NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
百コメントは一テイスティングにしかず
第244回コラム(Jan/2026)
百コメントは一テイスティングにしかず
Text: 岩須直紀/Naoki Iwasu
岩須直紀

著者紹介

岩須直紀
Naoki Iwasu

愛知県出身、名古屋市在住。ニュージーランドワインとフュージョン料理の店「ボクモ」オーナーソムリエ。ニュージーランドワイン専門通販店「ボクモワイン」を運営。
ラジオ番組のディレクターを経て現職。現在も構成作家としてラジオ番組の制作に関わっている。
飲食業界に入ったのも、ニュージーランドワインに出会ったのも30歳を過ぎてから。遅れてきた男である自分と、ワインの歴史に遅れてやってきて旋風を巻き起こしつつあるニュージーランドワインを勝手に重ね合わせ、「ともに頑張ろう」などと思っている。

ボクモワインの販売ワインはこちらから

この著者のコラムを読む

更に表示

こんにちは。ニュージーランドワインの日本への普及を、日夜企んでいる岩須@名古屋です。

さて、百聞は一見にしかずと言いますが、ワインについて言えば、百コメントは一テイスティングにしかず、です。どんなに詳しい解説も、実際に飲む体験にはかないません。
逆に言えば、飲みさえすればわかる。上手に表現できなくとも、自分の好みかどうかは、誰もが感じとることができます。

そしてその先、自分の好きな味わいをもっと追求するならば、ワインをたくさん並べて比較試飲をするのがいちばんでしょう。さまざまな産地・品種・つくり手のワインを並べて飲んでみると、自分の中に潜在的にあった「より細かな好きの基準」が見えるようになる。好みの解像度が増してくるのです。

好きな味のワインにたどり着くのって、嬉しいものですよね。なんというか、自分とワインが繋がった気分になるみたいな。そして、その嬉しさは、さらなる探求の原動力となります。「次は同じ産地を掘り下げよう」とか、「この生産者の他の品種も飲んでみよう」となって、ずぶずぶと奥深くへ。はい、ワイン沼へようこそ。みんなでハマればこわくない(笑)

ということで、皆さんを沼に導くためのテイスティングイベント、やりました!

題して 「TASTE NZ @ TOKYO」。
僕が運営しているニュージーランドワイン専門のオンラインショップ「ボクモワイン」(別リンク)による企画で、春に続いて第二回目の開催となりました。場所は前回に引き続き、奥渋のニュージープラットフォームさん(お店のインスタ)。東京でカジュアルにニュージーランドワイン、ニュージーランドフードを味わえる貴重なお店です。

前回より規模を拡大して土曜3回、日曜2回、入れ替え制で全5回。昼の部はおつまみプレートと、夜の部はディナーコースととにも楽しんでいただくという構成です。

今回のテーマは「秋冬に寄り添うニュージーランドの赤」とし、赤を中心に合計20種類を、お料理と一緒に楽しんでいただくべくご用意いたしました。
ニュージーランドの赤と言えば、やはりメインはピノ・ノワール。まずは、幅広いスタイルのニュージーランド ピノ・ノワールを知っていただきたいと思い、様々な産地やつくり手のワインを揃えました。それに加えて、北島の温暖産地からのボルドー・ブレンドやシラーも抜かりなく。サンジョヴェーゼやサン・ローランなどのニュージーランドでは珍しい品種も織り交ぜました。

そして、今回も料理とともに楽しんでいただくべく、ニュージープラットフォームの箸本シェフに、ニュージーランドらしいメニューをずらりと揃えていただきました。キングサーモン、グリーンマッスル、ラム肉、ニュージーランドビーフ、マヌカハニーなどなど。日本にいながら、気分はニュージーランド。ワインと料理のペアで皆さんを南半球へといざないます。

ちなみに、赤ワインは基本的に冷やす必要がないので、こうしてたくさんのワインを開けるイベントでは、会場準備の手間がぐっと減ります。今回はだいぶ楽しちゃいました(笑)

さあ、いざ本番。
皆さん、ワインリストとにらめっこしながら、興味のあるワインを次々にテイスティングしていきます。反応はさまざまだったのですが、中でも特に「これは好み!」という票が集まったのは・・・

オラテラ(マーティンボロ)/テラ・サンクタセントラル・オタゴ)/ガルド&モリスマールボロ)/トリニティ・ヒルホークス・ベイ)/大沢ワインズホークス・ベイ)あたりです。

