲んで良いエリアがはっきり明示されています。

このような環境から、この国では花見をしながら酒を飲むとか、夜遅くの仕事の帰り道、コンビニで買ったビールを飲みながら歩くなんて言うことはありえません(笑)。

良いか悪いかわかりませんが、日本ももう少しコントロールした方が良いのではないかと思わされます。

いろいろ書き連ねてみましたが、普段のニュージーランドの生活の中でのお酒にまつわる環境、日本との違いなど、ちょっとでも楽しんでいただけたら幸いです。

2017年11月掲載
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