NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第17回コラム(Aug/2005)
ワイン・テイスティングの自動販売機
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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ワインを買って開けてみたら、美味しくなかったと言う経験はないだろうか。千円くらいのワインなら、「ハズレだった」で済むけれど、一万円近くするワインの場合、ワイン選びは一種の賭けである。どんなに高価で優れたワインだとしても、一人一人の味覚は違うので、自分に合ったワインを見つけるのは簡単ではない。だからもし、買う前に試飲をする機会があったら、恥ずかしがらずに是非試してもらいたい。テイスティングは、ワイン選びにとても大事な要素なのだから。現在、以下に紹介するような、“ハズレ”ワインを避けることができる、画期的な方法もある。

ニュージーランドのクイーンズタウンに、ワインの試飲が自動販売機でできるワインショップ、『ワイン・テイスト・セントラル・オタゴ』がオープンし、話題を呼んでいる。最新技術により、ワインを劣化させずに100種類以上のワインを試飲できるようになったのだ。このシステムは南半球ではニュージーランドが初めてだと言う。これと同じシステムを用いたワインショップ『ヴィノ・ヴェニュー』が、ニュージーランドのそれよりも先に、サンフランシスコにオープンし、これがニュージーランドへの導入のきっかけになったと言う。

店を訪れた客は、まず10ドルから100ドルの範囲で『ワイン・カード』というものを購入する。試飲できる100種類のワインの中から試してみたいワインが見つかったら、ワイングラスをセットしてカードをさし込む。すると25mlのワインが自動的に注がれ、カードからはワイン代が差し引かれる。25mlのワイン代は、1ドルから28ドルまでと、とても幅広く、様々なタイプのワインが試せるので、自分に合ったワインが簡単に探せるのがいい。カードには、どのワインを試飲したかが記憶されるため、あとで検索するのに実に便利。

気になるのは、どのようにテイスティング用ワインの品質を保つのか、ということだが、ワインが瓶から取り除かれると、窒素ガスが吹き込まれて、酸化や劣化を防ぎ、ワインの鮮度を保つ仕組みだ。これらを全てオートメーション化したのだから、開発した人には脱帽である。

試飲できるワインは全て、1本から1ケース単位で購入することができる上に、日本を含む国外への宅配も行っているので、クイーンズタウンを訪れたワイン好きにはたまらないサーヴィスだ。

買って開けて飲んでみないと、自分に合ったワインかどうかが分からないという、従来ワイン選びに付きまとっていた問題がこれで解決しそうだ。

ただ、ワインは人が造るもの、もっと言うと、ワインは人だと思う。どんな天候がブドウの木を育て、どんな土壌がブドウの果実に栄養を与え、どんな人がどんな手法でどれくらいの情熱を注いでそのワインを造ったのか、そして、どんな人がそのワインの“ストーリー”を話してくれたのかによって、ワインの味が何倍も美味しくなりえると思う。どんなに技術が発達しても、無人のワインショップは出来ないし、出来てはいけないと思う。

私自身、この最新のワインショップをまだ訪れたことがないが、近々訪れる予定だ。その時は必ず、お店の人とのワイン談議に花を咲かせるだろう。

2005年9月掲載
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