NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第16回コラム(Jul/2005)
NZでおなじみのブドウ品種・その4
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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ワインショップで働いていると、国際色豊かなお客さんとワインの話をする機会に恵まれる。お客さんと話している中で思うのは、ニュージーランドは白ワインしか造っていないと思っている人や、ニュージーランドの赤ワインは美味しくないと思いこんでいる人などが少なくない。

輸出されているニュージーランドワインのほとんどが、白ワイン、特にソーヴィニヨン・ブランなのだから、国外の人にそう思われても仕方がないのかもしれない。

悲しいかな、キウイ(ニュージーランド人)の中にも、「白はニュージーランドワイン、赤は豪州ワイン」と決めてかかっている人もいるほど。確かに豪州の赤ワインは、特にシラーズで有名だし、ニュージーランドにも日本にも、もっと言うと世界的にも、豪州の赤ワインはたくさん輸出されている。でもだからと言って、ニュージーランドの赤ワインが劣っているとは言えないと思う。

以前も紹介したように、ニュージーランドでも少量ではあるが質の高い赤ワインを造っている。今回は、赤ワイン用品種としてニュージーランドでは2番目に多く栽培され、ワイン全生産量としては4位を誇る品種、メルローに注目してお話したいと思う。

一般的にメルローは、ミディアム・ボディからフル・ボディの辛口赤ワインとなる品種で、熟成したプラム、ラズベリーなどの果実の香り、時にはチョコレートやスパイスの風味を持つワインに仕上がることもある。カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランなどとブレンドされてボルドー・スタイルのワインになるのが伝統的だが、メルローだけで造られるヴァラエタル・ワインも増えてきている。

フランスはボルドー原産のメルロー。ニュージーランドでは、その生産量の70%がホークス・ベイに集中している。1990年代半ばまで、生産者も消費者も、カベルネ・ソーヴィニヨン(以下、カベルネ)への執着が強く、メルローはカベルネの渋みを和らげる脇役としてブレンドされるのが常だった。近年になって、メルローのみで造られるヴァラエタル・ワイン、そしてメルローを主体としたブレンドワインが一般的となり、益々市場に並ぶようになっている。というのも、メルローはカベルネと比べると、比較的涼しい気候の下でも熟すことができ、低い温度を保ちがちな粘土質の土壌にもよく順応するため、ニュージーランドに適している品種だからだ。また、渋みがソフトで滑らかなテクスチャーを持つワインになりやすいため、ヴァラエタル・ワインにも適している品種であるということができる。

さて、南半球には、ニュージーランド、豪州、南アの三ヶ国が参加して優れたワインを選び出す「トライ・ネーションズ・ワイン・チャレンジ」というワインのコンペティションがあるが、2003年11月に行われたこのコンペで最優秀メルローとしてトロフィーを受賞したのは、豪州のでも南アのでもなく、ニュージーランド産の優れたワイン、ヴィラマリアのリザーヴ・ホークス・ベイ・メルロー2001と、マタリキのリザーヴ・ホークス・ベイ・メルロー2000だった。ちなみに、メルロー種のブドウ畑の面積は、各国、豪州:6380ヘクタール、南ア:3750ヘクタール、ニュージーランド:1270ヘクタールとなっている。

ニュージーランドのメルローは、今後もますます目が話せない品種である。

2005年8月掲載
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