NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第79回コラム(May/2009)
地域ごとにこんなに違うニュージーランドワイン
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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「ニュージーランドのワインと言えば、ソーヴィニヨン・ブラン」。これは今では世界的にとても有名になっています。ただ、ニュージーランドと言っても、日本のように縦に細長い国なので、気候はまちまち。マールボロのソーヴィニヨン・ブランは、ホークス・ベイのそれとはまた違った味わいがありますし、涼しい南のセントラル・オタゴ地方では、ソーヴィニヨン・ブランよりもピノ・ノワールの栽培の方が主流です。

各地域の気候の違いから、このようなワインの味わいの違いはおのずと出てくるわけですし、各産地の得意なブドウの種類も変わってくるのです。所変われば・・・ですね。

今回は、ニュージーランドの主たるワイン産地、マールボロ、ホークス・ベイ、そしてセントラル・オタゴのワインについて、栽培されているブドウの種類とワインの味わいの違いについてお話したいと思います。

ニュージーランド最大のワイン産地(全体の54%)マールボロでは、ブドウ栽培敷地面積の約74%にソーヴィニヨン・ブランが育てられていますが、ピノ・ノワール、シャルドネも重要なブドウ品種です。

■ソーヴィニヨン・ブラン

グズベリーやライム、パッションフルーツや赤ピーマンなどの華やかな香りが鼻腔に立ち上ります。フルーティーな香りですが、シャキッとした酸味があり、キレのある辛口の後味が特徴です。暖かい地区で育ったソーヴィニョンは、トロピカルフルーツやメロンのような甘い香りが現れやすく、涼しい地区で育ったソーヴィニョンは、ハーブやオリーブ、石果(モモ、ウメ、サクランボなど)などの特徴があります。いずれにせよ、マールボロ産のソーヴィニヨン・ブランは、ニュージーランドのどこのソーヴィニヨン・ブランよりも芳香高いアロマチックなワインなのです。

■シャルドネ

■ピノ・ノワール

北島東海岸に面する温暖なホークス・ベイは、二番目に大きなワイン産地(全体の16%)。フランスのボルドーと同様のブレンド赤ワインで有名な産地ですが、実はシャルドネが最もたくさん栽培されています。これにメルロー、ソーヴィニヨン・ブランが続きますが、最近ではシラーの栽培も盛んで、生産量は近年うなぎのぼりです。

■シャルドネ

■メルロー主体のブレンド赤ワイン

■ソーヴィニヨン・ブラン

概して、マールボロのソーヴィニヨン・ブランと比べると、香りも酸味もやや穏やかです。ネクタリンやピーチ、メロンなどの甘い香りに加えて、ほのかに感じるハーブの香りが良いアクセントになっています。酸味が気になる方にお勧めです。

■シラー(シラーズ)

世界最南端のワイン産地で、「世界三大ピノ・ノワール産地のひとつ」と称えられています。オタゴのブドウ栽培敷地面積の約79%にピノ・ノワールが植えられていますが、ピノ・グリの生産も近年、質量共に上昇してきていて、注目度が高いです。

■ピノ・ノワール

■ピノ・グリ

リンゴを丸かじりした時のような爽快な果実味があって、やや甘めに仕上がっているタイプと、辛口でアルコール度がかなり高く、コクのある辛口タイプとに大きく分かれます。マールボロやホークス・ベイのピノ・グリと比べると、オタゴのピノ・グリはやや酸味が強いので、辛口のものは特に1~2年寝かせると、口当たりがソフトになり複雑味も増してきます。

このほかにも、珍しいブドウも各地で栽培されていますが、ここでは、主たるブドウに絞ってみました。この次、ニュージーランドワインを選ぶときのヒントにしてみてはいかがでしょうか。

2009年5月掲載
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