ちょっと意外だったのは、やや還元的なニュアンスを持つメイン・ディヴァイド(ワイパラの雄ペガサス・ベイのセカンド)が、多くの方に支持されたこと。実は、苦手な方が多いかも?なんて思いつつ、思い切ってラインナップに加えたのですが、完全に杞憂でした。
「この独特の香りがクセになる」「今日の中でいちばん好き」なんて声もありました。
これぞ実際に飲んでいただくことの意義。僕の思い込みをきれいに覆してくれました。ピカピカのわかりやすいものだけでなく、こっち系にも力を入れる必要があるなあ、と大いに学びがありました。

途中、どの回でも「ニュージーランドに行ったことがある方は挙手をお願いします」とアンケートを採りました。結果、7割くらいはニュージーランド経験者でした。やはり「ワイン好き」もさることながら、こんなニュージーランドワインだけのマニアックな会に足を運んでくださるのは、「ニュージーランド愛が強い方」が多いんだなと改めてわかりました。

つい最近ワイヘキ島ホークス・ベイワイナリー巡りをしてきたばかりという方もいれば、これからセントラル・オタゴワイナリーを訪ねる旅に出るので予習に来ましたという方も。
また、ワーキングホリデーで1年間オークランドのカフェで働き、その間に車でNZ1週の旅をした方。娘さんがダニーデンに留学していて、現地に行くたびにニュージーランドワインの魅力にはまっていったという方。
それから、NZには行ったことはないけれど、ピノ・ノワールの質の高さには注目していて、一挙飲み比べができるならこれは行かねばと思って来てくださった方。
たまたま隣に座った方と声をかわし、仲良くなるケースもあちこちで見られました。やはり共通の推しがあると、打ち解けるのが早いですね。

ちょっと反省しているのは、僕のミニ・セミナーです。つい気合が入りすぎて、1時間以上しゃべってしまった回もありました。さすがに長すぎたかな、と。

それでも、ワイナリーや畑の話には、皆さん真剣に耳を傾けてくださって、たくさんの質問も飛び交いました。経験豊富な皆さんが「どこに疑問を持つのか」を知ることができたのは、僕にとって大きな収穫でしたし、おかげで「次に現地を訪れたら、ここを深掘りしよう」という宿題リストも増えました。やっぱり、顔を合わせて言葉を交わす機会って、尊いです。

中心にニュージーランドワインがある。その周りに熱量高めの我々がいる。集まってくださった熱と合わさって、さらに熱くなる。気づけば、店内の空気が溶け合って、ここにしかない一体感が生まれていました。

協力してくださったインポーターさん、名古屋から来てくれたボランティア・スタッフさん、お店のオーナー・シェフの箸本さん(本当に素晴らしい料理でした)、ソムリエである奥様やスタッフさんのサポートもありがたかったです。小学生の娘さんたちの健気なお手伝いも嬉しかった。「香りだけね」と注がれたグラスに鼻を入れてクンクンしているのも可愛らしかったな。

ちなみに、お客さんとの雑談の中で「今回出ていないもので、どんなワインが飲みたいですか?」と聞いてみたところ、目立ったのが「ピノ・グリの飲み比べをしたい」という声でした。

あら、意外!
ピノ・グリと言えば、ニュージーランド現地ではソーヴィニヨン・ブランに次ぐ白の第二勢力となっています。僕も大好きです。しかし、日本で流通しているワインの中では、依然としてマイナーな存在。実際、僕がやっている飲食店では、ピノ・グリは「推せば出るし、美味しいねと言って頂けるけれど、知名度が低いせいで自らオーダーする方は少ない」というポジションに甘んじています。

しかし、やはり現地経験者が7割のこの会では、さにあらず。現地では北から南までピノ・グリをつくっているワイナリーはたくさんあるし、スーパーマーケットのワイン棚には当たり前のようにピノ・グリのコーナーがある。猛者の皆さんは、あっちで体験して美味しかったのをちゃんと覚えているってわけですね。

それならば話は早いです。次回はピノ・グリを多めに持ってくるとしましょう。もちろん定番のソーヴィニヨン・ブランはもちろんしっかりと紹介したいし、アルバリーニョなどの稀少品種やオレンジワイン、チルドレッドなども出してみようと思います。開催は、2026年前半のどこかできっと。

日本からのニュージーランドへの年間渡航人数は、コロナ禍が明けて7万人弱まで回復してきました(2024年)。つまり、現地でワインを飲んで「これは美味しいぞ」となった人は、確実にまた増え続けていると言えます。

「あのとき飲んだ、あの感じ」をもう一度思い出し、ついでに「こんなのもあったのか」と新しい魅力に出会っていただく。ずっとニュージーランドワインファンでいただくためには、そんな追体験と新発見ができる場がこれからも必要だと思います。

ワインを真ん中に置き、また皆さんと輪になろう。
僕らと皆さんで熱を持ち寄り、溶け合う空気の中で、美味しいワインをシェアしよう。
次回はさらに「魅力的な沼」になるよう、準備してまいります!

SHARE