NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第3回コラム(Jul/2004)
ソーヴィニョン・ブラン王国、NZ
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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そして堂々の第1位は…。「クラウディ・ベイのソーヴィニヨン・ブランはありませんか?」この質問をいったい何度聞いたことだろう。文句なしで、頻度ナンバーワンの質問だ。

クラウディ・ベイは、南島の東海岸北部、マールボロ地方にあるワイナリーで、ソーヴィニヨン・ブランを中心に、評価の高いワインを毎年生産している。ソーヴィニヨン・ブランは、前号でもお伝えしたとおり、ニュージーランドを代表する白ワイン用の品種で、その美しいアロマは、ほかの国には真似ができない。そんなクラウディ・ベイ・ソーヴィニヨン・ブランは、その質の高さと、巧妙なマーケティング方法、知名度の高さから(1999年にルイ・ヴィトン社の子会社、ヴーヴ・クリコの傘下に入った)、ロンドン、シドニー、ニューヨークを中心に、世界中にファンが多い。世界各国から来たファンたちは、本場で飲むクラウディ・ベイ・ソーヴィニヨン・ブランはもっとうまく感じるに違いない、また、自国で買うより安いに違いないと思うので、ワインショップに駆け込み、第一声に、例の頻度ナンバーワンの質問を私たちに投げかける。けれども、である。実は、クラウディ・ベイ・ソーヴィニヨン・ブランの主なマーケットは、ニュージーランドではない。その生産の75%は輸出されているため、国内に残される数は元々少ない。さらに、天候に恵まれなかった2003年のヴィンテージは、全体の生産量が低かったため、今年、国民に与えられたシェアはほんのわずかなものだった。とはいっても、$13から$20前後が相場のソーヴィニヨン・ブラン1本に、$27以上も費やすキウイ(ニュージーランド人)は多くない。国内においても、クラウディ・ベイのお得意さんは外国人、つまり観光客ということになる。2003年のヴィンテージに関して言えば、リリースされたその一ヵ月後には、オークランドシティー内の、ほとんど全ての店から姿を消した(例年10月1日発売開始)。ただ、とても残念なのは、かなりの数の人がニュージーランドのソーヴィニョン=クラウディ・ベイと思っているということだ。「クラウディ・ベイのソーヴィニョンがないのなら、いいわ。」と言ってほかのワインには目もくれず、プイと店を出て行ってしまうお客さんがいると、とても悲しくなる。個人的な意見だが、確かにこのワインは美味しい。でも、他にいくらでも美味しいソーヴィニヨン・ブランはあるのだ。他のソーヴィニヨン・ブランも試してみて、自分のお気に入りを是非、発見して欲しいと思う。そうは言っても、今日もまた、「クラウディ・ベイだけがニュージーランドのソーヴィニョンではないんですよ」と言っても通じない、クラウディ・ベイ・ピープルがやってくる。

2004年8月掲載
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