NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第104回コラム(May/2011)
ニュージーランドワインイベント in TOKYO
Text: 藤山恵水/Megumi Fujiwara
藤山恵水

著者紹介

藤山恵水
Megumi Fujiwara

神奈川県出身。2003年5月にニュージーランドに初めて旅行で訪れた際にワインのおいしさに目覚め、以来特にニュージーランドワインのファンとなる。大学卒業後、東京で会社員として数年勤務したのち、2008年にワーキングホリデービザを取得してニュージーランドに渡航。語学学校を卒業後、憧れだったワイヘキ島のワイナリーで収穫作業を経験。将来の夢はニュージーランドの学校でワインについて学び、ニュージーランドのワイン業界で働くこと。趣味は映画鑑賞、読書、旅行、書道、写真。

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昨年末にホークス・ベイにあるニュージーランドの国立高等専門学校EITの「ワイン・マーケティング」コースをめでたく卒業しました。勉強は大変でしたが、頑張った分の成果や評価を得ることができ、この1年は確実に自分にとってプラスとなったと感じます。そして散々考え悩みましたが、日本に戻って日本のワイン業界での就職を目指すことに決め、帰国。就職活動には苦戦しましたが、現在は某インポーターのワインの営業として働く日々を送っています。

ニュージーランドワイン関連の仕事ではありませんが、おかげさまで「ワイン業界で働く!」という夢は達成しました。仕事は大変ですが、諦めずに頑張ってきて本当に良かったな、と今実感しています。

さて、今では自分もワインのイベントで出展側として働くようになりましたが、去る5月26日(木)には『ニュージーランドワイン倶楽部テイスティング会』に参加してきました。当初3月14日に予定されていたイベントでしたが、3月11日の東日本大震災によって延期となっていて、震災から約2か月後に実施が決まり、本当に良かったと思います。

帰国後、ニュージーランドワインはお土産で送ったものをたまに飲む程度。ワインの勉強のため、意識してフランスやイタリアなどの旧世界のワインや日本のワインを飲むようにしていたため、最近はニュージーランドワインが恋しくてたまりませんでした。当日の夕方になって突然腹痛に襲われ「行けないかも…」と不安もよぎりましたが、そこは「ニュージーランドワインを飲むためなら」と気合で乗り切り、開始時間には間に合わなかったものの、久々に十分ニュージーランドワインを堪能することができました。

ワインリストを会場でもらい、会場を眺めると、どのブースも大盛況。15の出展者(輸入元)に、なんと110種類のワインたち!大好きなワイナリーのワインを優先すべきか、まだ飲んだことのないワイナリーのワインを優先すべきか…。どう回ろうと一瞬悩みましたが、遅れて着いたため残り1時間15分しかない、こだわりは捨てどんどん回ろうと決めました。

まずは初めて飲んだワイナリーから。シャーウッド・エステートという南島のワイパラ・ヴァレーのブティック・ワイナリーのピノ・ノワール。輸入元のGRNによると、雑誌ワイン王国の「1000円台のピノ・ノワール ベスト・バイ36本」特集に選ばれたそうです。ワインを売る側に立った身としては、ワインのアピールの仕方の勉強をさせていただきました。そして、純粋なワイン好きに戻って飲むと、まずは“ブティック・ワイナリー=丁寧な作りで美味しいに違いない”という思い込みで期待して飲みました。その場でメモする余裕がなく、うろ覚えな記憶で申し訳ないのですが、複雑な香りでタンニンも強くなく、すいすい飲めそうな美味しいピノでした。インターネットで購入できるそうなので、今度じっくり堪能したいと思います。

次にアプレヴ・トレーディングのミルトン・ヴィンヤードのシュナン・ブランとヴィオニエ。このワイナリーはシャルドネで有名なギズボーンにあり、バイオダイナミックス理論のもと秀逸なオーガニックワインを生産することで有名です。昨年学校の課題でも取り上げ、私にとっては思い入れのあるワイナリー。シュナン・ブランはニュージーランドでは珍しい品種なのですが、オーナーのこだわりもあって『死ぬ前に飲むべき1001ワイン』(ニール・ベケット監修)という本のなかにも選ばれています。またヴィオニエについても個人的には今まで飲んだニュージーランドのヴィオニエでも最も素晴らしいものだと思います(これについては別の機会にぜひ詳しく書きたいと思いますが)。

実は某都内のデパートに仕事で行った際に、ミルトンのワインがお店にあり、懐かしさにかられていたのですが、この機会に再び味わえて本当にラッキーでした。

最後は私がかつて収穫に参加したワイヘキ島のワイナリー、ストーニーリッジ・ヴィンヤードの輸入元でもあるミナト・ワイン・インポートのブースへ。

実はこのイベントの一週前の5月20日に行われたマーティンボローを代表するワイナリー、ドライ・リバーのワインメーカーズ・ディナーに参加したのですが、ドライ・リバーのワインを輸入しているのも同インポーターでした。このドライ・リバーのワインは値段は張るものの、本当に素晴らしいワインです。

中でも『Lovat Gervurztruminer 2008』は今までで最も感動したゲヴェルツ・トラミナーでした。通常ゲヴェルツはライチの味が強いイメージですが、このワインはライチを感じさせながらももっと複雑味があって程よい甘味も感じ、まさに絶品。昨年ワインの勉強をしているときに、マーティンボローにあるこのワイナリーについて少し調べたこともあり、その実力や評判は知っていましたが、ニュージーランドでも入手困難で飲んだことがなかったのです。

話は5月26日のイベントに戻りますが、さらに今回同ブースで去年の12月にネルソンにワイナリー巡りに行った際に訪れたブティック・ワイナリー、Rimu Groveのワインも見つけて、また楽しい思い出がよみがえってきました。そのときに案内してくれたワインへの愛情にあふれたアメリカ人のオーナーの顔が浮かび、遠く日本でも同じワインを味わえる喜びを改めてかみしめました。

この他にもたくさんの魅力的なワインや人との出会いがあり、全てご紹介ができないのが心苦しいところですが、ニュージーランドのワインが日本に流通するまで、その一連の仕事に携わっている皆様に改めて感謝申し上げたいと思います。

またイベントに参加して印象に残ったことは、ワイン好きのみなさんがワインを飲んでいるときのうれしそうな表情です。先日別のワインイベントで出展側として私もお客様にワインを注いでいたのですが、ワイン業界の方も一般の方も皆、美味しいワインに出会えたときはとても満足そうで幸せな表情を浮かべていました。ワインは生活必需品ではなく、嗜好品になりますが、ひとときでも人を幸せにする力があると実感しました。残念なことに東日本大震災でワイン業界もダメージを被り、また大震災によりワインを飲む余裕はない、という方も大勢いらっしゃることでしょう。私にできることは微力ですが、この参加費3,000円のうち1,000円が義援金として日本赤十字社へ寄付されると聞き、嬉しく思いました。一日でも早く復興し、一人でも多くの人が「ワインって美味しいね」とまわりの人たちと楽しい時間を共有できることを切に願っております。また私も日本にいるワイン好きのみなさんのため、これから力を尽くしていく所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2011年6月掲載
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