NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
ワイパラワイナリー巡りの1日
第185回コラム(Dec/2017)
ワイパラワイナリー巡りの1日
Text: 小倉絵美/Emi Ogura
小倉絵美

著者紹介

小倉絵美
Emi Ogura

大学卒業後に就職した会社がワインのインポーターだったという偶然からワインが大好きに。以降ワインの世界にどっぷりとはまること十数年。ワーホリで行ったカナダのワイナリーで1年間働いた際にワイン造りに興味を覚える。ニュージーランドワインは以前から大好きでワイナリー巡りを目的に過去に3度来たこともあり、2014年にリンカーン大学でブドウ栽培・ワイン醸造学を修める。2015年の2月からクライストチャーチ郊外にあるワイナリーでセラー・ハンドとして勤務。趣味はワインを飲むことと美味しいものを食べること。そして旅行。

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ニュージーランドは北半球よりも半年早いので2018年のヴィンテージは殆どの地域で3月から始まります。今年の夏は雨が少なかったのと、12月の異常なほどの暑さでブドウの成熟も早く、例年よりも2週間も早まるとの予想。

そんな中、私の住んでいるクライストチャーチから車で約50分走ったところにある、ワイパラ地域のワイナリーを何件か巡ってきました。第一の目的はニュージーランドの雑誌CUISINEでも「Best Winery restaurant in the country」と称されるBlack Estateのランチ!ワインがオーガニックで育てられたブドウを使っているのでそのコンセプトに合わせて「地元産、オーガニック」にこだわった料理を提供しています。既に3回目のランチですが、毎回何を食べても満足出来る、そんなハイクオリティなワイナリーレストラン。そしてなんと言ってもレストランから眺める景色が最高で、お値段は少し高めですがたまの贅沢に訪れる価値はあります。

Black Estateはクライストチャーチから行くと一番北に位置します。予約よりも少し早く着いたので先にテイスティングから。ワインはリースリング、シャルドネ、ピノ・ノワールの3種類。1月は少し涼しい日が続いたのですが行った日は28度まで気温が上がりかなり暑い日。赤ワインをランチと一緒に、という気分ではなかったのでランチにはシャルドネをチョイス。樽のほのかなニュアンスとシトラス系の果実味のバランスの良い感じでした。ランチのメインはラム肉。個人的にラム肉=濃い目のソース、と言うイメージしか無かったのですが、チョイスしたラムにはサルサヴェルデと言う、ミントとハーブを擦ってオリーブオイルで和えたソースが添えられていてさっぱりと頂くことが出来ました。お肉も羊の全ての部位が少しづつ盛り付けられていて、丸ごと羊を堪能!そしてニュージーランドのラムの特徴は全く臭みが無いことです。あの羊の臭いが好きな方もいらっしゃいますが、多くのラム嫌いの方はあの獣臭が苦手なんだと思います。私も日本でラムを食べた時はそうでした。でもニュージーランドに来てラムをどのお店で食べてもあの臭いはしません。新鮮だからか、羊の種類なのか分かりませんが、とにかく牛肉よりもあっさりとしていてとっても美味しいです。

ワインとランチを堪能して次のワイナリーへ。Black Estateの手前にあるのがGreystone/Muddy water。ここもオーガニックでブドウを育てています。元々2つは別の経営だったのですが、何年か前にGreystoneがMuddy waterを買収し、現在ワインメーカーは同じです。ここはワイパラでは珍しくシラーを栽培しているワイナリーの1つ。リースリングとピノ・ノワールの評価が高く、どちらも何アイテムか造っています。同じ品種、同じヴィンテージでもGreysoneとMuddy waterの味わいが全く異なるので比較テイスティングはとても興味深かったです。個人的にはMuddy waterの方が全体的に柔らかい印象で好みでした。ここのテイスティングは1人5ドルかかります。もちろんワインを購入すれば無料になります。

そして3件目。国道に面しているひと際目立つワイナリー、Waipara Hillsへ。ここはニュージーランドでは大き目の規模のワイナリーで輸出も盛んに行っています。ブドウ畑もワイパラだけではなく、マールボロとセントラル・オタゴに持っていて、オタゴピノ・ノワールやマールボロソーヴィニヨンもWaipara Hillsのラベルで生産しています。

