NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第32回コラム(Oct/2006)
ヴィンテージの四季~ブドウ樹の生長~
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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11月、ニュージーランドは晩春を迎えています。セントラル・オタゴのヴィンヤードでは、若葉が益々大きく育ち、ブドウの花のつぼみが目立つようになって来ました。3~5月に収穫されたブドウは、早いところで6月に、一般的には10月に新酒として発売されるニュージーランドのワイン産業。ニュージーランドの新酒のほとんどが、樽を使用せずに醸造される、ソーヴィニヨン・ブランやピノ・グリなどのフレッシュでフルーティーな白ワインです。樽熟成されたワインの場合、何ヶ月熟成されるかにも依りますが、12月以降に発売されます。

さて、お店の棚になにげなく並んでいるワインの数々ですが、ブドウが一年間でどのように生長するのか、ブドウがワインになるまでに、どんな作業が行われているのか、ご存知でしょうか。今回は、ブドウ樹の生長の流れを追ってみたいと思います。


3~4月:ブドウ果実成熟と紅葉の時期、収穫と醸造の季節です。ワイン醸造家たちの寝ずの作業が続きます。
5月:ブドウ樹は落葉し、活動を休止し始めます。デザートワイン用の遅摘みブドウの収穫期。収穫を遅らせて、糖度が高まった果実を使用した甘口ワイン醸造の季節です。


6~8月:組織内で活発に移動させていた樹液の流れを完全に止め、ブドウ樹は休眠期に入ります。一年で最も重要な作業、冬の剪定の始まりです。たくさん残っていた枝は、優れた1~2本だけを選び、残りは切り落として焼却します。こうすることで、樹の健康を保ち、限られたブドウ樹のエネルギーを分散させず、翌春の萌芽に集中させることができます。収量と品質の調節の意味でも、とても大切な作業なのです。


9月:気温が上がってくると、ブドウ樹は目を覚まし、休眠期の終了です。剪定された枝の切り口から、樹液が一滴、二滴と見えるようになり、萌芽の季節を迎えます。若葉が芽吹き、ワクワクする季節ではありますが、寒の戻りで遅霜が危ぶまれる時期でもあります。大きな扇風機やヘリコプターなどで、上空に上昇した暖かい空気を押し下げ、霜対策が行われます。
10~11月:展葉。葉が成長、新枝が長く伸び始めます。余分な芽や枝を取り除く(骨の折れる)作業の季節です。幹の根元から生えてくる葉は、通常、実を結ぶことはほとんどなく、エネルギーを浪費してしまう原因にもなるので、取り除きます。


12月:開花、結実の季節。ブドウの花は小さくて可憐。短い糸のような花びらを広げ、さりげなくしとやかに咲きます。夏の剪定作業の季節です。生い茂った葉をそのままにしておくと、果実に直射日光が当らない上に、湿気が溜まりやすくカビ病を呼び起こします。
1月:果粒が形成し、肥大してゆきます。
2月:果房が熟してくる時期です。完熟する前に鳥よけ用ネットをかけます。
3月~:そしてまた秋が訪れ、収穫とワイン醸造の季節を迎えるのです。

枯れ木のように見えた冬のブドウ樹が、一年後には美味しそうなブドウの房をたわわに実らせる。ブドウ樹の大きなエネルギーを感じずにはいられません。

次回はブドウが収穫されてからワインになり、お店に並ぶまでの流れを追ってみたいと思います。

2006年11月掲載
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