NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第66回コラム(May/2008)
アメリカから見たニュージーランド・ワイン
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
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- #カリフォルニアワイン
旅に出れば、地元の新鮮な野菜や魚介類を堪能して、地ビールや地酒も試したいと思うもの。これと同じように、私は旅先で地元のワインを探し、試し、そして堪能するようにしています。旅先がワイン産地ならなお良し。ワイン屋さん内でのリサーチだけでなく、ワイナリー巡りで試飲もできますからね。
今回私が旅したのは、アメリカ西海岸のカリフォルニア州と、そこから飛行機で11時間離れた、同国東海岸のニュー・イングランド地域です。ワイン屋さんやワイナリーを訪れて、気に入って購入したワインの数は気づかないうちに16本。カリフォルニアやオレゴン、バーモント(こ、これだけはいただけません)各州のワインがどんな特徴を持っているのか、ニュージーランドワインと比べながらの分析です。せっかくの旅行なのだから、難しい顔をして試飲ばかりではなく、地元の料理と一緒にたっぷり味わってきました。とは言っても、すっかりノンべのおノボリさんになっていたわけではありません。アメリカ人の目にニュージーランドワインがどんな風に映っているのか、どのくらい進出、浸透しているのかを覗いてきました。
ワイン産地でもある、カリフォルニア州ソノマ・ヴァレーのワイン屋さんでは、さすがに地元のワインが大半を占め、ニュージーランドのワインは赤白一種ずつ置いてあるのみ(ダニエル・シュスターとキム・クロフォード)。どこの国のワイン産地も、地元のワインで溢れているのは当然。それを目的でやってくる観光客の需要にこたえる必要があるからです。現地のワイナリーのスタッフやワイン屋さんなどと話をしたところ、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランを大絶賛していました。「ピノ・ノワールも良いということを聞くけれど、あまり見たことがない」と言うのが共通する意見でした。
一方、ニュー・イングランドはニュー・ハンプシャー州。ある田舎町のリカー・ショップでは、20種類以上のニュージーランドワインを見つけることができました。大手ワイナリーの一番安いレンジのものが主流で、全てUS$20以下で安売りされていました(写真)。為替レートや酒税、輸送費を考えると、生産者の元に一体どれだけの儲けが残るのか心配になるほど安い。例えば、A社のソーヴィニヨン・ブランは、ニュージーランドでは約ニュージーランド$23、このショップではUS$12(約ニュージーランド$15;現在US$1=約ニュージーランド$1.25)。同じ州の生協(Co-op)のワインコーナーもチェック。ニュージーランドワインは10種類ほどあり、安売りリカー・ショップとは違って、世界各国の中級、高級の良いワインをそれに見合った価格で販売していました。経験をつんだワインアドバイザーと話すと、世界のワイン競技会での好成績も含めて、ニュージーランドワインを高く評価していることが分かりました。
アメリカはニュージーランドワインの重要な市場のひとつ。量的には英国に次ぐ2番目の、金額的には英国、豪州に次ぐ3番目の輸出相手国で、2007年には約207万ケースを輸出しました(ちなみに日本は8番目で、約5万ケース)。
ニュージーランドの大手ワイン会社の多くが、今ではフランスやアメリカなどの外資系会社となっています。こういった会社は、マーケティングに長けているわけで、輸出にも強い。つまり、美味しいワイン造りに成功しても、それを売るすべを知らなければ、本当に成功したとは言えないのでしょう。人口400万人のこの小さな島国ニュージーランドでは、需要が足りないことは明らかなので、中規模のワイナリーでさえ、初めから国外だけに目を向けているところさえあるほどです。例えば前述したA社は、ニュージーランド国内のワイン競技会には一切参加せず、英、米、豪の競技会で金賞を毎年のように獲得しています。競技会は、言ってみれば、マーケティング・ツールのひとつでもあるのです。
為替の状態によって輸出量は左右されがちですが、その影響を受けない国内需要拡大を見直すワイナリーも増えてきています。ニュージーランドワイン輸出の動向、国内でのマーケティングへの変化も含めて、今後も見守っていきたいと思います。