NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第35回コラム(Dec/2006)
ワイン造り~ブドウがワインになるまで~
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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酒の酒たるゆえんは、アルコールを含むことにあります。大自然と、人間の手入れと愛に育まれた果実(ブドウ)が、どんなふうにアルコール飲料(ワイン)に変化してゆくのか、今回はワイン造りの流れを追ってみたいと思います。

手摘みで、又は機械で収穫されたブドウは、ワイナリー(醸造所)に運ばれます。

ヘタを取り除き(除梗、de-stem)、ブドウの皮を破砕します(潰砕、crush)。昔は足踏みで行われていましたが、今は機械で行います。とっても小さなワイナリーでは、今でも足踏みでの潰砕をしているところもあるんですよ。品質の高い赤ワイン造りには、ヘタを除かず、房ごと(whole bunch)、次の作業に移る場合もあります。

果汁の中に皮と種(場合によってはヘタ)が入ったマスト(must)に、酵母が添加され、発酵が行われます。この時、皮と種は軽くて浮いてしまい、果汁はタンクの下部に沈んでしまいます。これでは、皮から色素や渋み、香りの成分を、種から渋みや香りの成分を抽出することができませんので、これらを混ぜる作業が定期的に行われます(一日3~4回)。

マストがワインに変わったら、圧搾機、または篩にかけられ、皮、種(とヘタ)が取り除かれます。さあ、ここで樽の登場です。樽に移されたワインは樽内熟成が行われます(6~24ヶ月)。オリ引き(racking)、ろ過、そして瓶詰めです。早飲みタイプのワインなら2ヶ月後には、瓶熟成型のワインなら、1~3年経ってから発売、店頭に並びます。

収穫後、ワイナリーに運ばれたブドウは、除梗、潰砕を経て、圧搾機にかけられ、果汁が搾り出されます。品質の高い白ワイン造りの場合は、房ごと圧搾機にかけられ、果汁を搾り出す方法が行われます。

こうして果汁だけになったところで、酵母を添加して発酵が行われます。種と皮を一緒に発酵させないのが、赤ワイン醸造と違うところですね。ブドウのフルーティーな香りをとどめたい場合は、ステンレス・タンクのみで発酵が行われますが、シャルドネなどの重みのあるワインを造る場合には、伝統的技法である、樽内発酵を採用します。こうすることで、樽の複雑な香りや味わいが期待できます。果汁がワインになったら、オリ引きし、低温タンクに移されます。ワインを低温にすることで、酒石が沈殿します。こうすることで、瓶詰め後のワイン内に白い浮遊物(酒石酸の結晶)の発生を防ぐことができます。フィルターにかけられ、新酒となります。

ニュージーランドのほとんどの白ワインは、ステンレス・タンク内で発酵が行われ、瓶詰めされたワインは、早いもので1週間後(早すぎる!)には販売されますが、一般的には、2~3ヶ月瓶内で落ち着かせてからお店の棚に並びます。

ワイン醸造を簡単に説明しましたが、この基本作業に様々な技法が加わったり、代替されたりするので、ワインの造り方は、たった一つではありません。技法やタイミング、酵母の種類や樽の種類などを変えることで、同じブドウからまったく異なるワインが生まれます。いや~、ワインって、本当に奥が深いですね。

2006年12月掲載
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