NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第8回コラム(Dec/2004)
クリスマスとワイン
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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11月の上旬、私はワクワクした気分で、ワインショップのショーウィンドーにクリスマス・ツリーの飾り付けをした。シティーの中心部にあるビルの壁に毎年飾られる、巨大なサンタクロースもお目見えし、街はクリスマスを心待ちにする雰囲気に包まれている。先日、私の大好きな常連さんのひとりで、ニュージーランドに15年お住まいの日本人女性、Aさんが4日連続でいらっしゃり、クリスマス用のラッピングで包んだワインを、合計8本購入された。最終日には、「ワインを贈る人リスト」の最後の名前にチェックを入れ、「年末はいつもバタバタしちゃうのよ。でも、今年は早めに始めたの。これで年末の大仕事も終わりだわ。」と、笑顔で話してくれた。こんな風に、ニュージーランドではお歳暮の代わりにクリスマス・プレゼントを、年賀状の代わりにクリスマス・カードを贈り合う。日本もニュージーランドも年末はみな、大忙しなのである。

クリスマス・プレゼントとして、キウイがよく利用するもののひとつがワイン。私たちのショップでは、クリスマスを目前に、ワイン、特にスパークリングワインの注文が毎日ひっきりなしだ。「シャンパン」として有名なスパークリングワインだが、実はこのシャンパン、フランスのシャンパーニュ地方で収穫された特定の3品種のブドウだけを用い、瓶内で二次発酵をさせるなどの、伝統的な手法で造られたスパークリングワインだけを「シャンパン」と呼ぶことができる。ニュージーランドで造られているそれは、スパークリングワイン、またはバブリー(Bubbly)と呼ばれている。そのほとんどが、シャンパンと同じ品種のブドウを用い、同じ手法で醸造されている。その上、シャンパーニュ地方のシャンパン醸造家たちがニュージーランドの気候と土壌の可能性を見込み、移り住んで同様の栽培法、醸造法でバブリーを造っている人も多いため、ニュージーランドのバブリーの中にも、シャンパンに負けないくらい美味しく、高品質のものがいくつもあるのだ。さてこのバブリー、開栓の際、コルクが飛ばないかドキドキ、ワクワクするし、「ポンッ」という音はとても爽快だ。しかし、このキノコ型をしたコルクも、実は、コルク汚染を引き起こすことがあるのだ。バブリーのコルクは、2つのパーツが接着されて作られていて、長期熟成型のバブリーの場合は特に、この接着剤がジワジワと染み出て、ワインを汚染してしまう。では、どう対処するのか?スパークリングワインにステルビン(スクリューキャップ)を使うのだろうか?実はもう既に、代替品がオーストラリアで使われている;クラウン・キャップ(王冠)だ。ビール瓶の栓に用いられている、あのキャップをだ。バブリーを醸造する過程でも用いられるこのキャップは、錆びる心配もなく、安全でとても信頼できるキャップだ。が、しかし、バブリーを栓抜きで「シュポッ」と開けるのは、あまりにも興ざめではないか。とは言うものの、近い将来、「バブリーにクラウン・キャップはつきもの」という日が訪れるかもしれない。ワインにステルビンが一般的になってきているのと同じように。

2005年1月掲載
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