NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
歴史あるワインクラブ
第197回コラム(Feb/2019)
歴史あるワインクラブ
Text: 和田咲子/Sakiko Wada
和田咲子

著者紹介

和田咲子
Sakiko Wada

日本に住んでいた頃からヨーロッパワインは飲んでいたものの、1994年の渡航以来、先ずはニュージーランドワインの安くて美味しい事に魅せられ、その後再度オールドワールドやニューワールドワインに拡大してワインをappreciateしている。ただ消費するだけに終わらない様に必死にwine drinking culture の質を高めようと努力する毎日である。

この著者のコラムを読む

更に表示

ニュージーランドに来て25年。25年と言えば四半世紀が経過してしまったことに驚いている自分が居ます。けれどもまだ日本での生活の方が長かったにもかかわらず、こと、ワインに関しては日本できちんとしたテイスティングに参加した事もなく、ほぼ英語での表現に慣れてしまっています。

ワインの香りや味の表現は本当にLiterature(文学)だなあと思わされるものが多く、うっとりとするような言葉の重なりを耳にしたり目にすると『素晴らしい表現だなあ。自分もこんな風にパッと口から言葉が出てくる様になりたいなあ。』と思ったりします。日本語では色々言えそうな気はするのですが、そう言った語学力の面でも英語が第一言語でない私たちは、この国にいる限りは少しのハンディを負っていると感じますが、何事も経験。どんどんと他の人達の表現を聞いたり読んだりしてブラッシュアップしてゆくしかないなとも感じています。

そしてそのような経験の拡大に大きく貢献してくれているのが私にとってはこのワインクラブへの参加による毎月のテイスティングの機会とそこで出来た友人達との人間関係です。

その名は Grape treaders(ブドウを足踏みしてつぶす人たち)。歴史が古いのでインターネットもWebsiteも存在しない時代に始まった為、そして平均年齢も今は少々上がって来ている為かホームページ成るものは存在しませんのでネットで探しても見つかりません。

入会するにはお友達からのお誘いが唯一の方法です。ワイナリーオーナーやワイン・メーカー(作り手の方)、ワインショップなどのメンバーが多く、彼らの知識は科学的な裏付けや経験に基づいているので本当に勉強になります。

そして代表のセラーマスターは今迄で初めての女性のセラーマスターなのです!ニュージーランドは世界で初めて女性に参政権を与えた国、イギリスの女王が統治した時代に始まったコモンウェルスの国々の中でも女性が頑張っている国らしく昨年彼女がセラーマスターになってからは特にサポートしたいクラブにも成っています。彼女のテイスティングのセンスには私も絶対的な信頼を置いていてそのコメント一つ一つに頷きたくなるほどです。

さて、そんなグレープトレッダーズの毎月のテーマの例を挙げてみましょう。

ワインに興味のある方ならこのテーマを見ただけでも参加したくなるのではないでしょうか?毎月色々なテーマに添ったワインを8~9本テイスティングします。フォーマットはプリ・テイスターと呼ばれている2本ないし3本の、その日のテーマのワインを試飲する前に参考になる様なワインを先ず試飲して、

皆が感想や意見を言い合います。それからメインの6本のテイスティングに入っていきますが、毎回課題が与えられます。

例えば1と2、3と4、5と6がペアに成っていてそれぞれのブドウの種類を聞かれたり、どちらが新しいワインか、或いは6本の中で1本だけ何かが違うワインが入っているのでそれを当てよ、等です。

また、テイスティング・ノートの形式が決まっていて、そこに各自が自由に書き込む時間が取られます。その間は皆がグラスを傾けたりワインをすすったりグラスを置く音とペンを走らせている音だけが聞こえて来て全員集中の時間です。『もういいですか~?まだ時間が必要な人はいますか~?』とセラーマスターが声をかけてくれるのですが、その時には私はいつも内心では『もう少し時間が欲しい!』と思いつつ進行を妨げたくはないので一旦ペンを置きます。そして順番に皆でワインについてのコメントを述べてゆき、意見の交換がなされます。ここからは和気藹々と冗談も飛び交ったりしながらの時間です。自分が発言する時以外はそれを聞きながらまだ終わっていなかった最後のワインについてのコメントを埋めてゆくので、かなり忙しい時間でもあります。女性の方が得意らしいマルチタスクの時間です。

グレープトレッダーズでは参加に当たって、各自オフィシャルなテイスティンググラスのセットを6つ、持参する必要があります。所謂 XL5 Tasting glass と呼ばれているグラスですが、例えば Devonport Wine Festival や最近のもう少しコマーシャルなワインフェスティバルで付いて来るようなグラスを持って来ているメンバーも居るので、そう固い事は言わない風潮ではあります。

そしてシンプルなパンのみが出されて水も持参ですので食べ物に影響されずにワインの味や香りだけに集中する事が出来るのです。ワインとお料理のマリアージュ、これも大切だとは思いますが、お料理と一緒になるとどうも集中度が下がると思うのは私だけでしょうか?この形のテイスティングは本当に横から邪魔されずに香りや味を確認できるので私はとっても好きです。

そしてテイスティング終了後は有志で一人1本ワインボトルを持って、チャイニーズレストランでのディナーに向かいます。仕事などで忙しかったり、翌朝早すぎる日を除いて、私はこのディナーにも参加する事が多いのですが、その理由は、時にはその日のテイスティングワインよりもディナーの時のワインの方が Wow! と声の出るようなワインに巡り合えることもあるからです。多くのメンバーが自宅に持つセラーの歴史がかなり長いので、30年物のボルドーの赤だったり、まったりとした上質のヴィオニエや余韻のなが~いシャルドネ、海外で、例えばジョージアを旅行して来て購入し持ち帰ったワインなど、なかなかレアものに巡り合えるから帰りが遅くなってもやめられないですね。

この after tasting dinner ではニュージーランドワインであっと驚く様なワインにも出会えます。1年ほど前のテイスティングで出会った Esk Valley のボルドー・ブレンドの1995年物。リザーブだったのですが23年間のグレープトレッダーズのメンバー宅でのセラリングを経て、尚ピークを過ぎてはいない状態で飲めたので本当に吃驚しました。ニュージーランドのホークスべイと言う場所はこのボルドー・スタイルのワインが有名になって来ていますが、特に囃し立てられているギムレット・グラヴェルズと言うエリアではないにもかかわらず、こんなにも寿命の長い良いワインを生み出している事に全く驚きました。メルローが65%なので所謂 right bank (フランスのドルドーニュ川の右岸に多いブレンド)ですが、さらさら(ざらざらではなく)とまだ少し舌に残るリファインされたタンニンはありつつもまろやかでふくよかになった味わい、そしてバーンヤードやマッシュルームと形容される第3次アロマも心地よい美味しいワインでした。

人と人の関係を近づけるには、ものを食べたり飲みながら歓談すると矢張り人間を開放的にさせるので効果的だ、と言いますが、楽しくお喋りしながら食べて飲むと言うこの時間はワインについての情報交換が出来るだけではなく心の健康にも大いにプラスに働いていて兎に角楽しく美味しい時間なのです。

こんなグレープトレッダーズに入りたい方、ちょっと気になる方はゲスト参加も可能ですので是非一度来てみてくださいね。お待ちしています!

2019年3月掲載
SHARE