Search
サイト内検索
Back Number
コラム一覧
皆さま、こんにちは。 南半球に在るニュージーランドでは既に初夏の陽気な日差しがまぶしい季節となっています。天文学的に、そして気象学的にはニュージーランドの夏はLongest Day(12月21日か22…… 続きを読む
みなさんは普段の食卓で、お料理に合わせるワインをどのように選んでいますか?ワインが先に決まっていることもあるでしょうか? わたしは、普段はどちらかといえばメニューを先に考えます。このお料理ならこんな感…… 続きを読む
Kia Ora!ニュージーランドワイン専門店「NZ winelover(ニュージーワインラバー)」を営む堀内です。 ニュージーランドのワインは最近色々なところで目にするようになってきて(先日の天皇皇后…… 続きを読む
第234回
ニュージーランドワイン マスタークラス... 続きを読む
ニュージーランドワイン マスタークラス... 続きを読む
第233回
収穫~タイミングの見極め方、現場より... 続きを読む
収穫~タイミングの見極め方、現場より... 続きを読む
第232回
復活を目指して... 続きを読む
復活を目指して... 続きを読む
PRバナー
Theme
テーマ別に読む
- ワイン醸造
- ワイン&料理
- ワイナリー/ワインカンパニー
- ワインツーリズム
- ワイン試飲会
- ワイン&ライフ
- ブドウ品種
- ワイン種類
Columnist
著者別に読む
-
堀内亜矢子/Ayako Horiuchi
-
ダイヤー理沙/Risa Dyer
-
岩須直紀/Naoki Iwasu
-
鈴木一平/Ippei Suzuki
-
小倉絵美/Emi Ogura
-
細田裕二/Yuji Hosoda
-
ウェイン/Wayne Shennen
-
利根川志保/Shiho Tonegawa
-
和田咲子/Sakiko Wada
-
寺口信生/Shinobu Teraguchi
-
藤山恵水/Megumi Fujiwara
-
堀内茂一郎/Moichirou Horiuchi
-
杉山奈穂/Naho Sugiyama
-
金澤睦実/Mutsumi Kanazawa
-
小山浩平/Kohei Koyama
-
加藤しずか/Shizuka Kato
-
岡嘉彦/Yoshihiko Oka
-
ディクソンあき/Aki Dickson
-
にしまきたかこ/Takako Nishimaki
-
山口真也/Masaya Yamaguchi
-
柴田花純/Kasumi Shibata
-
吉武亜季子/Akiko Yoshitake
-
武田かおり/Kaori Takeda
-
月原真弓/Mayumi Tsukihara
-
名井章乃/Akino Myoui
ワイナリーでよく見かけるモノと言えば、樫の樽とかステンレスで出来た背の高いタンクだったはず。ほかにもいろいろあるけれど、この二つは欠かせない。ところがなんと、ステンレスで出来た樽なんてものがGワイナリーに置いてあるではありませんか。「なんじゃこりゃ?」これが私の発した第一声でした。
まず、樽のサイズが肝心かなめです。ニュージーランドで一般的に用いられているのは、225リットル入るバリック(barrique)で、これ以外に、300リットル入りのホグシェッド(hogshead)や、500リットル収容できるパンチョン(puncheon)などの大型の樽もありますが、あまり用いられません。なぜなら、225リットルのバリックは、熟成の速度が最も早く、何年も待たなくても、樽の熟成効果が現れるからです。例えば、バリックで18ヶ月も樽熟成すれば、「長期熟成」と言えますが、これがパンチョンの場合だと、「未熟成」と言わなければならないところです。ですから、ほとんどのワイナリーでバリックが用いられているのです。
問題のステンレス樽に話を戻しますと、このステンレスの樽のサイズも225リットル。このサイズは、大型の発酵タンクに比べて、うんと小さい、つまり、ワインがオリに触れる確率が高く、相互作用が見込めるというのです。これが、この樽の一番の特徴ですが、樽に入れられた果汁は、酵母によって発酵が進み、酵母の死骸がオリとなります。オリはワインに複雑な味わい、コクのある風味を与えるのです。
だったら、小型のステンレスタンクを造って使えばいいじゃないかという話になりそうですが、樽の形だからこその利点があります。従来の樽専用のラックに積み重ねることが出来る、オリを混ぜる作業(リーズ・スターリング)も、従来の樫の樽で用いられる器具を使える、洗浄に際しても、従来の樽内洗浄器が使えるということです。
更に、樫の香りの影響を受けない、気孔がないので、酸化の心配がないなどの利点があるのです。ふむふむ、つまり、このステンレス樽は、樫の樽の代替品ではなく、ステンレスタンクの代替品と言うことになるのですね。そして、赤ワイン用ではなく、白ワイン用の発酵樽、熟成樽に用いられるようです。
ここで、はてなマーク頭の上にいっぱい浮いている方のために、樫の樽を使用する利点をおさらいしたいと思います。樫の木の細かい気孔から呼吸をすることで、樽の中に微量の酸素が進入しますが、この微量の酸素が赤ワインの色素を安定させ、タンニン(渋みの成分)をソフトにする効果があります。更に、樽の独特の香りは赤ワインに複雑な味わいを加えるので、ほとんどの赤ワインに樫の樽が用いられます。
白ワインの場合、フルーティーな香りが身上のアロマティック・ワインと呼ばれるものには樫の樽は用いられません。ただ、コクのある味わい、深み、ボディー感のある白ワイン造り(シャルドネ、ヴィヨンエイ、ピノ・グリなど)には、樽が用いられるのですが、通常、古い樽を使用して、樽の強い香りがワインに移らないように工夫したり、色素もタンニンも存在しない白の場合、酸素の侵入はあまり利点がありませんので、こまめにワインを補充してワインが酸素に触れるのを防いだりしなくてはなりません。
つまり、ステンレス樽は赤ワイン用ではなく、コクのある白ワインの醸造に用いられるのが適切なのです。Gワイナリーでも、リザーブ・ピノ・グリと呼ばれる、複雑な味わいを持ったコクのある白ワイン造りに用いられていたように。
樫の樽の醸造としての寿命は短く、定年退職した後は、植木鉢やテーブルなどに形を変えて活躍し続けますが、ステンレス樽の場合、半永久的に使用できますので、醸造にかかるコスト削減に貢献すると、製造者は謳っています。時代は変わるものですね。
実はこの樽、ニュージーランドで開発されたもの。国内最大手で実績のある工学技術カンパニー、ロブト・ストーン社の新商品です。さすがニュージーランド、新しい国は新しいアイディアを受け入れやすいですね。