NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
南半球は夏真っ盛り~この時期に飲みたいワイン~
第172回コラム(Nov/2016)
南半球は夏真っ盛り~この時期に飲みたいワイン~
Text: 小倉絵美/Emi Ogura
小倉絵美

著者紹介

小倉絵美
Emi Ogura

大学卒業後に就職した会社がワインのインポーターだったという偶然からワインが大好きに。以降ワインの世界にどっぷりとはまること十数年。ワーホリで行ったカナダのワイナリーで1年間働いた際にワイン造りに興味を覚える。ニュージーランドワインは以前から大好きでワイナリー巡りを目的に過去に3度来たこともあり、2014年にリンカーン大学でブドウ栽培・ワイン醸造学を修める。2015年の2月からクライストチャーチ郊外にあるワイナリーでセラー・ハンドとして勤務。趣味はワインを飲むことと美味しいものを食べること。そして旅行。

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早いものでもう12月。師走と言えばクリスマスに忘年会に……北半球の日本なら今の寒~い時期は赤ワインで、となりますが、ここ南半球のニュージーランドは夏。それも気温が低くても太陽のパワーが強烈で、25度でも体感気温は30度。そして夜は9時半まで暗くなりません。そんな時に家のデッキや庭で飲みたくなるワインと言えば……そう、ロゼです!

ロゼ?甘いのでは?と日本の輸入会社で営業をしていた時も良く言われましたし、男性の方からは「男がピンクのワインを飲むなんて。」と色だけで選ばれない事が多い可哀そうなロゼワインなのですが、ここニュージーランドでは男性もロゼは選びますし夏になったらスーパーのワイン売場のロゼコーナーが少し拡大されます。実際にクライストチャーチのヨーロッパ中心にセレクトしたワインショップでは、11月にロゼワインだけのテイスティングがあり、これぞロゼ!と言う南仏プロヴァンス地方のロゼを中心に12種類のロゼを試す事ができました。

ロゼは本当に甘いのか?そんな事はないんです。基本的にロゼワインは白ワインと同じ造り方をします。白ワインに辛口から甘口まであるように、フランスのロワール地方のアンジュ・ロゼのような甘口もありますし、ボルドー地方のロゼワインのような辛口もあります。

ちょっぴり専門的な話し。ロゼワインは何通りかの造り方があるのですが、多く使われるのは2種類。

1つ目はピノ・ノワールやメルローなどの黒ブドウを一定の時間、そのまま漬け込んで好みの色や香りが出た時点で圧搾し、後は白ワインと同じ造り方で造る方法。

もう1つは赤ワインを造る工程で発酵が始まってから一部を抜き取り、その後は白ワインと同じ方法で造り、抜き取った残りは赤ワインに造って行く方法。こちらは抜き取って残った赤ワインは凝縮されるので、濃い赤ワインを造る時に使われる技法です。だからどちらの方法を取ったとしても辛口から甘口までスタイルは自由に造れるんです。

専門的なことはさておき、何故夏にロゼ?と言うところなんですがロゼワイン最大の武器は英語で言う"Versatile"=使い勝手が良い、と言うところなんです。どう"Versatile"なのか?それはロゼが白ワインと赤ワインの良いとこ取りだからです。前述したように、ロゼは使うブドウは黒ブドウ、造り方は白ワイン。なので白ワインのよう野イチゴのようなフルーティーな味わいながらも赤ワインのようにタンニン(渋み)をどこか感じるんです。なのでこってりした牛肉のステーキ、とかでなければ意外と何にでも合うのがロゼ。

一番合わせて欲しいのがサーモン。サーモンは脂がしっかり乗っているのでソーヴィニヨン・ブランのようにキリッと爽やかな白ワインを合わせることが多いのですが、ロゼワインも良く合います。脂分を酸と渋みが消し去ってくれて、食事も進むしワインも進みます。そしてフルーティーなオフドライ(やや辛口)のものであれば日本食のような醤油と砂糖を使った味付けの食事に。中華もオフドライには抜群の相性を見せてくれます。

そして、ロゼワインの本場、南仏プロヴァンスでは暑い気候からか、赤や白ワインよりもロゼワインの生産が盛んで、強い日差しの元、海を見ながらテラスでロゼを飲む光景がよく見受けられます。そのイメージもあり、暑い夏の休日にはロゼを片手に昼から優雅に、なんて素敵ですよね。またそのフレッシュでフルーティーな味わいが暑い夏にピッタリです。ニュージーランドでは庭でBBQしながらロゼを楽しんだりします。

では、ニュージーランドではどんなロゼワインを造っているのでしょうか?南仏プロヴァンスではグルナッシュと言う南フランスでよく使われる黒ブドウを使うことが多いのですが、ここニュージーランドでは様々な黒ブドウからロゼが造られています。

オークランド郊外のクメウ地方にあるクーパーズ・クリークのロゼはアルゼンチンで有名なマルベックから造られていて濃い目の色合い。野イチゴのような香りとしっかりとした味わいでした。これだと夏だけじゃなく秋でも楽しめそうです。

そしてニュージーランドでも5本の指に入るトップワイナリーであるアタ・ランギもロゼを造っています。メルロー主体でピノ・ノワール、シラー、カベルネ・フランのブレンド。ピノ・ノワールのみ樽で熟成させて厚みを持たせているそうですがかなりフレッシュでドライなイメージ。これがプロヴァンスのロゼ・スタイルに近いかも知れません。キリッと冷やして水のように(笑)暑い夏に飲みたいロゼです。

南半球にある夏のニュージーランドで今飲みたいワインをご紹介しましたが、日本はこれからが一番寒い時期。ロゼはちょっと……と思われるかも知れませんが、例えばお正月など家族で集まっておせち料理を食べたりする時に、この"Versatile"なロゼワインを選んでみてはいかがでしょうか?

2016年12月掲載
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