Waipara Hillsと言う名前の入ったワインは基本的に輸出用、Equinoxはニュージーランド高級スーパー用、Soulはワイナリーでしか買えない限定ワインだそうです。ここでのテイスティングは3種類までは無料、それ以上は5ドルチャージされます。2人で来たので別々に3種類ずつ選んで飲み比べを。大手なので大味かと思いきや、逆に大手だけに万人が美味しい、と思えるワインをきちんと造っていて、特に興味を引いたのはグリューナー・ヴェルトリーナーのような珍しい品種にチャレンジしているところ。それもちゃんとグリューナーの特徴も良く出ていて驚きでした。ニュージーランドでは最近ソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワール、リースリングなどメジャーな品種ではなく、面白い品種を少量栽培しているワイナリーもあり、ニュージーランドに非常に合ったブドウ品種が出てきて第2のソーヴィニヨン・ブランみたいなことになれば面白いな、なんて思ったりします。

ここで面白い発見が。カンタベリー地方の2014年は夏がほとんど無く、雨も多かった年で2017年ほどではないものの、厳しい年だと言われています。なので、私がワインを買う時には出来るだけ2014年を選ばないようにしているのですが、ここで2014年のピノ・ノワールを試してみる事に…やはり良くないヴィンテージなので熟成は早めなのですが、どこと無くブルゴーニュを思わせるようなニュージーには無いような土っぽいキノコっぽいニュアンスが出てきて美味しいではありませんか!こう言う時につくづく思うんです、ワインって奥が深い…って。

そして老舗のPegasus Bayへ。ここはリースリングとピノ・ノワールに定評があり、少し甘さを残したリースリングは非常に美味しいです。ただ、個人的にはあまりにも優秀すぎて興味をそそられるものが無いのが残念…でもここのレストランは抜群に美味しくって、さらに日本庭園を彷彿とさせる庭も見物の一つです。

最後は私のお気に入りのワイナリー、Terrace Edgeへ。

ここは本当に小さいワイナリーなのですが、ワインはどれも甲乙つけ難いくらいクオリティが高く美味しいです。それにシラーを栽培しているワイナリーの1つで、さらにそのシラーがびっくりするくらい美味しいのです。もちろんオーストラリアのように暑くはないのでジャミーさは全くありませんが、どちらかと言えば北ローヌのような綺麗な酸味と凝縮した赤よりの黒果実系の特徴を持っています。

そして半年ほどまえに訪れた時に飲んだスペインのブドウ品種アルバリーニョ。ヴィンテージは2017年に変わっていましたがこれも果実の瑞々しさあり、そして程よく厚みもあり日本人が好む味わい。そしてロゼ。ピノ・ノワールとシラーを一緒に醗酵させて程よい色が出たらプレスして残りの醗酵を終了させる方法で造られているのですが、これもチャーミングさもありながら程よい果実の厚みもあってさっぱりとし過ぎるロゼの中でも秀逸な1本。

そして赤ワインへ。前回はピノ・ノワール2種類とシラーを飲んだように記憶しているのですが、今回は何とオーストリアの品種「サン・ローラン」が!!!ほんと、こう言う小さなブティックワイナリーは色々と挑戦しているのが面白いところ。まずは良いヴィンテージだった2015年ピノ・ノワールから。まだまだパワフルさもあり、果実味も若々しい印象。そして気になっていたサン・ローラン。紫色がかった色目で味わいはとってもジューシー!元々複雑味を楽しむような品種ではないので軽やかで飲みやすいスタイル。暑かったこの日は少し冷やして飲んでも良さそう。そしてシラーへ。果実味たっぷりでスパイシー。でも酸もしっかりあって綺麗なスタイルのシラー。やっぱりニュージーだとこう言うスタイルが多いですね。なのであの果実味爆弾のオーストラリアのようなシラーが好きな方はニュージーでも安く手に入るオーストラリアのシラーを買うようです。

さて、意外とニュージーランドではオリーブオイルを造っているワイナリーも多いのですが、ここのワイナリーもその1つ。写真でも見てわかるように青々としていてピリッと辛く、そのままサラダなどに使うと美味。

ニュージーランドはワイン産地によってワインも異なりますし、普段だと1本買わないと出来ないテイスティングもワイナリーに行けば色々と味わえるので、ゆっくりとランチをしながらワインと景色を楽しむのも醍醐味だと思います。また、意外と知られていないニュージーランド産のオリーブオイルも是非色々と試してみては如何でしょうか。

2018年1月掲載
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