NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第81回コラム(Jul/2009)
実はおいしいところだらけの早飲みタイプワイン
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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皆さんは「ワインは古ければ古いほど良い」と思っていませんか。ワインをあまり飲まない方には、そう誤解されているようで、5年くらい前に頂いたボジョレー・ヌーヴォーを食品庫に寝かせていると言う、お客さんに会ったことがあります(ボジョレー・ヌーヴォーは普通、発売からできるだけ早く飲んだほうが美味しくいただけます)。これは極端な話だとしても、ヴィンテージもののワインは数万、数十万円するとか、長年辛抱強く熟成させると、素晴らしいワインになるとか、「熟成させる」ことがワインにとってとても重要な要素であることは、誰もが知る事実になっていることは確かです。が、ボジョレーのような早飲みタイプのワインもあれば、熟成方のワインもあるので、古ければ良いと言うものではないことも本当なのです。

ある聞き取り調査によると、「購入したワインはいつ飲みますか」という質問に対して、購入後24時間以内と答えた人が95%を越えたそうです。つまり、9割以上のワイン消費者にとって、ワインとは寝かせてから飲むものではなく、すぐに消費するものなのです。そこで私たち消費者が選ぶのが、早飲みタイプのワインということになります。ニュージーランドは実は、早飲みタイプのワイン造りに長けているのです。例えば、ソーヴィニヨン・ブランは、収穫月から3~6ヶ月くらい経つと新発売の日を迎え、その日から美味しくいただけます。そして、ピノ・ノワールに関しても、オールド・ワールドのピノ・ノワールに比べて熟成速度が速いのが特徴で、購入したときにはもうすでに飲み頃と言うピノ・ノワールがほとんどです。辛抱強くない私にとって、待つ必要がないというのは魅力的です。逆に言うと、20年、30年寝かせるワインを探している場合は、ニュージーランドのワインは不向き。国自体が若いニュージーランドは、ワインの歴史もブドウの樹齢も若いからです(例外のワイナリーとワインもありますが)。

気になる値段と品質ですが、一般的に、熟成型のワインは早飲みタイプのワインに比べて高価なものが多いです。畑1ヘクタール当たりの収穫量が少ない、高価な樫の樽で長い期間熟成させている、長年の瓶熟成に耐えうるよう、高品質の瓶や長い高級コルクを使用しているなどなど、様々な理由が背景にあるわけです。そして、早飲みタイプのワインは、樽熟成の必要がない(果実味を生かしたワインが多い)などの理由で、比較的安価に入手しやすいものが多いです。ただ、安いからと言って、早飲みタイプのワインが低級なブドウを使っていると言っているのではありません。むしろ、ニュージーランドのワインは特に、小規模ワイナリーが畑でも醸造所でも丁寧に手作りしていることが多く、各国のワインコンペでその品質はお墨付き。コストパフォーマンスの良いワインをたくさん生み出している国として注目を浴びるほどです。

ですから、普段気軽に飲むワインとして、リーズナブルな値段の早飲みタイプのワインを選ぶことは、理にかなっていると言って良いでしょう。もっと言うと、贈り物としても早飲みタイプのワインが適していることもあるのです。「数年育ててから飲んでね」と言って、高価な熟成タイプのワインを贈ることも粋ですが、すぐに飲める早飲みタイプのワインを贈った方が、もらった方としても貯蔵環境を心配することがないので、喜ばれるのではないでしょうか。そんなときに、安かろう悪かろうのはずれワインを引いてしまうよりは、「今すぐ飲める、美味しく飲める」「安くてうまい」と定評のあるニュージーランドのワインを手にとってみてはいかがでしょうか。

2009年7月掲載
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