NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第165回コラム(Apr/2016)
ラブナイト
Text: 和田咲子/Sakiko Wada
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- #オークランド
片仮名でのタイトルを読んで何かの間違いだと思われたのではないでしょうか?
いいえ、確かにワインのコラム向けに書いています。これはLoveではなくて研究室や実験室と言う意味でのLaboratoryの略でのラブなのです。ワイン好きが高じて幾つかのワインテイスティング・グループや会に所属してしまっていますが、このラブナイトは毎月1回第1月曜日にワインレストランバーにて3コースの食事を楽しみながら行う、カジュアルなテイスティング・グループなのです。
元はと言えば、あるカップルがアメリカ在住時に同じ名前のワイン会に参加していたそうで、ニュージーランドに戻って来てからも同じ趣向でのワイン・テイスティングをしたいという想いで呼びかけてくれて始まりました。
フォーミュラは簡単。一人ワンボトルを持参して、ブラインド・テイスティングにしたければボトルを隠すものを一緒に持って行き、いくつか質問を考えてその場で自分のテーブルの皆に問いかけます。自分が考えて答える時も、当たるかなあとワクワクしますが、みんなの顔色を見ながら質問する時もなかなか醍醐味が有り大好きな瞬間です。質問のサンプルは、例えば『Do you think this wine is from Europe, ニュージーランド or South America?(このワインはヨーロッパ産かニュージーランド産か或は南アメリカからでしょうか?) 』それに続いて、もしニュージーワインなら『South Island, Hawkes Bay or Auckland ?(南島、ホークス・ベイ、オークランドのどこでしょう?) 』、『So, is this Auckland wine made from Bordeaux variety or Rhone variety?(ではこのオークランドで作られたワインはボルドーのブドウ品種かローヌ・ヴァレーのブドウ品種かどちらでしょう?)』などと言う感じです。
ワイン産地のオークランドと言えば、ワインのコンペティション(品評会)などでも通常ワイヘキ島も含んだ地域を指しますが、私の住むこのオークランドの近郊にもとっても品質の高いワインを産するワイナリーが沢山あり、休日のワイナリー巡りも時々楽しんでいます。
大体15名から25名程が毎月集まりますので、2つか3つのテーブルに別れます。まずは自分のテーブルでのテイスティングが終わればまだワインが残っているボトルを他のテーブルにも持って行ってあげ、他のテーブルからも違ったワインがどんどんやってきますので、かなり飲むのに忙しいのです。私はラベルの写真を撮ったりメモを書く時もあるのでお料理を食べる時間が無くてメインの半分ほどをテイクアウェイ(日本で言うアメリカン・イングリッシュのテイクアウトの事)にして貰った事も有るほどです。
メンバーが持ってくるワインは本当に様々ですが、ニュージーランド国内や世界各地に旅行に行く人達も多いので、お土産として購入したニュージーランドでは入手できないワインだったり、ニュージーランド国内のワインではあってもオークランドでは入手できないワイン、また、ブティック的なワイン・インポーター(ワイン好きが高じてやっている様な小規模なワイン輸入業者)から購入したものだったり、はたまた珍しいブドウ品種だったりと、持ち寄るワインは皆如何に皆をあっと言わせようかと考えたものが揃います。
また、ご夫婦やカップルで参加されている場合に、同じ地域の同じスタイルのワインを飲み比べようと2本持参されて、皆を惑わす様な質問を投げかけて来る事もあり、それがテーブルの皆を湧かせて声が飛び交いとっても楽しいのです。
上の写真の2本はオークランド近郊にあるワイヘキ島のボルドースタイルのワインですが、セパージュ(ブドウ品種の混合の割合)やアルコール度にワイナリー名まで当てさせるなかなか手厳しい質問でした。
さてこんな調子で楽しくお喋りしたりワイン談議を交わしながらテイスティングをしていくと、一晩で飲むワインの数は10種類から20種類ほどになるわけです。ここは車社会なのでどこへ行くのにもほぼ自分で運転します。こんなに飲む日には一体みんなはどうしているのでしょう?実はニュージーランドでは2014年の12月から運転時の血中アルコール度の制限が厳しくなり、250 micrograms per litre of breath or 50 milligrams per 100 millilitres of blood(1リットルの息中250マイクログラム、或は100mlの血液中50ミリグラム)のアルコールが検出されれば運転してはいけないとされています。ですのでテーブル上にはちゃんとspittoon(スピトゥーン/吐器)が置かれていますし、バスで来る人、Uberタクシーを使う人も居ます。ちゃあんと楽しんで安全に帰れる様に皆さん考えています。
私はと言えばこの会場と成るレストランは自宅から車で5分程の所でバスを待つと時間がかかりすぎてしまうので自分で運転し、それぞれのワインは飲むと言うより舐めてテイスティングをしています。美味しいワインを無駄にしたくはないので、誰かが注いでくれる場合、少量注いで貰った所で『Stop!』を掛けているのですが、『Little one for you, Sakiko☺』と言われちゃう事もしばしば。吐器を常に横に置いて貰い、日本から友人に送って貰ったアルコールセンサー持参です。
7pmから始まったラブナイトも弾む会話とワインと食事を楽しんでいる内にあっと言う間に10時前になってしまいます。テーブルの上にはまだワインが残っているボトルも立っていますが、それは素晴らしいサービスと食事を提供してくれたキッチン・スタッフやフロア・マネージャーに残して、皆、三々五々ワインレストランバーを後にします。
終わった瞬間から、皆もきっと来月のLabnight/ラブナイトを楽しみにしている事でしょう!