NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第34回コラム(Nov/2006)
ワインの競技大会 – ワイン・コンペティション
Text: 鈴木一平/Ippei Suzuki
鈴木一平

著者紹介

鈴木一平
Ippei Suzuki

静岡県出身。大阪で主にバーテンダーとして様々な飲食業界でワインに関わったのち、ニュージーランドで栽培・醸造学を履修。卒業後はカリフォルニアのカーネロス、オーストラリアのタスマニア、山形、ホークス・ベイ、フランスのサンセールのワイナリーで経験を積む。現在はワイン・スクールの輸入販売チーム、また講師として、ニュージーランド・ワインの輸入及び普及に関わる。ワイナリー巡りをライフワークとし、訪れたワイナリーの数は世界のべ400以上にのぼる。

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ワインを購入したときにボトルにしばしばついてくる、ゴールドだのブロンズだののシール。時には5つも6つも貼ってあることすらあります。それはおそらく、どこかで開かれたワイン・コンペティションで賞を勝ち取った証に違いありません。

ワイン・コンペティションは歴史あるワイン流通のメッカ、ロンドンをはじめとして世界各国で年間を通して非常にたくさん開かれています。しかしながら、権威のあるものとそうでないものもあり、ワイン後進国とされている国や聞いたことのないような都市で開かれたものは、先入観の問題もありやや下にみられています。

ワイン・コンペティションでは通常項目ごとに分類されており、ある地域のワイン限定であるとか、産地を問わずひとつの品種だけに限られたもの、ヴィンテージ、また同じブドウ品種でもオークの使用・未使用などのスタイルの違いであるとかなどなど、勝負を公正かつエキサイティングにするためスポーツ大会の種目別なり体重別のような感じで分けられています。

このグループ分けは非常に重要で、参加する興味を湧かせ、且つ、受賞して価値のあるワイン・コンペティションになるかならないかは、主催者側の手腕にかかっています。

10月18日から3日間にわたって開かれた、インターナショナル・シャルドネ・チャレンジにスチュワードとして参加する機会を得ました。今年で7回目を数えるこの大会は今回世界10ヶ国522種類もの応募があり、エントリーしたワインは、コルク臭がした場合等の問題があった場合に備えて、4本ずつ用意されましたので、計2000本以上ものワインが舞台裏に並べられました。輸送による味わいの変化を最小限にとどめるため約1ヶ月前に応募は締め切られ、落ち着かせるため全てのワインは倉庫で寝かされました。7つの項目ごとにはまとめられているものの、ワインの順番は公平にコンピューターで完全にランダムに決定され、それを4つのパネル、20から30種類くらいずつ何回かのフライトにわけ、午前・午後に渡り審査が行われました。バランスをとるため2人の国内審査員と海外からの審査員が1人、プラス2人の準審査員が各パネルを担当し、各々のテイスティング終了後、唯一全てのパネルを審査する審査委員長を交えて話し合いをする形で、各項目につきゴールド、シルバー、ブロンズ・メダルのワインが決定されました。

自分はその舞台裏で進行に関わらせていただいたわけですが、少々ドキドキするような場面が多々見受けられました。例えば、審査ではもちろん使用しなかったものの前日テーブルにワインを並べる際に床に落ちてしまったワインがありました。これが当日で、しかも特にスパークリングワインであったなら開栓時に泡が吹きだして味わいも違うものになってしまったでしょう。

このように書くとさもいい加減なワイン・コンペティションだったかのようにとられてしまいそうですが、そんなことはありません。様々な文献から自分の頭に刷り込まれた“完璧な”テイスティング環境と多少の違いがあったというだけで、これだけのエントリー数でかつ1日で行われた審査としては、実績のある大会ということもあり首尾よく進行し、とてもすばらしいものだったと思います。ただ、審査のテイスティングがいかに完璧かつ公正に行われても、それ以外の、またワインの真のポテンシャル以外の部分でも厳密に言うと味わいや評価を左右しかねない要因があり得るということに気づかされたということです。

熟練したスタッフもおらず、お金もかけずにしっかり構成されていないワイン・コンペティションティションの結果は、一体どれほど信頼できるのでしょうか?このワイン・コンペティションではこれでもかというくらい何度も整理番号や試飲する順番を確認して行われましたが、ひどい大会では味わいうんぬんのレベル以下の話で、スタッフの伝達不足により間違ったワインが運ばれることすらあるかもしれません。

どんなに優れたスポーツ選手で世界選手権では優勝できてもオリンピックではまったく実力を発揮できないこともしばしばですし、ホームの甲子園でタイガースと戦うのは全くの別物でしょうし、サッカーの審判のカードの出し方や判定もしばしばまちまちと、勝負の世界では当たり前のことでしょう。会場の雰囲気、選手の怪我や体調、運・不運全てひっくるめてこそのスポーツですし、また、それこそがスポーツをこうも面白くしている要因なのかもしれません。ただ、手塩にかけたワインを送り出したワイナリー・スタッフの心境を考えると、それでは許されない気がします。

さて話を戻して今回メダル獲得したワインはというと…ゴールド19、シルバー69、ブロンズ208でした。ってあれ?とみなさんの多くがその数におどろかされるかもしれません。ゴールドと聞くと金メダル、優勝チーム、などただひとつだと連想されるのではないでしょうか。このメダルの割合はその他のワイン・コンペティションも似たようなもので、今回のゴールド獲得数はやや少ないくらいだということです。それにしてもメダルを獲得するには国内選考を勝ち抜いてさらに世界で一番を証明しなければならないオリンピックと比べると、参加者の5割以上がメダルを取れるのか…と印象が変わる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本人はどうも“限定~”ということに弱い傾向があるような気がしますが、ブロンズ・レベルでしたらあまり購入の際基準にしなくてもよいのではないかと思います。もちろんシールは品質保証ではありますが、やはりいろいろ試されてみなさんご自身の味覚にあったものを選択されるのが一番です。一口含んで飲み干さずに吐き出して高品質だと判断したワインは、食事を通して楽しめる気さくなワインとはやはり、全く性質が違いますから。

インターナショナル・シャルドネ・チャレンジのホーム・ページ(英語)

(メダルを獲得したワインのリストも含まれます)

2006年12月掲載
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